「母親」の存在が大きかった――15万部突破、栗原類の自伝的エッセイがマンガに!「発達障害」を抱え、どのように輝く場所を見つけたのか
更新日:2017/12/25
「ネガティブすぎるイケメンモデル」として瞬く間に人気者になった栗原類。現在は、タレントとしてだけでなく、映画・舞台で役者としても活躍の場を広げている彼が、2016年10月に出版し、多くの反響を集めたのが自伝的エッセイ『発達障害の僕が輝ける場所をみつけられた理由』(KADOKAWA)だ。そう、彼は発達障害のひとつであるADD(注意欠陥障害)を抱えている。これは、8歳の頃、当時在住していたニューヨーク市の教育委員会で診断されたという。自身の半生をまとめ、ADDとはいったいなにかを綴ったエッセイは15万部を突破し、大勢の読者に勇気を与えたことだろう。その一方で寄せられたのが、「イラストや短い文章だともっとよかった」という声。発達障害を抱える人たちのなかには、活字を追うのが苦手な人もいるからだ。
そんな声を受け、12月8日(金)に発売されたのが『マンガでわかる 発達障害の僕が羽ばたけた理由』(栗原類:著、酒井だんごむし:画/KADOKAWA)だ。本作は栗原の原作をもとに、ストーリーマンガ形式でその生い立ちや悩みを描き、ADDとうまく共存する術をポイントごとに解説した一冊。活字が苦手な人や子どもでも読みやすく、栗原が伝えたかったことを端的にまとめている。
ADDである栗原が抱えてきた問題は、実にさまざまだ。音や触感に対し敏感になってしまう「感覚過敏」、周囲に注意を向けることができない「注意力散漫」、15分前に言われたことを忘れてしまう「短期記憶障害」、そして相手の冗談ですら真に受けてしまうほど「空気が読めない」など……。
しかし、彼がそれを受け入れ、輝けるようになったのは「母親」の存在が大きかったという。彼の母親は、「みんなと同じように普通になれ」ではなく、そのときに必要なことを根気よく教えてくれたのだ。周囲に理解されず、いつもトラブルばかり起こしていた栗原にとって、常に味方でいてくれる母親の存在がどれだけ大きかったかは言うまでもないだろう。
そして、もうひとつ。栗原が自分を愛し、認め、活躍し続ける原動力になったのは、「夢」の存在も大きい。その夢とは、「コメディ俳優になること」。上述したADDによる問題は、ときに周囲から笑われてしまう原因にもなり得る。それゆえに、幼い頃の栗原にとって、誰かに笑われるということは恐怖でしかなかった。けれど、アメリカのコメディ番組を観た栗原は、そこで笑いの大切さを知る。それを機に、栗原は自身のADDすらも人を楽しませる個性のひとつと捉え、前向きになっていくのだ。後に栗原はこう語っている。
「僕の行動を今までおもしろいと笑ってくれた方々へ
僕が発達障害者と知って“笑っちゃいけない”とは思わないでください
僕が発達障害であっても そうでなくても 僕は僕だし
僕の個性が 人を笑わせられるほど おもしろいのであれば
それは コメディ俳優をめざしている 僕にとっては本望です」
栗原がどうして羽ばたけたのか。それは彼の発言を見れば明らかではないだろうか。障害を前向きに受け止め、それとどのように共存していくのか。それを知ったからこそ、彼は芸能界でも唯一無二の個性を発揮し、輝き続けているのだろう。
本作では、彼の母親や主治医のコメントも収録。また、スマホをうまく活用し障害をカバーする方法や、発達障害の支援環境についても加筆されている。発達障害で悩んでいる当事者はもちろん、その家族や友人など身近な人たちにとっても、非常に参考になる一冊だ。
文=五十嵐 大