社長がこんなフレーズを口にしたら、あなたの会社は危ない!「事業にはオリジナリティーがないといけない」
公開日:2017/12/22
時代の変化とともに、会社もまた変わっていかなければならないもの。「今と同じやり方」「今と同じ考え方」「今と同じ人」を捨てて、「新しいこと」を取り入れなければ、会社を変えることはできません。
このことから、「事業にはオリジナリティーがないといけない」などと語る社長さんもいますが、実はそれは間違いです。「新しいこと」とは、「誰もやっていないこと」の意味ではないのですから……。
フランチャイズ事業、中小企業の経営コンサルティング事業を柱に15年連続で増収を続けている企業、株式会社武蔵野。その代表取締役社長である私、小山昇が、「事業にはオリジナリティーがないといけない」発言の危険性について解説いたします。
■経営に必要な「新しいこと」と「オリジナリティー」は違う
時代の変化に合わせるために、「新しいこと」を取り入れようとする姿勢。これは正しい。しかし、会社経営において新しいことを「誰もやっていないこと」と解釈するのは間違いと言えます。
「新しいこと」とは、「誰もやっていないこと」の意味ではなくて、「他社は成果を出しているが、自社がまだやっていないこと」「他業界では常識でも、自分の業界ではまだ常識になっていないこと」「すでにあるものの組み合わせを変えること」 なのですから。
会社に変化を起こすには、今までの考え方や常識を捨てて、「業界の非常識」を積み上げていく必要があります。
ここで私が言っている「業界の非常識」とは、「他の業界の成功事例」を指します。
ライバル企業と同じことをしていては、差は縮まりません。同業種の場合、どうしても既存の枠組みから抜け出すことができないのです。
他業界でうまくいっていることを、自分の業界で最初に実行する。サービス業なら、製造業で常識となっていることを自社に転用する。製造業なら、エンタテインメント業界で成果の出ている取り組みを取り入れる。これがポイントなのです。
■真似は最高の創造であり、真似は最高の戦略である
私の経営する「株式会社武蔵野」が15年連続で増収を続けているのは、業界の非常識を社内に取り入れているからです。
私は、自称「パクリの天才」です。「『株式会社武蔵野』の正式名称は、『株式会社盗品見本市』」と冗談めかすくらい、他社の真似ばかりしてきました。わが社のしくみは、100%どこかの真似であり、自社で考えたものは、何ひとつありません。
環境整備も、サンクスカードも、社員教育のしくみも、ITのセキュリティー対策も、コールセンターのモデルも、社員を「さん付け」で呼ぶのも、経営計画書も、元をたどれば、どれもこれも、「他社・他業界の真似」から始めています。
個性が尊重される時代にあっては、「真似すること」は「恥ずかしいこと」だと思われがちです。「独自性で勝負することが正しい」と考えられています。ですが、私はそうは思いません。とくに中小企業は、真似することが正しい。
「学ぶ」は「マネぶ」。真似は最高の創造であり、真似は最高の戦略です。愚直に真似をして3年も続けたら、それはもうオリジナルです。
よく「人の真似をしたくない」とか「自分らしさを大切にしたい」と口にする人がいます。けれど、人の行動は、ほぼ100%誰かの真似をしているだけです。ペンを使うのも、字を書くのも、毎日食事をするのも、夜になったら寝るのも、朝起きたら歯を磨くのも、靴を履くのも、携帯電話を使うのも、すべて誰かの真似です。
人の真似をして生きてきたのに「人の真似をしたくない」と言う人を何と呼ぶか知っていますか? 私はそれを「ウソつき」と呼びます。
多くの会社が、0から1を生み出そうとします。ですが、経験や実績が不足しているために、結局は「1」を生み出すことはできません。だとしたら、すでにでき上がっている「1」を真似るほうが近道です。独力で頑張って成果を出せ
ないより、「人に聞きながらでも成果を出すほうが正しい」と私は思います。
――「事業にはオリジナリティーがないといけない」。もし、社長がこんなフレーズを口にしたら、あなたの会社は危ないと考えてください。
<著者紹介>
小山 昇(こやま のぼる)
株式会社武蔵野 代表取締役社長。 1948年山梨県生まれ。
2001年から中小企業の経営者を対象とした経営コンサルティング「経営サポート事業」を展開。700社以上の会員企業を指導しているほか、全国各地で年間240回の講演・セミナーを開いている。主な著書に「社長の決定シリーズ」の『経営計画は1冊の手帳にまとめなさい』『本当に儲ける社長のお金の見方』『絶対に会社を潰さない強い社員の育て方』『右肩下がりの時代にわが社だけ「右肩上がり」を達成する方法』(以上、KADOKAWA)、『残業ゼロがすべてを解決する ダラダラ社員がキビキビ動く9のコツ』(ダイヤモンド社)など多数。