ネット通販日商5兆円の中国、スマホ契約数で日本を抜くカンボジア…日本がデジタル後進国に!?
公開日:2018/1/9
毎年恒例の論壇誌、『文藝春秋オピニオン 2018年の論点100』(文藝春秋)の季節がやって来た。今年(2018年)旬となるであろう論点(話題・テーマ)を専門家たちが解説する一冊だ。
今回ご紹介するのは、本書に収録された論点No.50「デジタル下克上 日本がアジアに後れをとる?」(以下、本稿と表記)、著者は大泉啓一郎氏(日本総研上席研究員)だ。
さて、中国で11月11日といえば、「独身の日」だ。今やこの日を、独身者どころか、既婚者も老若男女も全部ひっくるめた中国の全国民が、心待ちにしている。その理由は、中国EC最大手アリババグループと、直販EC最大手JD.comによる、ネット通販の祭典が行われるからである。
この2社のこの日1日だけの売り上げが“超ド級”なことは、日本でもほぼ全メディアが伝えているので、すでに多くの人がご存じだろう。一応お伝えしておくと、2017年11月11日の売り上げは、2社合計でなんと、「2953億元(5兆201億円、1元17円換算、ECニュースサイト「ネットショップ担当者フォーラム」発表)だった。
つまり、日商5兆円。で、なにがお伝えしたいかと言えば、これがまさしく今起こりつつあると著者の大泉氏が指摘する「デジタル下克上 日本がアジアに後れをとる?」という論点の、典型的なひとつの論拠ということだ。
ただし本稿で大泉氏が記述したのは、2016年の独身の日のデータだ。それを筆者が2017年データに更新してお伝えした。
大泉氏の本稿での指摘は要するに、「いつまでも技術大国という幻想の上にあぐらをかいていると、日本はアジアにおけるデジタル後進国になる」ということなのである。
大泉氏はこんなデータも提示している。
携帯電話の契約数(100人当たり)の比較だ。カンボジア133件vs.日本125件で、一人当たりGDPが3000ドルに満たないカンボジアの勝利なのである。勝因は、中国製格安スマホを使っているからである。
このように社会インフラが日本のように整っていないアジア諸国ほど、スマホが普及し、アプリ産業が活性化し、社会インフラの不備を補う形でデジタル産業が勃興しているという。
他にもインドネシアでは、スマホでのバイクタクシーの配車システムが人気を呼び、今ではマッサージ師の派遣からフード宅配などへも事業が広がっていることなど、さまざまなアジアのデジタル事例が本稿では紹介されている。
そして著者が本稿で「本家を超える可能性を持っている」と、最も刮目するのが中国のシリコンバレー、深圳(しんせん)市だ。
どんな未来予想図が描かれているかは、ぜひ、本書でご確認いただきたい。ひとつだけ教えられるのは、「たしかに日本はデジタル後進国かも」という現実だ。ならば、奮起してみようじゃないか、日本!
文=町田光