孤独は大切! 誰もが繋がる時代に考えたい“ぼっち”を楽しむ力とは?

暮らし

更新日:2017/12/18

『人生の「質」を上げる 孤独をたのしむ力』(午堂登紀雄/日本実業出版社)

 仲間や絆という言葉が苦手だ。人は誰かに支えられなければ生きられないのは、もちろん身にしみて分かっているつもりではある。しかし、SNSが発達している影響もあってか、常に“誰かと繋がっていなければならない”という空気から逃げたくなる衝動にも駆られてしまう。

 おそらく逃げた先で味わうのは「孤独」だろう。近ごろは“ぼっち”というキーワードもあるが、一般的にみると、その種の言葉にはネガティブなイメージがつきまとう。しかし、誰もが繋がる時代だからこそ「孤独力」が試されるというのは、書籍『人生の「質」を上げる 孤独をたのしむ力』(午堂登紀雄/日本実業出版社)である。

 本書にある孤独というのは何も、誰かとの接触をいっさい遮断して、いっそ無人島で暮らせといった話ではない。誰かからの評価が気になったり、我慢して“空気を読む”ことが求められたりする時代だからこそ「社会の中で人と関わり合いながらも、つねに自分の意志を主軸に置いて、自己責任で生きよう」ということである。

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 あるときは思うがままにズバッと言いのけ、ひょっとすると、著者の語る内容は人によって辛らつに思えるかもしれない。しかし、読者のそばへと寄り添い、やさしく語りかけるような口調にはだいぶ好感をおぼえる。

 例えば、誰しも「ひとりになりたい」と思ったことはあるだろう。そんな気持ちを抱くのは「とても健全」であると述べる著者は、孤独には「自己回復機能」があると解説する。

 多かれ少なかれ、日常的に私たちはさまざまな経験に出くわす。その中では結果として前向きな感情が生まれるときもあれば、後ろ向きな感情が生まれるときもあるはずだ。それらにどれ一つ無駄なものなどないはずなのに、やたらと前向きな感情ばかりを大切だと主張する人たちもいるが、結果がどうであっても、著者は芽生えた感情と向き合い「納得感」を得るのが大切だと教えてくれる。

 そして、納得感を得るには自分と向き合う時間が不可欠になってくる。忙しくてイライラする原因は、著者によれば、まさしくこれが満たされていないから。「自分の経験を振り返って、納得する」ために余裕を持つ時間を作るのも肝心で、そのためには周囲に振り回されることなく、時には周りに合わせるかのように「予定を詰め込む」ことから逃げてもいいというわけだ。

 本書を読み進めると、孤独はけっして悪いことではなくむしろ“個性”であり、あっけらかんと貫ける人ほど“強い”人間ではないかと、どこか憧れにも似た思いもわき上がってくる。人生は誰にとっても一度きりしかない。日頃の人間関係はもちろん、SNS上での“友だち数”や“いいね!数”などのしがらみから解き放たれて、ほんのわずかでも孤独な時間を味わってみるのも、充実した生活を送るための一つの選択肢になりうる。

文=カネコシュウヘイ