海軍のレシピは「カレー」だけじゃない! 海の上ではどんな料理が出されていたのか

食・料理

公開日:2017/11/15

『海軍さんの料理帖 明治~昭和まで歴史で辿る日本海軍レシピ46品』(有馬桓次郎:著、朝日川日和:イラスト、れつまる:イラスト/ホビージャパン)

 ソーシャルゲームやアニメ作品で取り上げられたおかげか、日本海軍の艦艇が大人気である。「鋼鉄の要塞」たる軍艦を愛する私としては、擬人化に対して複雑な思いもあるが、注目されること自体は歓迎すべきであろう。例えば艦艇の「聖地」ともいえる横須賀や佐世保といった場所には、そういった作品のファンが集まって地域は活気づいている。そんな中で海軍発のグルメも注目を浴びることになるのだ。

 一般的に海軍のグルメで有名なのは「海軍カレー」だろう。先に触れた「聖地」では海軍カレーを提供する店舗も数多く存在し、レトルトカレーとしてコンビニなどで売られているのも見かける。だから「海軍グルメ」といえば「カレー」を連想する向きは多かろうが、もちろん海兵たちが毎日カレーを食しているわけではない。『海軍さんの料理帖 明治~昭和まで歴史で辿る日本海軍レシピ46品』(有馬桓次郎:著、朝日川日和:イラスト、れつまる:イラスト/ホビージャパン)は軍艦内で提供されていた食事のレシピ46品を再現した、いわば海軍の「料理本」である。

 日本の海軍が誕生したのは、明治5(1872)年に兵部省から独立して海軍省が設立されたときである。日本は近代国家整備のため、その模範を欧米諸国に求めた。もちろん海軍のメニューも例外ではなく、明治41(1908)年の「海軍割烹術参考書」は海軍レシピの元祖といえるが、洋風のメニューが多く並んでいる。その中でも代表的なものが「フーカデンビーフ」だ。某ソーシャルゲームのプレイヤーにもよく知られている一品なので、ここは試してみるべきであろう。

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【フーカデンビーフ】


 この料理はフランス料理の「フリカンドー」が訛って伝わったもので、ゆで卵を牛挽肉で包んで蒸し焼きにする。材料は2人前で「牛挽肉200g」「玉ねぎ80g」「塩小さじ1/3程度」「コショウ少々」「セージ少々」「タイム少々」「食パン(白い部分)40g」「生卵1個」「ゆで卵2個」「牛脂10g程度」以上である。作りかたは以下。

1.食パンの耳を除き、ちぎって水に浸し、絞っておく。
2.ボウルに牛挽肉、玉ねぎみじん切り、塩、コショウ、セージ、タイム、生卵、そして1を加えて、よく練りこむ。
3.2をオーブンシートの上に平らに伸ばし、その上にゆで卵を並べ、手前から巻き込むように卵を包んでいく。
4.オーブン皿に3を置き、さらに刻んだ牛脂を散らす。
5.200度に温めたオーブンで20分、さらにアルミホイルを被せて20分焼いて、中までじっくり火を通す。
6.焼き上がったら、1人分ずつ切り分けてサーブする。

 焼き上がりは竹串で刺してみて、透明な肉汁が出れば中まで火が通っている。ゆで卵を包んで焼いたハンバーグといった趣で、ゆで卵と牛挽肉の相性も抜群。セージなどハーブの存在も効いている。このまま食べても十分に美味だが、もうひと味という人はソースやケチャップを使ってみてもいいだろう。

 ところで、読者諸氏は「氷川丸」という船をご存じだろうか。神奈川県在住の人ならほぼ常識であろうが、日本有数の観光地である横浜・山下埠頭に係留されている船だ。実はこの船、戦時中は「病院船」として活躍していた。氷川丸で治療を受けた傷病兵は3万人に及ぶとされ、まさに「助け舟」だったのだ。ではその病院船では、一体どんな食事が出されていたのか。試しに一品、作ってみた。

【ゼリー】


 デザートとして愛されるゼリーだが、主材料のゼラチンは胃腸での消化が非常によいため、患者食として大いに用いられていたという。今回は「コーヒーゼリー」と「メロンゼリー」に挑戦してみた。材料は各2人前で〈コーヒーゼリー〉「コーヒー160cc」「水200cc」「砂糖50g」「ゼラチン12g」〈メロンゼリー〉「メロンシロップ180cc」「水180cc」「砂糖10g」「ゼラチン12g」以上である。作りかたは以下。

1.材料を混ぜ合わせて弱火にかけ、ゼラチンを煮溶かす。
2.器に流しいれ、冷やし固める。

 工程から見ても、非常に簡単な料理であることが分かるはずだ。メロンゼリーはシロップによっては甘くなりすぎるため、砂糖の量は調節すること。簡単かつ材料によってさまざまな味が楽しめるので、ぜひお試しあれ。

文=木谷誠