ネガティブに考える心の癖を正すには? 心の病を克服したスウェーデンの夫婦による「自分を大切にする生き方」のアドバイス
公開日:2017/12/3
不安に駆られて悲観的になりやすく、過去や未来についてく頻繁に思い悩み、辛いときに助けを求めるのが苦手で、なんでも自分のせいにしがち。そんな人がこの一冊を読むと、付箋だらけになるだろう。
この一冊とは『北欧スウェーデン式 自分を大切にする生き方』(マッツ・ビルマーク&スーサン・ビルマーク:著、齋藤慎子:訳/文響社)のこと。本書にはサブタイトルがついていて、そこには「心の病を抜け出した夫婦からのアドバイス27」とある。そう、この本は、夫婦そろって心の病(夫のマッツは不安症、妻のスーサンは疲はい性うつ病)にかかり、手探りで乗り越えた経験に基づく、心地よく生きるためのアドバイス集なのだ。
世界幸福度ランキング上位にあり“幸せの国”とも呼ばれるスウェーデン。しかし、実際はストレス社会で、訳者あとがきによると「人口980万人のスウェーデンで20万部のベストセラー」になったほど、国民の共感を得たという。本書には「スウェーデン国民の4人に3人が、自分自身か家族に、心の病を経験したことがあります」「スウェーデンで病気休暇の理由で一番多いのが心の病なのです」とも書かれている。
読み進めるうちに明らかになるマッツ&スーサン夫妻の性格や、ふたりが抱える悩みには、私たち日本人も共感する部分が多いだろう。夫のマッツはいつもなにか恐ろしいことが起こるのでは、という不安に苛まれていたが、リーダー気質の強さゆえにそれを認められず、病にかかった。そんな悲観的な考え方の癖を持つ人のため、彼らはこうアドバイスする。
心配していることが実際に起こる可能性はどのくらいあるのか、と何度も自分にたずねます。そう予想するのは現実的ですか?
そのうちに、心配が現実になることはほとんどない、と気づくようになるはずです。
声に出して自分にたずねてみてください。
「まだ起きてもいないことをどうして心配しなければならないのか」
(P.47より)
ふたりで心の病を克服した経験から、お互いに隠し立てせずになんでも話すというマッツとスーサン。どんなに大変で辛いときでも「順調です」と答えたり、平気なふりをして抱え込んだりする人に向けては、こう語る。
人は自分の弱みを見せたがらないものです。誰も弱音なんて吐きたくありません。
ただ、自分の状況を正直に話すことと、弱音を吐くことはまったく別なのです。
誰もが自分の抱えている問題に対処しなければなりません。その手段のひとつとなりうるのが、人に話を聞いてもらうことなのです。(中略)自分自身や自分の経験について思い切って話すと、ポジティブなエネルギーが無限に返ってくるのです。
(P.130~131より)
さらに、いつも怒りっぽくてイライラしていたスーサンと、それによる衝突を恐れてきたマッツ。その経験から、スーサンは怒りに駆られそうになったときは「一歩退く」こと、そして相手を非難するのではなく「必ずポジティブな内容で切り出す」方法を示す。いっぽう、スーサンの怒りをすべて自分のせいととらえてきたマッツは「挑発にどう反応するかはあなた次第」であり「わたしに怒っていると考える必要はない」と、物事をネガティブにとらえすぎない方法を諭す。
私たちの思考は「癖」である。いつも不安に駆られるのも、なんにでも心配するのも、悲観的な未来ばかり想像するのも、悪いことすべてを自分のせいにしてしまうのも、すべては癖なのだと本書を読みながら思う。癖なのだから、それを正せば「自分がなりたい人間にいまからでも変われる」と、マッツ&スーサンは教えてくれる。
その秘訣はすべて、本書のタイトルにある通り「自分を大切にする生き方」だ。自分が本当にしたいことはなにかを考え、日々起こることに感謝して生きる。ネガティブな言葉から身を守り、ポジティブに考えるためのトレーニングをする。辛いときは本音を話して助けを求めてもいいし、嫌なことには冷静にノーと言っていい。過去や未来に想いを馳せるのではなく、「今、ここ」にある幸せを感じる。
生きることに苦しんだふたりの言葉は、力強く、そして温かい。実体験に基づいたアドバイスを読むうちに「きっと私も変わっていける」と感じるはずだ。生きにくさを抱えたすべての人に、ぜひ読んでほしい。
文=富永明子
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