関ジャニ∞錦戸亮主演映画『羊の木』は、吉田大八監督の「演出家」としての手腕が光るホラーな群像ミステリ
公開日:2018/1/6
関ジャニ∞のメンバーとして活動しながら、有川浩の同名小説が原作の映画『県庁おもてなし課』に主演した際は「どこからどう見ても公務員!」とアイドルらしからぬ讃辞を集めた、錦戸亮。最新主演映画『羊の木』でも、さびれた港町の市役所職員・月末を演じ、地味で普通な存在感を絶妙に表現した。物語の構造上、そうでなくてはいけなかったのだ。なにしろ月末が上司から内密に与えられた仕事は、刑務所から仮釈放された6人の身元を引き受け、素性を隠したまま過疎化したこの街の住民として溶け込ませること。月末が6人を順番に出迎え会話を交わす、ホラーかつコメディな冒頭の18分間で、傑作が確定した。俳優全員、キャリア最高の演技をしている。
山上たつひこが原作、いがらしみきおが作画を担当した同名マンガの映画化だ。しかし、初期設定と一部エピソードを要素として取り入れているのみで、ほぼ別物と言っていい。原作をいかに再現するかが焦点であり商機となっている昨今の映画ビジネスにおいて、ここまでのアレンジは極めてまれだ。ぜひ比べて楽しんでほしい。
文=吉田大助
『羊の木』
原作:山上たつひこ、いがらしみきお(講談社イブニングKC)/監督:吉田大八/出演:錦戸 亮、木村文乃、北村一輝ほか/配給:アスミック・エース/2月3日より全国公開