結局のところ、恋愛・結婚はどうするの? 30代女子がしっぽり読みたい本【5選】
公開日:2017/11/2
結婚できない女性を「負け犬」と称した時代があった。もちろん今でもその呼称は消滅してはいないけれど、以前よりは「別にいいじゃん」の風が強くなってきた気がする。だけど、だからこそ、わからない。人によって普通はちがう、みんなちがってみんないい、そうはいうけどなんとなくマジョリティの意見ってあるでしょう? 結婚と恋愛、しなくちゃいけないんじゃないの。できない私はどうしたらいいの。毎日働いて、自立しているはずなのに、なぜかつきまとう焦燥感。そんな悩める女性たちの葛藤を、ほんの少し和らげてくれる5作をここではご紹介。はっきり言って、この5冊もそれぞれいろんなことを言っているから、たぶん明確な答えは見つからない。だけど自分だけの「これでいいや」を見つける手助けにはなるはずだ。
■不倫相手、思わせぶりな男との関係…「何に悩んでいるのか?」がわかる『生き抜くための恋愛相談』
女は相談したいんじゃなくて、ただ聞いてほしいだけ。とか言っている男性にもぜひ読んでほしいこの一冊。「切れ味鋭い回答は危険行為」「相手に自分の意見を押しつけるだけだから」のスタンスで、16年間で1000人以上の恋愛相談に乗ってきた恋バナ収集ユニット・桃山商事がお悩み解決していく本書。何が素晴らしいって、上から目線のアドバイスが一切ない。不倫はやめたほうがいいことも、思わせぶりな男との曖昧な関係にすがるより、面白みはないけど普通にいい人と結婚を考えるべきなのも、相談者だって百も承知。わかっちゃいるけどどうにもできない感情の靄(もや)を、「そもそも今悩んでいることは何か」をクリアにすることで解消する糸口を見つけ、『逃げ恥』の海野つなみ氏が「平匡さんが書いているのかと思いました」と称賛する超論理的思考でひもといてくれる。
どの回答でも共通しているのは「主体的に動け、決断しろ」ということ。セフレ関係を続けるにせよ、不毛な片想いに没入するにせよ、自分が望んで選んだのだと腹を括れば、はたからみてどんなに“かわいそう”な状態でも心から楽しめる。悩みがすっきりするだけでなく、腹を括って生きる強さも示唆してくれる一冊だ。
■ダメ男に対する切れ味が抜群! いい恋愛をしなきゃと思わされる『深夜のダメ恋図鑑』
夢見る乙女をこじらせ「王子様」を待ち続ける千代、美人で元ヤンだけど処女の円、何もしないくせに亭主関白な態度だけは立派な彼氏と同棲中の佐和子。3人それぞれの恋を通じて世の男たちをぶった切っていく本書の何が痛快って、彼女たちの歯に衣着せぬ物言いだ。土下座する彼氏に「ソイツの土下座にどれほどの価値が……?」。共働きの妻に育児・家事を押し付け不倫をもちかけてくる男に「普段いったい何してんの? 家族にあなた必要?」。不倫男、勘違い処女厨に、亭主関白のいいとこどり男。心の声にとどめていることも多いが、ダメ男に対する切れ味の鋭さに首がもげそうになるほど頷いてしまう。きわめつきは3巻「なんで『男との結婚が女にとって最高に幸せ』ってナチュラルに思ってるの?」には喝采した女性も多いんじゃないだろうか。本書はただダメ男をこき下ろしているだけじゃない。「下手に出すぎて自分の価値を損なっちゃだめですよ」「はっきり言えるだけの自尊心をちゃんと持とうね」と読者に訴えているのだと思う。女は男の付属物、なんて時代はもう終わったのだから、いい恋愛をするためにもしっかり自分の足で立ちたいものだとしみじみ思わされる作品だ。
■“食”と恋愛妄想、ときどきノンフィクションの『口説き文句は決めている』
食事は、生活だ。雑でも、丁寧でも、豪華でも、チープでも。毎日必ず、持たなくてはいけない時間。誰かとつきあうということはその時間を共有するということで、一緒に楽しく食事ができるというのは、恋人同士になれるかなれないかの大きな境目である気がする。本書はそんな“食”と恋愛妄想、ときどきノンフィクションの思い出をひそませ綴られている。
デートの帰り道、なんだかごはんをつくるのも面倒になって、惣菜を買いに行く途中で見つけた新しいラーメン屋。ラーメンの誘惑に負けた罪悪感を、笑いながら共有しあうふたり。……という妄想。昔の彼女がよく飲んでいたからと、カフェでいつもチャイティーを頼んでいる恋人の日常に、少しずつ“とっておきのアールグレイ”を忍ばせていって、別れたあとに彼が今はアールグレイばかりを飲んでいると知る。……という、本当の思い出。
大事なのは食の趣味があうかどうかだけでなく、その時間をたわいもないおしゃべりで楽しく過ごせるかどうか。ささやかな日常のワンシーンを重ね続けることが幸せにつながり、思い出の切なさを増していく。妄想と現実をいったりきたりしながら、その味を噛みしめる珠玉のエッセイ集だ。
■自分もまた他の誰かの一部になっているような気になる『通りすがりのあなた』
Twitterフォロワー数15万人以上を誇るはあちゅう氏が、はじめて上梓したことで話題の短編小説集。はあちゅう氏の魅力といえば「今、ここ」にあるコンテンツとそれに群がる人たちの感情を、鋭く的確に掬い上げるところにあるが、小説でもその切れ味は変わらない。
留学先で好きになった、デート商売をしているアメリカ系中国人。失恋の痛みを癒してくれた、派遣サービスの“妖精”さん。転勤のあいだ、家を自由に使わせてくれた彼氏ではない男の人。描かれているのは、明確に恋人とも友達ともいえない、だけど無関係の他人と断言もできない人たちとの出会い。彼らはみんな主人公にとって、人生の一部を通りすぎていっただけの、瞬間的な存在だ。それでもそんな人たちが、恒久的につながる大事な人よりも、強く深く心に結びつくことって、きっと誰にでもある。
恋愛とも結婚とも関係のない数多の出会いが、今の自分をつくりあげている。自分もまた、他の誰かの一部になっている。そのこと自体が救いであるような気が、本書を読んでいるとしてくるのだ。大学時代に世界一周をし、今も日々、多種多様の人間との出会いを繰り返している著者だから描けるものがここにはあるのである。
■女性が自由に生きることが推奨される今に「ちょっと待った」をかける『女たちがなにか、おかしい/おせっかい宣言』
「性と生殖」を専門分野に津田塾大学で教鞭をとっている著者・三砂ちづる氏が、世の女性たちの幸せを願って問いを投げかけ続けるコラム集。今の時代、確かに女性は自由になって、発言権もたくさん得て、「もっともっと」と立ち上がり欲し続けることは必要なのだけれども、その傾向に少しだけ「ちょっと待った」をかけている。
帝王切開で「ちゃんと産んであげられなかった」と嘆くより前に「命を無事に産み出せたこと、それを幇助してくれた医師や周囲への感謝をせよ」。「家族の安寧への祈りと献身は確かに死語だけれど、ずるいずるいと権利ばかりを主張して男たちの足をひっぱり子供にしんどい思いをさせていませんか」と懸念を投げかけている。何度も言うが、女だけが我慢せよというのではない。不服もいいけど現実を見てまず感謝しよう、というタイトルどおりの“おせっかい”なのだ。
男は、わたしたちなしには幸せになれない。そして、わたしたちも男なしには幸せになれない。(略)いつかみんなひとりになる、だから「対」を大切にしなくていい、というわけでは、決してないはずなのである
自由に生きることが推奨される今こそ、古くさいと感じるかもしれないくらいのお小言にも真摯に耳を傾けたい。
文=立花もも