「さみしさ」は人が生きる上でいちばんの価値なのかもしれない。糸井重里の「小さいことば」シリーズ最新作!
更新日:2018/1/29
2017年の漢字は「北」、新語・流行語大賞の年間大賞は「インスタ映え」と「忖度」だった。1年の締めくくりに、私たちは重要な言葉を選びたくなる。知らず知らずのうちに今年起こったうれしいことや悲しいこと、さまざまな出来事に区切りをつけ、新たな年に向かおうとしているのかもしれない。
私たちに新たな大切な言葉を提供してくれるのが、糸井重里の「小さいことば」シリーズだ。株式会社ほぼ日の代表であり、コピーライターの糸井重里が、1年に書いたすべての原稿とツイートから、こころに残ることばを集めて1年に1冊編む本。最新作の『思えば、孤独は美しい。』(糸井重里/ほぼ日)は、そのシリーズ11作目にあたる。
本作では、糸井重里が長年抱えている「ひとり」「孤独」「さみしさ」といったテーマに焦点が当てられている。
「冬の雨はさみしいけれど、ときどき降ってほしい。ずっと乾いていた空気がやさしくなる。」「思えば、孤独は美しい。孤独とじっと向き合った人だけが、本人なのである。」などの短い呟きもあれば、自分自身の思考と向き合った哲学的な長い台詞もある。全てに共通しているのは、生きていく上で「さみしい」という感情は必要不可欠だということだ。
本書によると、谷川俊太郎さんはラジオ番組の司会者に「孤独を感じることは?」と質問されて、とても軽やかに「孤独は前提でしょう」と答えたという。著者も本書の中で、さみしいという感情についてこんな風に語っている。
「『さみしさ』が、いちばんの価値なのではないか。こう言うとずいぶん被虐的に聞こえるかもしれないが、うれしいだとか、よろこんでるだとか、たのしいだとか、みんな、そのことそのままの状態では続かないよ。かならず、「さみしさ」の影とともにあるものだ。」
さみしさを感じる瞬間があるからこそ、私たちはうれしさや楽しさを存分に味わうことができるのかもしれない。著者が「孤独」や「さみしさ」を語ると、なぜだかそれらが大切な宝物のように感じられる。
もちろん本書には、「孤独」をテーマにしたもの以外にも多彩な言葉がたっぷり収録されている。ダジャレのような、じわじわおかしみを感じられる言葉。愛犬や食べ物など、好きなものについての言葉。思わず納得してしまうような言葉。
著者は毎年、新しい年の始まりにたったひとつの誓いを心に刻んでいたのだという。それはたった1行、たった9文字の、「人の悪口を言わない」という自分との約束。けれど、それをやめた。ルールで縛るのではなく、自然に「人の悪口を言わない」自分でありたいと思ったからだそうだ。
「悪口を言わないでいるうちに、悪口を思いつきにくくなるんだ。」
この言葉に思わずハッとした。愚痴が次から次へと浮かんでくるのは、本当に不満があるのではなく、愚痴ること自体が癖になってしまっているからかもしれない。
今年、私たちはどんな言葉と巡り合うのだろうか。静かな夜に、ひとりそっと本書のページをめくってみてほしい。こころが喜ぶ言葉は、たいてい孤独な時に見つかるものだから。
文=佐藤結衣
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