スゴ腕の目利き・七瀬が歌舞伎町の「真贋」を鑑定! ドラマも好評『新宿セブン』の原作コミックがアツい

マンガ

公開日:2017/11/3

『新宿セブン』(作:観月昴、画:奥道則/日本文芸社)

 2017年11月現在、テレビ東京の「ドラマ24」枠で絶賛放送中の『新宿セブン』。主人公・七瀬を「KAT-TUN」の上田竜也が好演し、話題を呼んでいる。ちなみにこの作品の原作は、現在5巻までが発売中のコミック『新宿セブン』(作:観月昴、画:奥道則/日本文芸社)だ。

 物語の舞台は新宿の歌舞伎町界隈。主人公の七瀬は「七つ屋の七瀬」と呼ばれている。「七つ屋」とは質屋の俗称で、彼の持つ正確無比な「鑑定眼」は新宿一と評されていた。そんな七瀬の営む質屋には、さまざまな「いわく」を持つ品物が持ち込まれてくる。多くの場合は何らかのトラブルを抱えているのだが、それを彼は時に腕っぷしで、時に人情で解決していくという物語だ。メインとなるのはやはり「鑑定」の部分で、日本刀の真贋を問われたり、絵画の目利きを依頼されたりと多種多様な品物が登場。その背景も詳しく語られるので、ちょっと博識になれるのもうれしいところ。

 七瀬という男は、基本的にアウトローである。違法であっても己の基準に抵触しないのであれば、まったく問題にすることはない。では彼の持つ「己の基準」とは何か。それは「鑑定にウソはつかない」ということである。たとえ己の命が危険であっても、鑑定に対しては手心を加えない。周囲が彼に一目置くのは、そういう姿勢が評価されているからだ。他にも「殺人(コロシ)と麻薬(クスリ)はあつかわない」し、老人や日雇いなど、基本的に立場の弱い人間の味方である。だから老人を騙す悪徳業者や、自分の鑑定に水を差すような輩には鉄拳で制裁するのだ。

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 そして歌舞伎町という一大歓楽街には、さまざまな人種が登場する。もちろん、その多くがアウトローだ。ヤクザや半グレ(暴力団に属さずに犯罪を繰り返す不良たちのこと)はもちろん、詐欺師やキャバ嬢など人間の欲望を体現したような面々が顔を揃える。その中で結婚詐欺に遭って死のうとする大野健太を質屋で雇ったり、詐欺師に騙されたキャバ嬢を救ったりと、七瀬は男気のある行動で周囲を魅了していく。いつもキャバクラで酒をあおり、ちょっと女にだらしない面もあるが、それも彼の魅力を引き立てている部分であろうか。

 また物語では、現実で問題となった事件も取り上げられている。例えばニュースで聞くことも多くなった「押し買い」。これは業者が家に押しかけて、高額な金品を二束三文で不法に買い取る行為のことだ。他にも「違法カジノ」や「ネットオークション詐欺」など、さまざまな案件が七瀬のもとに舞い込んで来る。それらをケレン味たっぷりに解決していく彼の立ち回りも物語の見所だ。

 日本有数の歓楽街で繰り広げられる狂騒が、七瀬という男の「眼」を通して描かれる本作。彼は「正義の味方」とはいえないが、決して悪党ではない。「己の美学」に忠実で、それに反していれば大権力にも牙を剥く。いわゆる「任侠ドラマ」の爽快さが、この作品にはあるのだ。「男気」を忘れて久しい世の男性陣に、ぜひ一読いただきたいものである。

文=木谷誠