仕事がはかどる? モテるようになる? 飛行機に乗ると起こるすばらしいあれこれ!

暮らし

公開日:2017/11/7

『なぜデキる男とモテる女は飛行機に乗るのか?』(パラダイス山元/ダイヤモンド社)

 狭い空間で移動も自由にできない飛行機は、隣り合わせた相手次第で天国にも地獄にもなる。

 数年前のことだ。ニューヨーク線に搭乗した際、隣に座っていたアメリカ人と思しきじいさんが突然「椅子が硬い!」と騒ぎだした。彼は客室乗務員を呼び寄せ、空席のシートと尻の下のものを取り替えさせた。が、それもやっぱり気に入らなかったらしく、ずっとぶつくさ言っていた。反対の席にいた日本人ビジネスマンはしゅっとしたイケメン、だったがやにわに缶チューハイを取り出し、グビグビあおりながら必死に鼻をほじっていた。その形相たるや、まさにひょっとこ……。これを地獄と言わず、何と言うのか。とにかく飛行機というのは、運任せのあやうい乗り物のようだ。

 しかしマンボミュージシャンや餃子レストランオーナー、公認サンタクロース日本代表などマルチに活動するパラダイス山元さんは、

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「飛行機に乗る」ことで、自分にとって新しい発想法を導き出したり、会社ではヒラでありながら「エグゼクティブ」の仲間入りが果たせてしまう

 という。ほ、本当だろうか?

 パラダイスさんの著書『なぜデキる男とモテる女は飛行機に乗るのか?』(ダイヤモンド社)をめくると、科学的な根拠はないながらもデスクワークや家での企画書作りの能率が上がらない人にとって、「飛行機に乗る」ほど有効な手段はないとある。

空に身体を浮かせた状態で、きっかり制限時間内で発想するというのは、風船割りゲームのような尻に火が付いた状況に自らを導き、追い込んでいくことで、脳内ドーパミンを自然発生させます。

 と、ドーパミンによって新たな発想が生まれるのだと断言する。本当かよ……と言いたくなるが、確かに環境を変えると違う発想が生まれることがあるので、この説は決して侮れない。またパラダイスさんは、「飛行機ファンは鉄道ファンより少なくとも1000倍はモテる」とも言う。

 いわく「そもそも飛行機は乗るだけで妄想が広がるエロい乗り物」だし、さらに、

飛行機ファンは、たとえデブであろうとも実にスマートな身のこなしをします。首からカメラを2台ぶら下げホーム上をうろつく乗客の邪魔なデブと、空港のロビーを背筋伸ばしてパスポートに搭乗券挟んで颯爽とリモワをコロコロして搭乗口に向かうデブとでは、好感度に大きな差が出ます。

 とぶった斬る。己の席からはみだすレベルのふくよかさんも、隣席の者にはなんというか、ぶっちゃけ邪魔……とツッコミたくなる気持ちがないでもない。しかし席が隣り合ったことで恋が芽生えるケースもあるので、これも決して侮れない。

 このように“飛行機に乗ると起こるすばらしいあれこれ”が、「仕事」「人間関係」「暮らし」「健康」などカテゴリ別に80ネタも紹介されているが、いずれも最初は「え~本当?」と疑うものの、読み進めるうちに「そうかも……」と納得するものばかりだ。

 同書は締めくくりに、各地の空港がテロのターゲットになっている現状を憂いながら、空を自由に飛び回れる、幸せな時代の大切さについて触れている。確かにLCCの発展により世界中を廉価で自由に飛び回れ、好きなことを好きなだけ言える今の状況は幸せだ。だが日本だってこの先どうなるかわからない。だから日本の教育を世界に広めるのが大事だとパラダイスさんは言うが、異文化や異国の人に触れ、違いを認め合うことのほうが平和に寄与すると個人的には思う。そのために飛行機はうってつけな乗り物であることには、もちろん異論はない。

 なんきんさんによるコミカルなイラストの効果もあり、全体的に堅苦しくなくライトに楽しめる。飛行機好きもビジネスを向上させたい人も、次の旅のお供にしてみてはいかがだろうか。読後はきっと「飛行機よ今夜もありがとう」と思えるに違いない。

文=今井 順梨