「嘘をついてはいかん かといって 本当のことばかり 言わなくてもいい」地獄の大王えんま様が教えてくれる、心をおだやかにするヒント
公開日:2017/12/12
人生は山あり谷ありというように、順風満帆とはなかなかいかないものです。「心穏やかにいられたらいいのに…」と思っても、イライラしたりガッカリしたり、つい調子に乗ってしまい後悔するなど、きっと心の乱れがなくなることはないでしょう。しかし、乱れた心をおさめて、穏やかな心の範囲を広げていくことはできます。心穏やかに過ごしていくための人生訓を地獄の大王であるえんま様がびしっと教えてくれる『えんま様の格言 心の天気は自分で晴らせ!』(名取芳彦/永岡書店)が発売されました。
■えんま様はすべてを見抜く裁判官
えんま様とは何者なのか? 名前は聞いたことがあるものの、何をしているのかはなんとなくしか知らないという人も少なくないと思います。えんま様は閻魔王と呼ばれる地獄の大王であり、亡者たちを裁く裁判官です。えんま様はすべてを見抜くといわれ、中国で作られたといわれる『十王経』(正式名称は『地蔵菩薩発心因縁十王経』)には、閻魔の王宮には生前の行いがすべて映し出される「浄玻璃の鏡」と呼ばれる鏡があると書かれています。さらに、えんま様は生前の素行が漏れなく記載されている「閻魔帳」を持っています。人間の心や行いをすべて見透かすえんま様だからこその格言。本書で紹介されているその一部を紹介します。
妄語【嘘をつくこと】
嘘をついてはいかん
かといって
本当のことばかり
言わなくてもいい
「ウソをつくとえんま様に舌を抜かれるよ!」なんて、子どものころにいわれた人もいるのではないでしょうか。えんま様はひどい嘘をついた罪深い者を地獄に落とし、罰として舌を抜くといわれています。「嘘をつくな! ひいては嘘をつかなければならないようなことはするな!」とえんま様は怒りますが、嘘をついてはいけないのだから本当のことをいわなければいけないというわけではありません。嘘はいけないからと、本当のことをいって状況を悪化させることが正しい選択といえるでしょうか? 嘘をつく、正直に話す、答えは決して二つではなく、黙っているという選択肢もあります。嘘か真実、好きと嫌いなど二極化した考えにとらわれず、柔軟な考えをしていけば態度も心も柔らかくなっていくことでしょう。
失念【忘れること】
あなたの周りは
自分磨きの材料だらけ
極悪非道の限りを尽くした人間を前にして、「お前が悪事をせぬように、せっかくの三人の使者を送ったのに、情けない奴だ」とえんま様がいいました。えんま様は第一の使者に老人、第二の使者に病人、第三の使者に死人を送って、老・病・死を見つめ考えを改める機会を与えていたのです。極悪非道の限りを尽くした人間はその使者を気にも留めず、行いを改めることもなかったので、結局えんま様に地獄に落とされました。良くも悪くも、自分の周りにいる人たちから学ぶことは多いものです。周りにいる人が嫌に感じることもあるかもしれませんが、それも自分磨きの材料だと思えばすこし見え方も変わるような気がします。
日々の心得として「足なんか引っ張らずに、手を引けばいいのだ」、開運のコツとして「損得なんて人生に当てはめない」など、本書には多くの日常の不安を吹き飛ばす格言が紹介されています。えんま様の愉快な叱責は、煩悩で乱れた心を窘め、甘えをビシッと叱り、いろいろなことに気づかせてくれるでしょう。読むと心がラクになる一冊です。
文=なつめ