愛した人が“モンスター妻”“エイリアン夫”になってしまったら…臨床心理士が教える夫婦関係を改善する方法とは?
公開日:2017/12/28
厚生労働省が発表した人口動態統計の年間推計 によると、2016年の婚姻件数は62万1000 組で、離婚件数は21万7000組となっている。このことから「日本では3組に1組の夫婦が離婚している」とよく言われているが、この数値にはからくりがあるそうだ。
臨床心理士の本田りえさんは『みんな「夫婦」で病んでいる』(主婦の友社)の中で、結婚率と離婚率の比較について
この計算は、この年に結婚したカップルの数に対してすでに結婚したカップル全体の離婚数を割って出した数字なのです。
近年婚姻数自体が減少している局面で、単純にその年の結婚数を離婚数で割って出た数字を離婚率と考えるのは実態に添わないし、現状は見えてきません。(中略)実際には離婚はこの10年以上増えていませんし、離婚率は諸外国と比較しても高くありません。
と解説している。
とはいえ、自分で選んだはずの夫や妻がストレス源に変わったという相談を、本田さんはこれまでに数多く受けてきたという。確かに結婚して3年も経つと互いの気持ちがすれ違い、愛情が薄れてしまう…という話はとてもよく聞く。他人同士の2人が夫婦となり、1つ屋根の下で暮らしていくには、さまざまな困難が伴うのは事実だ。しかし不満を抱えながらも諸事情から離婚を選ばず、夫婦生活を継続している人も多いようだ。なぜ好きで一緒になったはずなのに、気持ちがすれ違ってしまうのか。
本田さんはその理由のひとつとして、ホルモンによる影響をあげている。
人類学者のヘレン・フィッシャー博士によれば、恋愛初期の脳内には、気持ちを高揚させる恋愛ホルモン「PEA(フェニルエチルアミン)」が分泌されるそうです。しかし、このホルモンはだいたい3年くらいたつと、分泌されなくなるといいます。これが「恋愛の賞味期限は3年」と言われる理由です。
しかし誰もが、わずか3年で相手を好きではなくなるとは限らない。このことに対しては、長年のパートナーに対しては「愛着」を持つようになり、相手に対して落ち着きや安心感を感じるようになる。この「愛着」を互いに持てるようになることで、ずっとパートナーを思いやり、大切にできるのではないかと、本田さんは言う。
また妊娠、出産を経験することですれ違う夫婦も多いが、これは妻の子育てストレスだけではなく、夫の「父親としてもっと頑張って働いて家族を支えねば」というプレッシャーへの妻の不理解も大きい。育児や家事を協力して欲しい妻と、外で働くことで家庭を支えたい夫は、それぞれに異なった言い分がある。互いの大変さをぶつけるだけでは「愛着」を育てることは難しいようだ。
そこでどうすればいいかについて本田さんは、「相手を変えるより自分を変えるほうが数倍カンタン!」と主張している。第2章でお受験に固執する妻や子供に対抗心を燃やす夫などを例にあげ、そんな“モンスター妻”と“エイリアン夫”の対処法に触れているが、いずれも相談者本人が気持ちを切り替え、相手とのコミュニケーションを取ることを勧めている。離婚しないのであれば、まずは自分が努力して相手との落としどころを探ること。「悪いのはあっちなのに」と思ってもそこは自分から歩み寄ることが、抱えたもやもやを整理するヒントにもなるそうだ。
そして話し合いや努力では解決できないなら、離婚を選ぶことも間違いではないとも言う。たとえばDVやモラハラは、当人や家族の努力や教育だけでは解決できないからだ。本田さんは別れを選んだ場合のその後の生活の心構えや、やっておくべきことまでを紹介して、この本を結んでいる。
結婚を続けるか離婚するかは、当人同士の選択に過ぎない。だが「結婚って難しい」と絶望して投げやりになっては、人生がもったいない。せっかく夫婦になったのだから、相手に失望する前にできることはして欲しい。しかし一緒にいてはダメな相手もいるから、その時は迷わず手を放して欲しい。そんな本田さんのメッセージが1冊にわたり伝わってくる。
相手も幸せにしたいと思うことは、自身を幸せにすることにも繋がる。それを教えてくれるのも、「夫婦」という在り方なのかもしれない。
文=霧隠 彩子