13年越しの待望。『Fate』シリーズの新たな劇場アニメが公開中!「過激表現」をより丁寧に描いたコミカライズも!
更新日:2017/11/27
少女を守りたいという思いが、少年の願いを歪ませる。『Fate/stay night』とは、あらゆる願いが叶うという万能の願望機・聖杯をめぐり七人の魔術師と召喚された七騎の英霊たちが戦う「聖杯戦争」が密かに開催される地方都市・冬木市で、正義の味方になりたいと願う高校生・衛宮士郎が人知を超えた戦いに巻き込まれていくという伝奇ファンタジー作品。原作は2004年に発売されたヴィジュアルノベルゲームであり、歴史上の英雄たちが現代に現れて大混戦を繰り広げるという展開が話題となり、これまでに2度のTVアニメ化、外伝小説が複数執筆される一大人気シリーズとなった。最近は『Fate』シリーズのキャラクターが作品の壁を越えて登場するスマートフォンゲーム『Fate/Grand Order』が国内のアプリランキング上位に食い込むヒットを記録し、その人気は世代を超えたものになりつつある。
今回劇場版アニメ化された[Heaven’s Feel](以下、[HF])は、全ての原典『Fate/stay night』に収録された3つの物語の一遍。魔術師の家系に生まれた可憐な少女・間桐桜をヒロインとした物語だ。士郎にとっては友人の妹として出会った間桐桜が、いつの間にか守るべきかけがえのない存在に変わっていく。[HF]の劇場版アニメ化は全三部作の予定。第一章となる『I.presage flower』は、原作者の奈須きのこと原作ゲームの大ファンとして知られる須藤友徳監督がアイデアと愛情を詰め込んだ約2時間にわたる力作になった。原作ゲームの構成を踏まえつつ、原作でわずかに描写されているシーンを映像として再構築。熱心なファンですら見たことのないシーンが満載の映画が出来上がっている。とくに圧巻なのは冒頭。「聖杯戦争」の一年半前から物語をはじめ、士郎と桜の出会いから心の交流、そして桜のくったくのない幸せそうな姿が描写されるのだ。もちろんこのシーンは原作にない。だが、これから始まる悲劇の前触れとして、胸に深く突き刺さるシーンになっているのだ。
はたしてこれからどんな悲劇が待っているのか。それをいち早く知りたい人はコミカライズ版の[HF]を読むと、その一端がわかるかもしれない。タスクオーナが手掛けるコミカライズ版は原作ゲームに準拠した展開になっており、端正なビジュアルと丁寧な筆運びで[HF]のダークでエロティックな側面を見事に描いている。とくに最新刊となる第5巻では劇場版アニメで抑えられた過激表現を丁寧にコミカライズしているところが見どころ。2018年に公開予定とされる劇場版アニメ[HF]第二章とともにコミカライズ版の今後の展開が楽しみだ。
文=志田英邦