AIのことはおち“あい"に聞く!? 『情熱大陸』で大反響! カレーをストローで飲む男・落合陽一に迫る!【レビューまとめ】
更新日:2017/12/23
レトルトカレーをストローで飲む男。TBS系『情熱大陸』で特集された際に、独特の食事スタイルがネットでも話題になった「落合陽一」さんをご存じだろうか。あらゆる面で突出する落合さんは各方面から注目される。“現代の魔術師”との異名だけでなく、メディアアーティストや筑波大学准教授など他にも多くの肩書きを掲げながら、自然な形で機械と人間が融合する新たな世界観「デジタルネイチャー」を提唱する落合さん。彼はどんな風に未来を見ているのだろうか。
■現代の魔術師・落合陽一とは?
落合さんは、1987年東京都港区生まれ、2017年現在で30歳。国際ジャーナリスト・作家の落合信彦さん、音楽プロデューサーの母の元で育った。「陽一」の名前の由来はプラス(陽)とマイナス(一)からという落合さんは、3歳の頃に電話の存在が不思議でたまらず、自宅にあった4台の電話を全部分解してしまって両親に叱られたほどの理科好き少年だった。開成高等学校から筑波大学情報学群情報メディア創成学類を経て、東京大学大学院修了のちに博士号を飛び級で取得。World Technology Award 2015 IT hardware部門受賞を皮切りに、研究や作品に対して世界的な賞を多数受賞してきた。
その一方で、冒頭に紹介したカレーの食べ方など、独特な感性にも注目が集まり、テレビなど多くのメディアにも出演。“炭水化物は眠くなるので食べずに、代わりにグミなどのお菓子を主食にしている”とか“悩む時間が無駄なので服はYohji Yamamoto(ヨウジヤマモト)しか着ない”とか“4時間程度しか毎日寝ないにも関わらず、少しでも時間があると夜な夜なゲームに明け暮れる”とか。そんな人物だ。
■落合陽一の提唱する「デジタルネイチャー」
そんな落合さんの提唱する「デジタルネイチャー」とはどういった世界観なのか。落合さんの考えを理解するには落合さんの『魔法の世紀』(PLANETS)を読むとよいだろう。
落合さんにとって初の単著となった本作では、落合さんの持つ世界観や歴史観、それらに導かれる未来のビジョンが明確に描かれている。その変化の中核を担うのが「コンピュータ」というテクノロジーの存在。
映像のような中間物を媒介せずに人間や物事がコンピュータによって直接つながる時代だと落合さんは21世紀を見る。20世紀という「映像の世紀」においてイメージの中で起こっていた出来事が物質の世界へ踏み出していく時代を「魔法の世紀」と呼び、その変化の本質が本書で描かれているのだ。
やがてコンピュータは人々に意識されない存在へと発展していく。つまり「これからのコンピュータは自然化していく」という。まるで空気や植物のような存在。デバイスの存在がユーザーに意識されている時点では、その進化は全く徹底されていないとまで落合さんは述べるほどだ。
「コンピュータの自然化」を説明するキーワードとして、本書で提唱されているのが「デジタルネイチャー」という概念だ。コンピュータが自然化した社会では、人間の描く空想を実際の空間に実装することができるようになってくる。コンピュータによって、現実空間を自由に操れるようになるのだ。まさに「魔法の世紀」を落合さんが予見した著書と言えるだろう。
<詳しい内容はこちら>
21世紀は〈魔法の世紀〉!? 今、世界中で起こりつつある社会変化、その本質とは何か?
■シンギュラリティを迎えるAI時代にどう生きるべきか
落合さんの予見する未来に、なくてはならないのが「AI(人工知能)」の存在だ。2040年代には全人類の知能を超えるAIが誕生する「シンギュラリティ」が起こるとも言われているが、私たちはどうやってAI時代に生きていけばいいのだろうか。そんなAI時代の生き方を落合さんがまとめたのが、『超AI時代の生存戦略 ~シンギュラリティ〈2040年代〉に備える34のリスト』(大和書房)だ。
これまでの「競争」は“レッドオーシャン”のなかで限られたパイを奪い合うことだった。しかし、その競争の質が変わっていき、“ブルーオーシャン”の中で自分しかやっていないことを淡々とやるようになると本書で落合さんは述べる。決まったルールの上で、データをもとに勝負をするとなればAIに人間はかなわなくなる日が近い。だからこそ、競争もなくてルールが決まる以前の状態の世界で何かをすることがこれからの人間には求められるというわけだ。
だからこそ、これからは「ワーク“アズ”ライフ」を見つけられた人が生き残る時代であり、余暇のようにストレスレスな環境で働けるポートフォリオを描くことの重要性を落合さんは説く。仕事とプライベートの境目が限りなく曖昧で、人生そのものが仕事であり趣味であり生活であるという考え方。それは余暇を趣味で潰すという意味ではなく、人生においても戦略を定め、差別化した人生価値を仕事や飯のタネにしていくということだ。
<詳しい内容はこちら>
【AI:人工知能】「シンギュラリティ」後、私たちはどう生きるのか? 生活や仕事はどう変わるのか?
■試行錯誤で未来を切り拓く
「予定表に書き込んでおかないと風呂に入る時間も忘れる」ほど、並外れた集中力で仕事にも打ち込む落合さん。『情熱大陸』の終盤では、イルカと会話することに目を輝かせていた。あれだけ仕事を楽しそうに実績を作ってきた彼ならイルカと話せる技術もすでにイメージできているのかもしれない。
ケーススタディの末にたどり着いたカレーの食い方.
1.火傷するので常温
2.具を手で潰してから開封
3.太めのストローでフラペチーノを食うようにザクザク吸う
4.箱のまま食えばゴミも飛び散らず,垂れない. https://t.co/gHOrLHu8o2— 落合陽一/Dr.YoichiOchiai (@ochyai) 2017年11月22日
余談になってしまうかもしれないが、落合さんがカレーの食べ方とメリットを自身のTwitterで放送の後に紹介していた。一見破天荒に見える食べ方にも理由があったこと、また一文目の「ケーススタディの末にたどり着いた」という試行錯誤を匂わせるコメントがいかにも科学者の彼らしい。
そんな落合さんの試行錯誤が、「デジタルネイチャー」や「シンギュラリティ」を現実のものにする日も近いのかもしれない。
文=田中利知(ネイビープロジェクト)