インバウンドビジネスのリーダーに求められる「7・5・3フィロソフィー」とは

ビジネス

更新日:2018/1/15

『儲かるインバウンドビジネス10の鉄則』(中村好明/日経BP社)

 2020年の東京オリンピックで注目されているのがインバウンドビジネスだ。『儲かるインバウンドビジネス10の鉄則』(中村好明/日経BP社)の著者・中村好明氏は「インバウンドは観光訪日だけでなく、出張やスポーツ試合での訪日、さらに広く言えば電子商取引や、日本の株式・不動産への投資も含む」と定義する。

 本書では、様々な角度からインバウンド・マーケティングの取り組み方を述べている。その中でも特に重視しているのは「リーダー」の存在だ。そこで著者が提案するのが「7・5・3(しち・ご・さん)フィロソフィー」である。

 リーダーに求められる素質を「7つの力」、地域や組織を変えていく方法の「5つの”き”」、現実やしがらみを突破する方法を「3つの無」として紹介している。今回、全ては紹介できないが、以下に概要を記したい。

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■リーダーに求められる「7つの力」

 インバウンド・リーダーになるための必要な素質は次の7つである。

(1)考える力 (2)示す力 (3)巻き込む力 (4)醸す力 (5)貫く力 (6)走る力 (7)育てる力

 リーダーは自ら価値のあるビジョンを考え出し、「示す場所」まできっちり作らなくてはならない。批判や邪魔をする者がいても勇気を持って進み、そのためには自分の意図をはっきり説明することが必要である。

 また、利益を考えるより先にまず旅人の目線になって考えること。その上で、自分の知識と経験をもったいぶらずに後継者を作ることも重要である。

■社会を変革する方法「5つの“き”」

(1)意識 (2)知識 (3)勇気 (4)元気 (5)景色

 これらは、最後がすべて「き」の文字で終わることから「5つの“き”」と名付けられている。いきなり現実を変えることは不可能だが、人々の「意識」を変えることはできる。人々の意識が変わって初めて、社会が変わる。意識が変わると今度は「知識」が身につき始める。

 そうすると、「やってみよう」という「勇気」も生まれる。地域という単位で物事が動いてくればそこに「元気」が生まれ、街の「景色」を変えていく。それが変革のステップである。

■しがらみを突破する「3つの無」~三無主義

 待ち受けるしがらみに立ち向かうには以下の3つが必要である。

(1)無条件 (2)無前提 (3)無根拠

 すべての条件が整う日を待っていたら何も進まない。たとえ条件が整っていなくても、今何をするべきなのかというビジョンを明確にしなければならない。「できるはずがない」「どうせうまくいかない」などという無意識の前提を一度手放し、成功の道筋を見つめ直す。世の中ではとにかく根拠が求められるが、何もないところから一歩を踏みだすことも時には必要である。

 著者にとって、今回の本で6冊目のインバウンド関連の著作となるが、単なるハウツー本、テクニック集にならないことを毎回こころがけているという。本書は具体的で実践的なメソッドを記しながらも、そんな著者のインバウンドへの情熱と哲学が全編に渡って綴られている。

 様々なビジネスの場を渡り歩いて経験を積んだ著者だからこそ書ける、精神性を織り込んだ本質的な方法論である。オリンピックを控え大きな波を迎えようとしているこの日本で、インバウンドビジネスに関わる人のみならず、働く人々ならば誰でも手にとってみてほしい一冊である。

文=女生徒