東大ゴルフ部が優勝しちゃった! 講義+レッスン+ドキュメントで「上手くなる流れ」を紹介。東大式ゴルフであなたが変わる! ゴルフ自己啓発本【著者インタビュー(後編)】

スポーツ

更新日:2017/12/27


 日本ゴルフツアー初のプロコーチ・井上透さん。東京大学ゴルフ部の監督になり、チームを優勝に導くストーリーが描かれたレッスン書『弱小集団東大ゴルフ部が優勝しちゃったゴルフ術』(主婦の友社)では、東大ゴルフ部員が、“上手くなる流れ”の一部始終が紹介されている。

 当初は井上さんに教えられるだけだったゴルフ部員たちは、新たな知恵を授けられ、それを的確に分析して実力アップしていく。各章の最後を結ぶ形で収められている部員のモノローグを読むと、そんな姿が鮮やかに浮かび上がる。“上手くならない”と悩む世のアマチュアゴルファーが、上手くなる方法を知らないだけなのだと思い知らされる。


■コーチ生活20年。勝って初めて流した涙

 東大生ゴルファーの成長記録は、関東大学対抗戦のドキュメントとしても収められている。道まだ半ばではあるが、コーチ(当時)に就任して10ヵ月あまりで部はブロック優勝という一つの目標を達成した。そこではプロを何十回勝たせても泣いたことのなかった井上さんが、初めて涙するシーンがある。

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「理由はよくわかりませんが、感動したということでしょうね。僕はこれまでジュニア以外はずっとプロしか教えてきませんでした。プロの世界では勝つことがミッションです。勝つためにいろんな準備をして目標を達成する。出した結果に対して達成感はありますが、感動ではないんです」(井上さん)

 井上さんがプロコーチになったのは23歳のとき。教えるプロはみな年上で、コーチとプロゴルファーというヨコの関係はあっても、先生と生徒のようなタテの関係はない。27歳でジュニアを教えるようになったが、そこでも先生と呼ばれることを嫌った。

「先生という言葉にいいイメージがなかったせいか、ずっと先生と呼ばれることに抵抗を感じていて、子供たちにも、“井上コーチ”とか“井上さん”と呼びなさいと言っていました。でも、ゴルフ誌でレッスン・オブ・ザ・イヤーを受賞したときに、子供たちがくれたビデオメッセージを見て泣けた。実は、これがコーチになって初めて泣いた瞬間なのですが、そこで“ああ、自分は先生なんだな”と思った。それ以来、先生という立場を受け入れられるようになりました。東大でも監督とかコーチと呼ばれますが、基本的には先生と生徒の関係だと思っています」(井上さん)


■優勝の背景にあった一人一人のドラマに感動した

 東大ゴルフ部を強くして対抗戦で勝つ。これもひとつのミッションには違いない。だが、プロの世界とはまた違った意味で、そこに至るまでには多くのドラマがあった。それはコーチとしてよりも、先生としてのドラマだった。それゆえの感動だったということなのだろう。

女子にとって雨は辛い。少しでも助力になればと、男子部員を近くのホームセンターに走らせ、材料を仕入れて自家製のレインカバーを作らせました。これが力作で、クラブがまったく濡れなかった。(本文より)

「優勝はひとつのドラマですが、それを支えたのは一人一人の部員たち。支えてくれた一人一人にもドラマがあります。プロは個人戦ですが、こちらは団体戦。背景で起こったいろんなことの一部始終を見てきたわけで、それに心を揺さぶられたのだと思います。団体スポーツ的な感動ですね」(井上さん)

 こういった体験は東大ゴルフ部のみならず、今後のゴルファーのあり方に影響するかもしれないと井上さん。

「一昔前までは1300万人いたゴルフ人口が、アクティブ人口で500万人とかに向かっていく時代。ゴルフの核家族化が始まっていて、周りでゴルフをやる人がどんどん減っている。仲間がいなくなったから自分もゴルフに行かなくなる、というフェーズに入っているわけです。そうなると仲間が大事。以前は会社が担っていたことを違った形でコミュニティを作っていかなければならない。チームとして上達していった東大ゴルフ部はひとつのロールモデルになるかもしれません。そのためにできることがあればサポートしていきたいとは思っています」(井上さん)

卒業までに部員全員を70台で回れるレベルにする。
チームを対抗戦のBブロックに昇格させる。(本文より)

 これが部の2大目標。世のサラリーマンゴルファーからみれば、とてつもない目標に思えるかもしれない。だが、井上さんは言う。

「本書にも書いた通り、ゴルフには上手くなる法則があります。まず、どれだけ練習すればどれだけの対価が得られる、という指針と、そうなる方法論を知ることがとても大切。はっきり言って、僕が彼らに指導したのはそれだけです。でも、それは部員たちにとってゴルフを学ぶ大きな動機づけになりました。動機づけができたら場を用意してあげればいい。僕は彼らの心に火をつけて実践する場を提供した。それがここまでのミッションだったわけです」(井上さん)

 もちろんこれは東大生ゴルファーに限ったことではない。物事をしっかり考えることさえできれば、誰でもこのように動けるはずだという。

「ゴルフは簡単には上手くなれません。でも早く上手くなる方法はあって、それには欠かすことのできない情報がある。この本では、その情報のやりとりを東大ゴルフ部員と向き合う形で紹介しただけなんですよ」(井上さん)

 ということで、部員がますます力をつけ、東大ゴルフ部がパワーアップしていくのはこれから先。そういう意味では、今後の新たなストーリー展開にも期待をもたせてくれる。いずれにしても、これまでのゴルフレッスン書とは一線を画した作品である。

【前編】はこちら:東大ゴルフ部が優勝しちゃった……! 講義+レッスン+ドキュメントで「上手くなる流れ」を紹介。東大式ゴルフであなたが変わる! ゴルフ自己啓発本【著者インタビュー(前編)】

<著者プロフィール>
井上透(いのうえ とおる)

1973年生まれ、横浜市出身。アメリカでゴルフ理論を学び、1997年より日本における初のツアープロコーチとして男子ツアーに帯同。多くのプロのコーチングを行っている。2011年には早稲田大学大学院にて「韓国におけるプロゴルファーの強化・育成に関する研究」にて最優秀論文賞を獲得。国際ジュニアゴルフ育成協会理事長として、『世界ジュニアゴルフ選手権』の日本代表監督を務めるほか、2017年より東京大学ゴルフ部の監督に就任(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)。

『弱小集団東大ゴルフ部が優勝しちゃったゴルフ術』
著:井上透
価格:1200円+税
ISBN: 978-4-07-425923-6
発売日: 2017年12月13日
出版社:主婦の友社