「商売的には成り立たない出版だからこそ、自由にできる強さがある」『日本のZINEについて知ってることすべて』野中モモ、ばるぼらインタビュー
公開日:2018/1/6
野中●自分で何かつくって読んでもらうのが小学生の頃から好きで、学級新聞を出しまくっていました。中学生になってからは、コミケに行ったり、映画や音楽系のファンジンに出会ったりして、自然といろいろな自主出版活動があることに気づきましたね。
ばるぼら●私は古本屋での出会いでしたね。音楽雑誌のバックナンバーを扱っている店がZINEも置いていて。音楽系を皮切りに、マンガ、映画、デザインといろんなジャンルに手を出していきました。各分野に特化してZINEを収集している人はいると思うけど、ジャンルを問わず大量に集めている人は、我々以外であまりいないかも。
野中●ミニコミ、同人誌、リトルプレスなど、幅広い領域から横断的に紹介している本はこれまでなかったと思います。もちろん性質上「網羅」はできっこないんですけど。
ばるぼら●海外にはこういう本はあるんですけどね。日本もすごいんだぞ!と伝えたかった。国内だけじゃなくインターナショナルに。
野中●ZINEの魅力って「やりたい人がやっていい」ことですよね。たとえつたなくても、「自分」を表明できる。まず形にしてみることで、見えてくるものもあるし。
ばるぼら●まさか自分が印刷物をつくるなんて思っていなかった人でも、「こういうやり方があるんだ」って、イベントの参加手段としてつくってみるとか、一つの選択肢として広まっていくといいですね。商売的には成り立たない出版だからこそ自由にできる強さがあるし。つくり手が同時に読み手という関係も理想的。
野中●そうですね。個人が発信して、小さな輪で受け取って、それに反応してまた誰かが発信する。この流れはこれからもどんどん続いていくと思います。
ばるぼらさん:ネットワーカー、古雑誌蒐集家、周辺文化研究家。赤田祐一さんとの共著『20世紀エディトリアル・オデッセイ』(誠文堂新光社)はZINE本の姉妹篇です。
野中モモさん:文筆・翻訳業。オンライン書店「Lilmag」店主。著書『デヴィッド・ボウイ 変幻するカルト・スター』(筑摩書房)の他、いくつもの海外書籍を翻訳。
取材・文/田中 裕 写真/首藤幹夫