『6度目の大絶滅』『「ない仕事」の作り方』…ベストセラーからニッチな本まで! 生物心理学者がおすすめする、絶対に読むべき90冊!

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公開日:2018/1/9

『脳に心が読めるか? ―心の進化を知るための90冊―』(岡ノ谷一夫/青土社)

 膨大な書物の海を漂っていると、時に羅針盤が欲しくなる。この度、心強い羅針盤となる書評集が出版された。それが『脳に心が読めるか? ―心の進化を知るための90冊―』(岡ノ谷一夫/青土社)だ。生物心理学者の著者が取り上げるジャンルは脳科学や心理学をはじめ、哲学、数学、音楽、小説、環境問題やAI、さらに、格闘技に俳句や短歌、老老介護にみうらじゅん、果てはダンゴムシまで広範囲に及ぶ。著者が脳と心の問題に絡めて紹介する90冊は、科学と文化の最先端に触れるための読書ガイドとして異彩を放つ。

 著者の岡ノ谷一夫(おかのやかずお)氏は言語とコミュニケーションの起源を研究する東京大学大学院総合文化研究科教授だ。長年「小鳥のさえずり研究」に携わり、その研究成果をまとめた『さえずり言語起源論』(岡ノ谷一夫/岩波書店)を本書のなかでも紹介している。

 本書の目次を覗いてみると…、

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・私たち自身も絶滅危惧種なのだ『6度目の大絶滅』(エリザベス・コルバート:著、鍛原多惠子:訳/NHK出版)
・脳科学についてまず一冊読むのなら『脳のなかの幽霊、ふたたび』(V・S・ラマチャンドラン:著、山下篤子:訳/角川書店)
・こいつ、何考えてるんだ『ダンゴムシに心はあるのか』(森山徹/PHP研究所)
・その手がかりのひとつをフロイトの臨死体験にみた『ウィーン大学生フロイト』(金関猛/中央公論新社)
・連綿と続けて来た営みを切断すること『IQは金で買えるのか』(行方史郎/朝日新聞出版)
・僕の意識は今生限りと思うほかはないのか『巨大数』(鈴木真治/岩波書店)
・YouTubeで10回以上聴いた曲があるなら『誰が音楽をタダにした?』(スティーヴン・
ウィット:著、関美和:訳/早川書房)
・みうらじゅんへの道はきびしい『「ない仕事」の作り方』(みうらじゅん/文藝春秋)

 など、心をくすぐる魅力的なテーマがずらりと並ぶ。

 ここで一冊だけ、今注目を集めている人工知能を扱った『働きたくないイタチと言葉がわかるロボット 人工知能から考える「人と言葉」』(川添愛:著、花松あゆみ:イラスト/朝日出版社)を紹介したい。この本は王様のように暮らす日々を夢見る主人公のイタチが「すごいロボット」を作る過程を通して、読者はイタチと共に人工知能とは何かを学べるようになっているという。「人工知能を基礎から理解しこれに冷静に向き合うために」と岡ノ谷氏はこの本を薦める。人工知能というと、とてもハードルが高そうだが、「常識があり、足し算・かけ算ができれば、この本を読み通すことができるはず」という。ぜひ読みたい一冊だ。

 他にも、カラスに蹴られないための本とか、ジャイアント馬場の話など、硬軟取り混ぜて、幅広い分野の本がセレクトされている。脳科学や心理学に興味のある人はもちろん、新しいジャンルの本を開拓したい人も、本書でお気に入りの一冊を見つけてほしい。

文=松本敦子