女優・濱田マリ流「親離れ子離れの方程式」が興味深い!
更新日:2024/9/18
子どもはいつか、「サンタという夢」から目覚める。例えば、子どもの成長を日記に綴っておくと、子どもが手から離れたとき、「サンタ」の話題でわが子と楽しい思い出タイムに浸れるかもしれない。
『濱田マリの親子バトル!』(濱田マリ/河出書房新社)は、女優・濱田マリが愛娘の幼稚園から大学入学までの13年間を書き紡いだ「定点観測・子育てエッセイ」。語り口がユーモラスで、抱腹絶倒、ときどきホロリの初単著だ。
濱田家のサンタバレは、「娘」が小4のとき。
肌寒い11月中旬の深夜。キッチンの片隅で娘と二人でお茶漬けをすすりながら、な〜んかシアワセな気分になってきたところに「サンタさんって毎年二人でやってくれてんでしょ?」ときた。サラッときた。
…
お前も早く吐いちまえよ!とでも言いたげな口調で私を追いつめる。だから「母が計画して、父が実行してます」とこちらもサラッと吐いた。悪あがきして「優しいウソをどうもアリガトね!」なんて言われたら恥ずかしいし。たぶんそういうこと言うし。
これが、「娘」が中3になると、次のようにやり取りが洗練されるのがリアルでおもしろい。
ワタシね、サンタさんにお手紙書くの
→今度こそ罠を作ってサンタさんを捕まえるの
→今年も二人でサンタさんやってくれるの?
からの、おかあサンタさん、プレゼントはいくらまでなら大丈夫? と年を追うごとにリアリティは増してゆく。夢はない。けれど無駄もない。中3だもの。こんな時代ですもの。
子どもの成長の背景には、子どもと過ごした歴史がある。歴史が凝縮された定点観測の子育て日記からは、子どもの変化だけでなく、親自身の心情の変化も再確認できる。
「娘」が小6のときに、子育て日記を綴ることで「親離れ子離れの方程式」がわかったという記述が興味深い。
子どもに手がかからなくなってくる
→ラク
→それどころか用事をやってくれる
→頼もしい。そうなってくると可愛いというワードから我が子がどんどん遠ざかっていく。それでもいい、ラクなんだから
→っていうか仕方がない、もう泣いて自分を求めてくれる我が子は存在しないんだ
→過去を振り返ってはならん、前を向いて生きていこう
→あと10年もすればお給料で特大のマトリョーシカを買ってくれるかもしれない
と、こんなふうに親を助けるという機能を少しずつ身につけて、子どもは親から離れていくのだと述べている。実践からの推測だから、じつに説得力がある。
巻末に、濱田家の母娘対談が収録されている。大学生活を謳歌している「娘」は、たくましく成長したようだ。
濱田マリファンはもちろん、実践からのふか〜い育児論に触れたい人は、ぜひ手にとってほしい。
文=ルートつつみ