「中学数学」で「社会人に必要なものの見方」が身につく! 大人になった文系人間が知っておきたい、数学的思考のチカラ

ビジネス

公開日:2017/12/28

『マンガでおさらい中学数学』(春原弥生、佐々木隆宏/KADOKAWA)

 数学は苦手だった。高校以来、数学とは関わっていないし、関わりたくもない……という大人の文系人間は多いのではないだろうか。
 だが、文系だからといって数学を避け続けているのは、社会人として実にもったいない。中学レベルの数学で身につけた知識は、実は多くの人が無意識に活用しているし、意識的に使いこなせば、社会で生き抜くための強い味方になるからだ。ここでは大人のための数学やり直しマンガ『マンガでおさらい中学数学』(春原弥生、佐々木隆宏/KADOKAWA)から、文系人間が知っておきたい数学の考え方を紹介する。

■データの見せ方、読み方は数学で学べる

 社会人なら、自分の意見を通したいとき「だってこれがいいと思うんだもん!」などとダダをこねるわけにはいかないので、その主張の有効性を裏づける、わかりやすいデータを集めて相手を説得することが必要になる。
 そのために役に立つのが、中学数学の「資料の整理」の単元。私たちの身の回りにはさまざまな統計データがあふれており、私たちの意思決定に大きく関わっている。ニュースで見る政府などの意思決定にはこの統計データが関わっているし、スマホや自動車などのパンフレットによくある、性能を比較するための一覧表も統計データだ。もっと身近なところでは、「12時を過ぎるとランチ難民になっちゃうから、今のうちに」と11時半にランチに行くのも、過去にちょっと大変な目にあったというデータがあるからだ。
「資料の整理」の単元は、そのようなデータをどう整理するかを学べるもの。集めてきたデータをどのように見せるかだけでなく、データの読み方も身につけることができる。

■何でも「平均」を出せばいいってものじゃない!

 数学において、あるデータをひとことで表したものを「代表値」というが、その代表値には「平均値」「中央値」「最頻値」の3種類がある。一般的にもっともよく知られているのは平均値だろう。「資料の個々の値を合計したもの」÷「資料の個数」で導き出せる。
 だが、何でも平均値を出しておけばよい、というものでもない。たとえば、ある会社で入社10年目の社員20人の年収の平均値を出したとき、その数字が508.8万円だったとする。「そうか、大体みんな500万円くらいもらっているんだ」と思ってしまうかもしれないが、実はそうではない。この中に、早々と役員に抜てきされて、年収2275万円の人がいたとしたら? この人物がいるために、平均値が大幅に押し上げられてしまい、実態が見えなくなってしまうのだ。このようにデータに極端な数値がある場合、平均値は代表値としてはふさわしくないことがある。

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 中央値は資料の値を大きさの順に並べたときに、ど真ん中の数値を拾ったもの。ただしこれはデータ全体が反映されている感じが平均値に比べて薄れてしまう。
 最頻値は、資料の中で一番よくあらわれる値のこと。仮に入社10年目の社員の年収で一番多かった数値が410万円だったとすると、これが最頻値だ。平均値508.8万円を見たときとは受ける印象が変わるだろう。
 同じデータを使うにしても、見せ方にはいくつかの方法があり、場合によっては、その見せ方によって印象がだいぶ変わってしまう。これを知っておけば、自分の主張を通すためには、どんなデータをどのように見せればいいかがわかるし、逆に、データを正しく読み解くことも可能になる。

 中学数学で学ぶ内容が、実社会でも役立つことを感じていただけただろうか。ここで取り上げた例のほかにも、「結論に持っていくための証拠を順序立てて並べ、論理的に説明する」(証明)のも、「地図を読んで目的地にたどり着ける」(図形)のも、数学的な考え方が身についているからこそだと言える。意外と使える中学数学を、文系人間こそ、おさらいしてみてほしい。