“英語”、“禅”とユニークな視点での対談に引き込まれる。スター・ウォーズファン必聴のトークショーをレポート!
公開日:2017/11/15
ハロウィーンシーズンで盛り上がる渋谷の街、HMV&BOOKS TOKYOにて、10月21日(土)と10月28日(土)の2日に渡り、ウォルト・ディズニー・ジャパン出版部主導による「スター・ウォーズ読者の日2017(Star Wars Reads)」のスペシャルトークショーが実施された!
10月21日(土)の第1回は、『英語で味わうスター・ウォーズ名セリフ』をテーマに、「スター・ウォーズの英語シリーズ」の著者・翻訳者の安河内哲也先生と、「スター・ウォーズ ビジュアル辞典」、「スター・ウォーズ 講談社文庫」シリーズ翻訳者の上杉隼人先生が対談。
すでに会場の座席が埋まり、観覧者が期待して待つなか、開始時刻ちょうどに現れたのがダース・ベイダーに扮(ふん)した上杉隼人先生と、マスター・ヨーダーに扮した安河内哲也先生だ。
さっそく司会の李さんによる軽快な進行で、最初のトークの話題は二人にとっての「スター・ウォーズ」との出会いに。日本で最初に「スター・ウォーズ/新たなる希望」が公開されたのは1978年だった。
上杉先生:「僕が最初に「スター・ウォーズ」を見たのは、小学校5年生頃でしたね」
安河内先生:「僕もちょうどその頃でしたね。同じぐらいの年齢なんですね(笑)。あれを見たときは、本当に感動した。それまでの日本のSF映画はとんでもないものが多かったから…。ホログラムの技術もすごいなって思ってね」
上杉先生:「僕もすごく感動して、エピソード4のデス・スターへの攻撃のところで、ハン・ソロが助けにくるシーンがすごい好きだった」
安河内先生:「エピソード5でのなんとも不完全燃焼な終わり方にも逆にハマってしまって、エピソード6の公開を本当に楽しみにしてました」
2人の「スター・ウォーズ」の思い出話に花を咲かせていると、ここでR2-D2のピコピコ音が…。
李さん:「あ、ここでカッコいいスター・ウォーズのセリフクイズのお時間です」
安河内先生:「映画の実際の音声を英語で流します。穴埋めスライド方式のクイズになっているので、分かった人は手をあげて答えてくださいね。おお、これはスター・ウォーズではおなじみのセリフですね!」
一番先に挙手した人に答えをもらって、あっさり正解! 正解した人には、豪華にも上杉先生と安河内先生のサイン入りスター・ウォーズの本がプレゼントされた。
上杉先生:「みんな、さすがだね〜」
李さん:「続いてのテーマは、「スター・ウォーズ」の翻訳についてです。上杉先生はたくさんの「スター・ウォーズ」の関連書を翻訳されてますが、難しい点はありますか?」
上杉先生: 「訳すときは、描出話法を使っています。これは、大学や予備校などでは教わらないもので、直接話法と間接話法の中間のような語法なのですが、小説を訳すときは、心のなかの語りを入れるので、これが重要になってきますね」
安河内先生:「あと、イジワルですけど、原書と翻訳を読み比べることもいいですね。こいつ間違えているなと、あら探しをしたりね。でもこれもいい勉強になりますから。言葉の使い分けがやっぱり大変ですし、そもそも「スター・ウォーズ」の過去のことや背景までしっかり理解していないと正確には訳せません」
上杉先生:「ライトセーバーだって種類がたくさんありますからね」
安河内先生:「エピソード5のノベルには、トーントーンという架空の生き物がいて、トカゲ(lizard)と書かれているんですね。しかし、どうみてもトカゲではない(笑)。訳すのに悩みました」
その後も、お二人から「スター・ウォーズ」で英語をうまくなるコツも伝授。
上杉先生:「英語を正確に訳すことが大事ですよね。どうしても思い込みで自分の都合よく訳してしまうことがあります。だから小説を訳すときは、その点はとくに注意するようにしています」
安河内先生:「翻訳家を目指すなら、字幕の映画を見た上で吹き替も見るといいね。あとメモ帳を持っていって書くことも大切。セリフを覚えることで、リスニングが相当できるようになります」
上杉先生:「エピソード1〜7まで、ノベル、書籍、CDといろいろそろっているから、それらを利用して読む英語、聞く英語とまんべんなく学んでほしいです」
安河内先生:「あと、「スター・ウォーズ」のようにコアでズボッとハマれる教材を見つけることも大事。とにかく3年くらい「スター・ウォーズ」関連の英語を集中的にする。そこからまた次が広がっていくからね。好きなものから入れば、学ぶ意欲も違うし、夢中になれる。とにかく楽しく学ぶことが一番!」
約1時間の「スター・ウォーズ」の英語テーマの回は、あっという間、大盛況のうちに終了しました。
プロフィール
上杉隼人
翻訳家。主な訳書には、『旅する帽子 小説ラフカディオ・ハーン』『日本ひとめぼれ』『ライス』などがある。「スター・ウォーズ ビジュアル辞典」、「スター・ウォーズ 講談社文庫」シリーズ翻訳者。
安河内哲也
東進ハイスクールのカリスマ英語講師。「スター・ウォーズの英語」シリーズ著者・翻訳者でもあり、スター・ウォーズから学んだものは英語だけにとどまらない!と公言する生粋のスター・ウォーズマニア。
続いて10月28日(土)に行われた第2回は、『スター・ウォーズから学ぶこと』をテーマに、「スター・ウォーズ 禅の教え」著者である枡野俊明住職と、「スター・ウォーズ 英和辞典」シリーズ、「ジェダイの哲学」編集長の芳賀靖彦氏の対談。
この日も観覧者が多く集まるなか、枡野住職と芳賀さんが登壇し、司会のTomeitoさんがさっそく進行を開始。曹洞宗徳雄山建功寺の住職である枡野住職と、40年来のスター・ウォーズファンの芳賀さんが、「スター・ウォーズ」の物語を〈運命・障害・実践〉をキーワードにトークを展開。
枡野住職:「今回は、スター・ウォーズから学ぶことがテーマですが、この映画には禅と仏教の考えがいたるところに散りばめられています」
芳賀さん:「小さな頃から大好きな映画で、この映画を見ることで、すごく勇気づけられましたし、自分のなかの指針にもなりました。そもそも「スター・ウォーズ」は、ジョージ・ルーカス監督が世界中の神話を研究し、その共通項を土台にして作ったとも言われていて、生きていく上での教えが詰まっていますね」
芳賀さん:「これはエピソード4で、ルークがオビ=ワンに言うセリフですね。ぼくもいっしょに行きたいんだと。しかし、オビ=ワンは、君の運命には私とは別の道が用意されているからと言うのです。ルークはこれまで人に依存して生きてましたが、この時点からルークは自分の人生を踏み出します。そんな重要なシーンです。この運命という言葉、「スター・ウォーズ」では、よく出てくる言葉で、キーワードでもあります。自分の運命はどう見つければよいのでしょうか?」
枡野住職:「これは、自然と導かれるんですね。縁というものは、自分の努力で掴むものですが、運命とはさだめのことであって、決してあらがえない自分を超えた大きな力。自分の運命に導かれ、その道に自然と沿っていきます」
芳賀さん:「「スター・ウォーズ」の世界では、その導きがフォースなのかもしれないですね。運命は、自分で見つけるのは難しいですが、自分の周りで起こっている出来事を観察してみると自分の進むべき方向も見えてくるのではないかと思います。僕の解釈ですが、自分のやりたい道を直感のまま進むのがいいのではないかと思います」
次のテーマ「障害」へ。エピソード5の惑星ダゴバでのシーンがスライドに写され、自分の殻をどう破るかを語る。
芳賀さん:「ルークが沼地に沈んでいる戦闘機、Xウイングファイターを引き上げろとヨーダに言われます。ルークは、無理だと弱音をはきますが、ヨーダが、これまで学んできた価値基準を手放すことを学べと諭します。そこでルークは、わかりました。やってみますよ。と言うのですが、そこでまた、ヨーダから叱責が飛びます。やるか、やらぬか。やってみるなどない。と。ルークが自分の心の中でストップをかけ、ブレーキを踏んでいることを指摘します。やってみるという言葉は保険でもありますから。この人間誰しもがある心のブレーキはどうはずせばいいのでしょうか?」
枡野住職:「人間というものは、心のブレーキは常に働きがちです。でも、ブレーキをかけてしまうと前に進めない。「スター・ウォーズ」のこのシーンですが、実はヨーダは禅宗の老師がモデルと言われてます。老師は、弟子達を指導する立場で、常に固定観念をやぶることが重要だと修業中に説くのです。それをそのまま状況を変えて映画にしています。自分の殻を破ると必ず次の世界に繋がってくる。まだ、できるんだと自分を信じることが大切ですね」
芳賀さん:「結局、このシーンでルークは、Xウイングファイターを引き上げることができなかったのですが、ヨーダは手をかざして簡単に沼から引き上げます。これをルークは、目の当たりにして、あ、これってできるんだと固定観念が崩されたことになります。こういうことは、自分たちの日常にもよくあることで、僕は普段、テニスをしますが、僕が大学生の頃は日本人選手がトップ100位に入ることは非常に稀で、そんな中、松岡修造さんがベスト8位に入ったことはとても衝撃的でした。でも、最近では錦織圭選手が現れて、日本人でもグランドスラムの決勝まで行けることを目の当たりにしましたよね。そうすると日本選手がどんどん勝ち始めた。だから心のブレーキというのは、目の当たりにすることで意外に外れていくものですよね」
枡野住職:「みんな、やればできるということです。人間は、自分の能力を20〜25%しか使ってないと言われています。普段、この眠っている能力や自分の可能性を信じて、やればできると思い、とにかく自分を磨くことしかない。そんな自分の力を磨くというのがこのシーンでもありますね」
芳賀さん:「だからジェダイは修業するんですね。魔法とか超能力ではなくて、自分の内なる力を出せるように」
枡野住職:「仏教用語では、法力(ほうりき)といいますね」
芳賀さん:「自分の力を超えたものを感じることはありますよね。一生懸命やってきたことが、思った以上に実現した時とか、内なる力を出せたと言うんでしょうね」
枡野住職:「日々、努力をして気がつくと、違った見え方ができる。この見え方が違うというのは、努力の結果なんですね。同じものを見てても物の見え方が違ってくる。これが人間の成長でもあります」
「スター・ウォーズ」という映画を通して、人生の歩み方までを指南してもらった今回のトークショー。観覧者たちも枡野住職と芳賀さんのお話にガッツリと引き込まれていた様子。こちらも大盛況のうちにイベントは終了した。
プロフィール
枡野俊明
曹洞宗徳雄山健功寺の住職で、多摩美術大学教授。庭園デザイナーでもある。2006年には、「世界が尊敬する日本人100人」にも選出される。著書「スター・ウォーズ 禅の教え」(KADOKAWA)では、スター・ウォーズに流れる禅の考え方を紹介し、好評を得た。
芳賀靖彦
出版社学研プラスで子ども向け図鑑や学習まんが、辞典類を編集制作する「図鑑・辞典編集室」の室長。7歳のときに見た「スター・ウォーズ」に衝撃を受け、以来40年間ファンを続ける。世界で初めての公式スター・ウォーズ自己啓発書「ジェダイの哲学」を企画制作した。
「スター・ウォーズ エピソード8/最後のジェダイ」の公開は、いよいよ2017年12月15日と間近! 公開までは、今回の先生方の著書や「スター・ウォーズ」関連の書籍や予告編動画などをチェックし、期待を盛り上げよう。