アイデアがどんどん出る人と出ない人の差は「センス」じゃなかった!

ビジネス

公開日:2017/12/13

『2軸思考』(木部智之/KADOKAWA)

■白紙の状態では何も考えられない

 私はシステム開発のプロジェクトマネジャーとして幾多のメンバーに接してきましたが、新しいアイデアを思いつくことが苦手な人は意外と多いものです。
 そういう人は頭が悪いのでしょうか? 
 もちろん、違います。
 何かを考えることが苦手な人は、たいてい「どう考えればいいか」という方法論を知らないだけなのです。

 考えることが苦手な人におすすめするのが、「枠を作る」という方法です。
 たとえば、真っ白の紙を渡されて「好きなように絵を描いてください」と言われたら、何を描こうか、 どこから描き始めようかと戸惑ってしまいますよね。

 これは、考えるときでも同じ。何もないところで「さあ考えよう」と考え始めると、「何を考えるべきか」「何から考えるべきか」がなかなか浮かんできません。

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 考えるのが得意な人は、「枠」を設定して考える習慣がついています。
 白紙のゼロベースではなく、考える「枠」を作ることで、誰でもその「枠の中」に集中して考えることができるようになります。「いま何を考えればいいか」がシンプルかつクリアになるので、戸惑うことがなくなるのです。

■マトリクスでプレゼンの内容を考える

 考える枠のひとつは、たとえばマトリクスです。
 マトリクスと言っても、難しいものではありません。タテ軸とヨコ軸の2本の線を引き、それぞれにいくつかの項目を設定してマス目を作れば、マトリクスのできあがりです。

 ビジネスシーンではプレゼンをする機会が多くありますが、プレゼンが苦手な人も少なくないのではないでしょうか。
 プレゼンの内容も、マトリクスで考える枠を作ると考えやすくなります。

 この場合、ヨコ軸に「伝えるべきこと」と「相手が聞きたい(と思われる)こと」の2つの項目を設定します。
 あとは、それぞれの項目についてタテ軸の方向に内容を考えていけば、プレゼンの材料を揃えることができます。

 これはプレゼンについて考えるときの一例ですが、何もないところでプレゼンの内容を考えようとすると手が止まってしかねません。しかし、「伝えるべきこと」「相手が聞きたい(と思われる)こと」という2つの枠を設定するだけで、考えを進めることができます。

 私はトラブルに遭遇したときはもちろん、報告資料を作るとき、プレゼン資料を作るとき、文章を書くときなど、何かをするときにはいつも「枠」から考え始めることにしています。
 これはもう染み付いた癖のようなもので、意識せずとも体が反応している状態です。

 非効率になることがわかっているので、枠を作らずに何かを考え始めることはありません。何を考えるにしても、最初に枠を作ります。
 枠さえ作ってしまえば、あとは中身を埋めるだけ。反対に、枠がないままいくら考えてもバラバラの情報がランダムに出てくるだけで、結局、時間のムダになってしまいます。

■複雑な状況もマトリクスで整理しよう

 このマトリクスは、何かを考え出すときだけでなく、複雑な状況を整理するときにも役に立ちます。

 私の配下のチームで次のようなことがありました。
 あるリーダーが私のところにやってきて、「問題のあるタスクが30個もあって、どうしていいかわからなくなってしまいました」と言うのです。

 話を聞くと、かれこれ半年以上、解決を先延ばしにしていたことが積もりに積もって、30個も溜まってしまったとのこと。プロジェクトの大きな節目が1カ月半後に迫っている中、問題が多くて何からどう手をつけていいかがわからなくなっていたのです。
 こういうときに、マトリクスが役立ちます。

 私は報告をざっと確認し、それぞれの問題について、
・課題の内容
・現在の状況
・担当者
・難易度
・影響度
・優先度

 などの情報をマトリクスを使って整理するように指示しました。

 このマトリクスで枠に沿って状況を整理した結果、実は3分の1はすでにやるべきことが決まっていて、解決されていたことがわかりました。
 あとは、残りの課題を影響度と優先度の高いものから順次片づけていくという方針にしました。

 マトリクスを使って状況を整理することで、これまでどうしていいかわからなかったリーダーが状況を把握し、何をすべきかがわかるようになったのです。

木部 智之(きべ ともゆき)

日本IBMエグゼクティブ・プロジェクト・マネジャー。
横浜国立大学大学院環境情報学府工学研究科修了。2002年に日本IBM にシステム・エンジニアとして入社。入社3年目にしてプロジェクト・マネジャーを経験。その後、2006年のプロジェクトでフィリピン人メンバーと一緒に仕事をする機会を得る。英語はもちろん、日本語も含めていくつもの言語を巧みに操り、かつ仕事も優秀な彼らに衝 撃を受け、自分はグローバルに通用する人材なのかと自問自答した。 それ以来、いちビジネスパーソンとして世界中どこでも通用するスキルを身につけることを追求してきた。2009年に役員のスタッフ職を経験し、2010年には最大級の大規模システム開発プロジェクトにアサインされ、中国の大連への赴任も経験。日本と大連で500人以上のチームをリードしてきた。プロジェクト内で自分のチームメンバーを育成するためにビジネススキル講座を始め、そのコンテンツは社内でも評判となった。著書に『仕事が速い人は「見えないところ」で何をしているのか?』『複雑な問題が一瞬でシンプルになる 2軸思考』(いずれもKADOKAWA)がある。