「注文を間違われて、嬉しかったです!」間違えるとお客さんがハッピーに!? 不思議なレストラン「注文をまちがえる料理店」とは?
更新日:2018/1/8
「認知症」と聞いて、どんなことを想像するだろうか。物忘れ、徘徊、周囲への暴言、暴力…残念ながら、悪いことだらけかもしれない。認知症の治療法は確立されておらず、病状の進行を遅らせることのみ可能だという。日本は、全人口に対する65歳以上の高齢者の割合が21パーセントを超える「超高齢社会」。認知症は今後、5人にひとりが発病する国民病ともいわれる。
2017年9月、東京のとある場所に風変わりなレストランが期間限定でオープンした。そこはホールで働く従業員がみな「認知症」だ。『注文をまちがえる料理店』(小国士郎/あさ出版)は、著者による発案からレストランの開店、また、開店当日に本当にあった物語を綴った奮闘の記録である。
従業員はみな「認知症」
レストランの店内にはこんなボードが、掲げられた。
「注文をまちがえるなんて、変なレストランだな」
きっとあなたはそう思うでしょう。
私たちのホールで働く従業員は、
みんな認知症の方々です。
ときどき注文をまちがえるかもしれないことを、
どうかご承知ください。
その代わり、
どのメニューもここでしかあじわえない、
特別においしいものだけをそろえました。
「こっちもおいしそうだし、ま、いいか」
そんなあなたの一言が聞けたら。
そしてそのおおらかな気分が、
日本中に広がることを心から願っています。
めちゃくちゃ!でも楽しそうなお客様
レストランでは刺激的で、音楽で例えるなら“ロック”なことが繰り広げられる。お客様にお水をふたつ出す、サラダにはスプーンを添える、ホットコーヒーにはストローが!しまいには、注文をとる従業員用のオーダーシートをお客様に書かせる始末。注文を取りに来たのに、自分の昔話に花を咲かせてみたり…それでも、お客様は楽しそう。「認知症」で仕事を離れた人々にとってこの経験は、「間違える、間違えない」ではなく、「仕事をして人の役に立っている」ことの喜びを得るのに、一役も二役もかったようだ。
認知症である前に、人なんだよな
著者がこのレストランのプロジェクトで知り合った介護職のプロ、和田さんは1980年代から介護に携わっている。認知症の人たちが体をベッドやイスに拘束されたり、部屋に鍵をかけられたりして当たり前のように行動制限がされていた時代だ。和田さんはある例えで認知症をあらわしている。
人に認知症というくっつき虫がくっついただけで、その人がその人であることは変わらない。(中略)
「認知症である前に、人」
「認知症の〇〇さん」ではなく、「おしゃべりが大好きな〇〇さんは認知症」、「元美容師の△△さんは認知症」、そんな風に考え、「認知症」という枠だけで囲まないことが大事だという。
国内外のメディアからも注目されたこのプロジェクト。「不謹慎」だという声もあったが、人々に「認知症」について考えるよい機会を与えてくれた。
忘れちゃったけど、
間違えちゃったけど、
まあいいか。
COOL JAPANならぬWARM JAPAN目指して、広がれ!てへぺろの輪!
文=銀 璃子
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