正直な話、雑誌やWebに載っている「美容情報」の大半は面倒くさい。肌や髪のお手入れ、マッサージ、きちんとしたメイク…。キレイな女子になるためにはとにかくやることが多いのだ。

　なかにはプロのモデル・女優並みに美意識が高く「美容のためなら何時間費やしても惜しくはない！」という人もいるかもしれない。こうした丁寧で手間のかかる美容を毎日コツコツ続けている人を、筆者は心の底から尊敬する。

　でも世の中、きっとそんな偉い人ばかりではない（と信じたい）。忙しさのあまり手抜きしまくっている人もいれば、ズボラな性格ゆえに1つの美容法が続かないという人もいるはず。

　ラクして時短でキレイになりたい。そんな女子のワガママを叶えてくれるのが本書『ズボラ美容！ ラクしたってキレイになれる！』（篠宮志乃/主婦の友社）だ。

　著者は日本4大ミスコン日本ファイナリスト出身の美容ライター、モデル。「美しさ」を武器に仕事をしているプロである。ところが彼女、「思えば、ズボラだったのは子供の頃から」と振り返るほどの真性ズボラ女子！

　もちろん手間や時間のかかる美容法なんて続けられないし、普段のケアすらサボりがち。

自分がキレイになるためには、時間とお金をかけてていねいにケアすることが大事ということはわかりつつも、どこかに行ってキレイになるのも、自宅で時間をかけてキレイになるのも、全て「面倒くさい」と思ってしまうのです。

　今でも美意識の高い人から見たら怒られそうな生活をしている、と語る著者だが、1つだけ以前と変わったことがあるという。それが「自分がズボラであること」を認め、それに合わせた美容法を取り入れること。

　世の中に出まわる美容情報の多くは美容に手間や時間をかけるのが苦にならない人向けにできており、それが「できない」「続けられない」人のことはあまり考えられていない。「○○するといいですよ」とはすすめても、継続が難しいズボラ女子には冷たかった。自分の美意識を高めましょう、もっと努力しましょう、と。

　でも本書は違う。今さらズボラな性格を直すなんて無理、と潔く割り切っている。代わりに頭を使う。お風呂に入るのすら面倒、休日はパジャマでだらだら、というズボラな人にありがちなアレコレを考えた上で戦略を立てているのだ。

　ズボラな自分を生まれ変わらせるのではなく「ズボラな私でもできるように美容法自体を変えてしまえ！」という逆転の発想である。ズボラな性格ゆえにありがちな行動・状況を先読みし、あらかじめ手を打っておく。それによって無理なく美容によい習慣を取り入れていこう、というのが著者の提案だ。そこで本書には普通の美容家が絶対に教えてくれない、ズボラさん向けのテクニックが多数登場する。

　枕元にメイク落としシートやリップクリームを置いて、メイクの落とし忘れやリップケアのし忘れを防止。丁寧なスキンケアが面倒ならスキンケア化粧品を全部混ぜて一気塗り。自動巻きアイロンや速乾ミストといった文明の利器を取り入れて時短する。なかには「頭を洗い忘れてしまったとき、周囲の目をごまかすためには？」という禁断のライフハックも。

　本書で紹介されている方法はあくまで応急処置的なものであって、決してベストではない。美容にこだわりのある人から見たら「物足りない」と感じる点もあるだろう。しかし美容に必要なのは何よりも継続である。手間暇をかけて途中で挫折するくらいなら、適当でおおざっぱでも続けた方がずっといい。

　そもそも人間の1日はたった24時間しかないのだ。睡眠時間や就業時間をのぞいたら自由に使える時間はほとんどない。だったら「美容以外のことに時間を使いたい」と考える人がいても不思議ではないし、それを単純に美意識が低いと考えてしまうのは不条理なようにも思う。

　忙しくてもズボラでもキレイになれる、と教えてくれる本書は読む人に勇気を与えてくれる。「美容は大変」と悩めるすべての女子に本書を贈りたい。

文＝遠野莉子