「万が一のため」で入ると大失敗…『「保険のプロ」が生命保険に入らないもっともな理由』とは?
公開日:2017/11/30
皆さんは、「生命保険」にどんなイメージを持っていますか? 突然の病気や怪我に備えるもの、万が一のときに大金を得るためのもの、老後に備えての貯金代わり……大体こんな感じでしょうか。人生いつ何が起こるかわからないし、とりあえず生命保険に入っておくかと、思っている人もいるかもしれませんね。
しかし、「万が一」のために保険に入ろうとしている人は、一度立ち止まって考える必要があります。なぜなら生命保険は、“損の出やすい”お金の集め方だからです! そんなこと急に言われたってにわかには納得できませんよね。そんなあなたに読んでほしい本が『「保険のプロ」が生命保険に入らないもっともな理由 (青春新書プレイブックス)』(後田亨)です。
著者の後田亨氏は元保険の営業マンで、現在は保険コンサルタントをしている、いわば生命保険のプロ。そんな著者のもとに、アラサー女子が保険の相談に訪れる……というプロローグから本書は始まります。ちなみに、このアラサー女子、保険のことどころか、お金や投資についての基本的な知識ゼロ。なので、「本気でお金とか保険のことがわからない」という人にピッタリの内容になっています。
■生命保険は、1万円預けると3000円引かれるATM
第一章では、保険の仕組みをよく理解しないまま、「とにかく、私にぴったりの保険を紹介してほしい!」とアラサー女子が訴えます。しかし、著者の答えは「NO」。今の状態で保険に入ると高確率で損をすると断言するのです。そこで、まずは生命保険の仕組みってどうなってるの? という超基本的な解説から始まります。
多くの人は、“いざというとき”手に入る大きなお金に意識が向くため、どれくらい手数料が引かれているかを気にしません。しかし実際は、多くの金融商品の中でもダントツで手数料が高いのが生命保険。たとえば、売れ筋の医療保険で30%、大手の死亡保険だと60%を超えるケースもあります。
つまり、保険料を1万円払ったとすると、2000~6000円超が自動的に手数料として引かれ、残りが保険金に回されているわけです。銀行預金なら手数料は00%、投資信託でも1~3%程度なので、比べてみると生命保険の手数料がいかに高いかがわかります。
ところが、「いざというときに大金がもらえるシステムなんだから、そのくらい手数料が引かれても仕方ない」とアラサー女子は反論します。読者の中にも、同じように考えた方がいるかもしれませんね。もちろん、それだけ高い手数料に見合った価値があれば問題ないのですが、実際のところどうなのでしょうか? 頑固なアラサー女子に対し、著者が根気よく説明し、納得させていきます。
■二人に一人ががんになる時代……キャッチコピーに隠された罠
「二人に一人ががんになる時代」というキャッチコピーを、皆さんも聞いたことがあるのではないでしょうか。アラサー女子もこれを真に受けて、がん保険や女性向けの医療保険を検討したいと言い出します。しかし、ここでも待ったをかける著者。
たしかに、統計を見る限り、現代の日本人は二人に一人ががんになる時代。でもそれは、80歳以上の高齢者も含めた数字です。80歳以上になったら、がんだけでなく、あらゆる病気や怪我のリスクが高まります。
「そうなるともはや“万が一の状況”ではなく、“想定内の出来事”と考えるべきなのでは? 保険でお金を備える必要はなくなりますよね」と、著者は言います。
しかし、食い下がるアラサー女子。30歳の女性の場合だと、10年以内にがんに罹患する確率は1%です。「自分が100分の1の確率でがんになるかもしれない。がん保険に入る意義は十分ある!」と、詰め寄ります。この理屈に対して著者は、ギャンブルの還元率を引き合いに、アラサー女子を納得させます。生命保険は、競馬より還元率が悪いという事実、信じられますか!? 徐々にアラサー女子も、生命保険のカラクリに気付き始めます。
■明日大きな怪我をしてお金に困ったらどうすればいいの?
もちろん中には、明日大きな怪我や病気になる人もいます。だからといって焦る必要はありません。国民健康保険に加入していれば、医療費は3割負担で済みます。さらに国民健康保険では、高額療養費制度が使えるので、ひと月の支払いには上限が設けられています。
「せっかく、もらえるお金があるのに、無頓着な人が多すぎる」と著者。この“もらえるお金”に関しては、今すぐ調べられること。安易に生命保険に入る前に、自分で考えて準備しておくべきことがたくさんあるわけです。
この本では、がん保険、医療保険、死亡保険、養老保険、就労保険、就学保険などなど、あらゆる保険商品について解説しています。「不安だから、今すぐ保険に入りたい!」と言っていたアラサー女子が、最後にはどんな考えに変わっているのでしょうか。ストーリーを楽しみながら、保険について学んでみてはどうでしょうか。
文=木綿ワカメ(清談社)