人前で話す時は“伝えたいメッセージ”を明確に! プロ講師・大谷由里子さんへインタビュー【前編】
公開日:2017/11/20
人前で話す――苦手に感じている人は多いだろう。会社の朝礼や研修で何を話せばいいか、どうやって伝えれば自分の言いたいことが伝わるかわからない。何度も経験を重ねなければ、なかなか上達しないものだ。
人前で話すことに苦手意識を持っている方におススメしたいのが『はじめて講師を頼まれたら読む本』(大谷由里子/KADOKAWA)だ。本書はこれまで全く人前で話すことがなかった人をはじめ、塾講師・学校の先生といった話すことが仕事の人も学びや発見がある一冊となっている。
本稿では著者・大谷由里子さんにインタビューを敢行。インタビュー前編では人前で話しをする際の心構えや「ツカミ」や「オチ」のテクニック、「ネタ作り」の方法などについて語ってもらった。
■はじめにゴールを設定すべし!
――「人前で話さなければいけない」という時、まず、どうすればよいでしょうか?
大谷:話を聞いてくれる目の前の人にどうなってほしいのか?これを考えます。部下なら部下に、顧客なら顧客に、話す対象によって伝えたいメッセージは変わると思います。まず、話のゴールをイメージして、ゴールに合ったエピソードを選びます。
――なるほど。まずは伝えたいことを決めてからエピソードを考える、ということですね。
大谷:そうです。そして、聞いている人が具体的に行動に移せるテクニックをセットにして伝えると受け止めやすいです。例えば、営業で悩んでいる後輩に伝えるなら「このデータをお客さんに持っていってあげると、話が弾むと思うよ」とかですね。
――具体的なテクニックを伝えてあげると、その後の行動に結びつきやすくなるんですね。でも、なんだか押しつけがましくなってしまいませんか?
大谷:例えば、塾の先生から「これを覚えてくだいね!」と、丸暗記することだけを言われると、何のために?という動機がないため生徒は動きづらいです。一方、「覚えておくと〇〇に役立つよ」など、具体的な出口やエピソードを入れてあげると、押しつけがましさが緩和されます。カリスマと言われる塾講師を研究してみると、みなさん例外なくエピソードを取り入れています。生徒に人気の歴史の先生は、大河ドラマを見ているかのように語ってくれます。
■「ツカミ」で“話を聞く姿勢”に
――確かに、学校でも塾でもエピソードが楽しい授業の先生は好きでした! それに最初の「ツカミ」で一気に引き寄せられる先生もいましたね。
大谷:やっぱり「ツカミ」は大事です。それこそ、カリスマ英語教師の方はメンタリストのDaiGoさんに弟子入りして、授業の始めにマジックを披露しているといいます。他にも、コスプレしたり、プチクイズをやったり、一回くらいお客さんに席から立ち上がってもらったりするのもアリです。
――コスプレも(笑)。そんな方が講師だったら、楽しく話が聞けそうです。
大谷:楽しいだけじゃなくて、場の空気も変わります。自分も話しやすくなりますし、聞き手に「話を聞いてみよう」という姿勢にさせる効果は絶大です。もちろん、コスプレをしなくても、「ツカミ」は自分なりにいくらでも工夫できます。(笑)
■「ネタ作り」は自分の感情が動いた瞬間にフォーカスを
――話の「オチ」はどのように考えたらよいでしょう?
大谷:人の記憶に残るのは主に一番話が盛り上がる“クライマックス”と、話の最後の部分となる“エンド”です。例えば、食事や部屋などが最高の旅館に泊まったとして、チェックアウトの時にイヤな思いをしたらアウトですよね。ですから、話の最後にご自分が伝えたいメッセージを、もう一度入れてみる。ムリにオチを付けなくとも、心が動くと印象に残ります。
――「終わりよければすべて良し」ではないですけど、最後もかなり大切ですね。
大谷:その通りです。他にも講演の感想をご本人に宛ててハガキに書いてもらうこともあります。数カ月後に届いたハガキを見ることで、振り返りや定着を演出している講師もいます。私の研修では、名刺サイズのカードに宣言を書いてもらい、最後に参加者同士で読み合わせることもあります。このように、講演や研修などでは「心が動いた瞬間」を切り取って、お土産として持って帰ってもらうのも一つの手です。
――ちなみに話をするための「ネタ作り」のコツって何かあるんですか?
大谷:自分の半生を振り返る、自分の“棚卸し”から始めると良いです。自分では価値がないって思っていた体験や、イヤだなって思っていた体験は究極の「ツカミ」になることがあります。
――なるほど。でも、なかなか自分の体験を客観的に見るのって難しいんじゃないですか?
大谷:そんな時は“棚卸し”をする際に、自分の感情が動いた瞬間・心が動いた瞬間にフォーカスすると良いです。自分の心が動いた瞬間は、他の人の心を動かす瞬間にもなりますから。
前編はここまで。後編では大谷さんが講師をはじめたきっかけや「この人には敵わない…」と感じた講師の方などについて語ってもらいます!
(続きは後編で)
文=冴島友貴
大谷由里子(おおたに・ゆりこ)
2003年3月、「世の中を明るく元気にする」大谷氏の活動に共感した26人が一人100万円ずつ出資し、有限会社志縁塾(しえんじゅく)を設立。2005年にスタートした【講師塾】では、大谷流の「講演や研修」のノウハウを伝授している。参加者の中には、オリンピックのメダリストや元Jリーガー、教師、経営者、人事担当者、労働組合の執行部、士業、デザイナー、政治家など、その受講者は、1,400人を超える。