女子高生からビジネスマンまで注目する、「モテクリエイター」ゆうこすのSNSマーケティングは、なぜ成功したのか?『SNSで夢を叶える』ゆうこす×『殺し屋のマーケティング』三浦崇典、天狼院対談レポート【前編】
公開日:2017/11/30
10月某日、『天狼院書店 池袋駅前店』にて、『SNSで夢を叶える』(KADOKAWA)著者のゆうこすさんと、天狼院書店の名物店主である三浦崇典さんによる特別対談イベントが行われました。「モテるために生きてる!」と断言するゆうこすのSNSマーケティングは、なぜビジネスにも活用できるのか? 小説『殺し屋のマーケティング』(ポプラ社)を上梓した三浦さんが、ゆうこすさんの発信の極意とビジネス発信の成功の法則に迫ります。
●本の内容をSNSで公開することで、口コミが広がり、発売1ヶ月以上たってから売上が加速した!
三浦さん(以下、三浦) 『SNSで夢を叶える』、読ませていただきました。これ、本当に面白かった。発売から1ヶ月で重版が決まったんですよね? 今の出版界は重版率2割と言われていますから、これはすごいことです。おめでとうございます!
ゆうこすさん(以下、ゆうこす) ありがとうございます! だんだんと、口コミでビジネス層の方にも手に取ってもらえていて、ありがたいです。
三浦 今日のお客様の中には、実はベストセラー作家の方も何人かいらっしゃるんですけど、おそらく皆さんが知りたいのは、「どうしたらSNSで夢を叶えられるのか?」という再現性の部分だと思うんです。僕も『殺し屋のマーケティング』という小説を出したんですけど、SNSを使ってアピールするにはどうするのが効果的なんだろうと思って、今回対談をオファーさせていただきました。ゆうこす師匠、色々教えてください!
ゆうこす こちらこそ、よろしくお願いします! 実は、私の本の売れ行きが伸びた理由があって……私は最近、LINE LIVEの生配信で『SNSで夢を叶える』の朗読会をしているんです。本を発売したときよりも、最近あらためて、本の売り方について考えています。実は私自身が、子供の頃から注意力が散漫で、本を読むということができなかったんですよ。でも、本について無知だったからこそ、本ってどうやって売ればいいんだろうと考えて、「そうだ、ライブ配信で本を朗読すれば、みんなに内容を知ってもらえるし、私らしいんじゃないかな」と思ったんです。
三浦 すごい! 実際にやってみて、何か反応はありましたか?
ゆうこす 「中身がわかってしまったら、本が売れなくなるんじゃないの?」という意見も来ました。でも、本って「こういう内容ですよ」と口コミが広まると、気になって「買ってみようかな」と思ったりするじゃないですか? 最初はシンプルに、SNSを使って話題を作りたいと思ったのですが、そこに加えて、どうしたら「買いたい」と思ってもらえるか考えたんです。朗読という形だったら、耳だけじゃなく、目でも読んでみたいと思うかなって。実際の朗読では、各章からバラバラと抜粋して読んでいます。そこから気になった人は、1冊通して読みたいと思ってもらえるんではないかな、と。
●周りを変えるより、自分が変わるほう方が一番簡単だし、早い
三浦 なるほど! 僕らみたいに出版業界にどっぷり浸かっていると出てこないアイディアですけど、どうやって思いつくんですか?
ゆうこす 実際に自分で色々やってみて、ずっと続けてきたからこそだと思います。毎日私のアカウントには、フォロワーの方から何百と意見が来るんですよ。まさに、毎日がマーケティングなんです。ひとつの発信にも、賛否両論の色々な反響があり、アカウントの方向性など、日々気づきがあります。
三浦 そんなに意見が直接来るんですか? すごいなあ。常にユーザーのニーズと向き合っているわけですね。それこそ、普通のビジネスマンとに比べても、めちゃくちゃ膨大な量のマーケティングを、日々こなしているような環境ですね。しかもそれを、誰かに教わったわけでもなく、ご自分で考えてやってると……。
ゆうこす 私は元HKT48のアイドルだったので、最初は「万人受けしなきゃいけない」と思ってたんです。アンチの意見も聞いて、みんなに好かれようとしていました。でも、自分が個性のない、からっぽな人間になってしまっていることに気づいて……。自分を好きと言ってくれる人に向けて、自分が好きなことだけを発信するようにしたら、共感してくれる人だけが残ってくれたんですよね。私自身も、周りの空気も変わっていったんです。周りを変えようと思ったら、自分が変わるのが一番簡単だし、早いと思いました。
三浦 それ、あらゆるビジネス書に書いてあることを、わかりやすく言ってくれた感じですよ。自分のことを「好き」と言ってくれる人に向けて発信するということは、自分のニーズを知るということで、マーケティングの本質ですよね。すごく研究熱心ですが、それは、好きだからこそ続けられたんですか?
ゆうこす 私、好きじゃないとすぐにやめてしまうんですよ。ゆとりの頂点みたいな感じなんです(笑)。
●ゆうこすと『殺し屋のマーケティング』を売るためのSNS戦略をブレスト!
三浦 『殺し屋のマーケティング』は、小説の形をした、マーケティングの本なんです。これだけ押さえてれば絶対にヒットが出せる! と言えるマーケティングノウハウを、7つに整理して落とし込んでいます。内容は、受注数世界一の殺しの会社を作る女子大学生の小説なんですけど、「この世で一番売るのが難しいものはなんだろう?」と考えたところから始まったんです。で、“殺し”だと思ったんです。広告も打てないし。だから、“殺し”を売れれば、どんなものでも売れるはずと考えたんです。
ゆうこす 確かに「殺し」は宣伝できないですよね(笑)。
三浦 この本を売るためのSNS戦略を考えているんですけど、たとえばInstagram(以下、インスタ)に、何か赤いものと、この本を組み合わせた写真をアップするのはどうですか? 表紙が赤なので、紅葉とかフェラーリとかと合わせたら、映えるかなと。
ゆうこす うーん、綺麗なアカウントにはなると思うんですけど、それで買いたいと思うかなって……。この本を売って、その先に何をされたいですか?
三浦 僕、ジョニー・デップにこの作品の登場人物を演じてほしいんです。ハリウッドで映画化したいと大真面目に考えています。その夢を叶えるために、SNSを使って何ができるか教えてほしいんです。
ゆうこす ハリウッドで映画化! すごい夢ですね(笑)。うーん……じゃあ、インスタで三浦さんの顔写真にずっとジョニー・デップをタグ付けするとか、どうですか? 「これ誰?」って話題になって、そのうち本人にも届くかもしれない。
三浦 少なくとも「バカなヤツいる」って話題になりますよね(笑)。
ゆうこす あとは、真面目なところだと、この主人公の女子大生になりきってアカウントを運営するとか。この本の続編をインスタでやる感じです。この子が「ランチ食べてます」って写真を投稿して、横に本が置いてあったら気になりますよね。本の発売日には「私の本、発売されたんだけど~やばい!」ってアップしてみるとか(笑)。こんな感じで、私はいつも大量に案を考えます。
●インスタは自分が簡単に雑誌の編集長になれる場所。ただの「自撮り集」だったら、ニーズはない
三浦 それいいですね! やってみます! 本にも書いてありましたが、インスタは自分が雑誌の編集長だと思ってやるのがいいんですよね?
ゆうこす はい。インスタは自分が簡単に編集長になれる場所だと思うんですよ。売れる雑誌って、伝えたい内容の方向性が決まっていて、写真も統一感があって、役立つ情報が詰まっていて……読者にとって見るメリットがあるものですよね。だからこそ、読者はお金を出して買うんです。発信したいことがあるなら、そういうものにしないと。ただ自撮りばかりを載せていても、フォロワーにとってはなんの得もないですよね。雑誌がモデルの自撮り集だったら、みんな買わないと思うんです(笑)。
三浦 なるほど。ちゃんと編集長になって、読者に何を伝えたいか考えるってことですね。師匠、頭いいですね。僕、色んな偉い人と話すんですけど(笑)、すごいですよ。なんでそんなにアイディアが出るんだろう。実際にやってみて、失敗することもありますか?
ゆうこす もちろん数え切れないくらいあります。でも、失敗したからこそ、こう変えればいいんだと気づけました。失敗から成功につながったことも、たくさんあるんです。SNSって使い道が未知数だからこそ、楽しいですよね。
※後編は12/7(木)配信
取材・文・写真=渡辺絵里奈
■プロフィール
ゆうこす(菅本裕子/すがもと・ゆうこ)
1994年5月20日生まれ。「モテるために生きてる!」、「モテクリエイター」と宣言。貪欲なまでの自己プロデュース力の高さでSNSで20代女性から熱烈な支持を集める。Instagramで紹介した商品が完売するなどカリスマ的人気を誇り、YouTube「ゆうこすモテちゃんねる」も話題。タレント、モデルとしても活躍。Instagram、Twitter、LINE@、YouTubeなどのSNSのフォロワー76 万人。SNSを駆使した自己プロデュースで、ファンを広げ続けている。
三浦崇典(みうら・たかのり)
天狼院書店店主。株式会社東京プライズエージェンシー代表取締役。編集者・プロカメラマン。大正大学表現学部非常勤講師。1977年宮城県生まれ。小説賞に挑戦しながら、アルバイトをしていた書店で新店舗の店長を打診され、3年間、店長を務める。手書きPOPでの集中一点売りなどの特徴的な手法が、讀賣新聞をはじめ、様々なメディアで取り上げられ、文芸書の売上増大の成果をあげる。2009年、株式会社東京プライズエージェンシーを設立、2013年に天狼院書店の1店舗目となる「東京天狼院」を南池袋にオープン。開店して3ヶ月で倒産の危機に陥り、以後、現在まで9回、倒産の危機に見舞われるが、その都度、新しいマーケティング手法を駆使して窮地を切り抜ける。