実践!ミス・ムダを防ぐ脳の作り方
公開日:2018/1/17
歳を重ねる度に年々増えてきたミス。上司に「もっとしっかりしなさい!」と注意され、「以前はこんなことなかったのに…」とモヤモヤしていた私の目に留まったのが『絶対にミスをしない人の脳の習慣』(樺沢紫苑/SBクリエイティブ)である。“絶対に”とまではいわなくてもある程度ミスを減らすことができれば精神的に楽になれるはずだと購入を決めた。精神科医でもある樺沢紫苑氏の書いた本書は、さまざまな医学的知識・経験に裏付けられており、類似の書物に比べても説得力が段違いだ。また、ミスを減らすためのコツとして紹介されているトレーニング数も豊富で、特に心を動かされたものだけ取り入れることができる。ここではそのいくつかを紹介したい。
■ミスを招く4つの要因! あなたはどのタイプ?
樺沢氏は、人がミスする原因は(1)集中力の低下、(2)ワーキングメモリの低下、(3)脳疲労、(4)脳の老化に大別できるという。ただし、これらは明確に区別されているわけではなく、いくつかの要因が絡み合ってミスを誘発していると考えられる。たとえば脳が疲労していき、ノルアドレナリンが枯渇すると、集中力の低下を招いてしまう。それを防ぐためには、病気未満である脳疲労の段階で手を打たなければならない。逆に脳疲労の段階で失敗を取り返すために一層体に負担をかけると、ますますミスを連発する状態になりかねない。大切なのはその時々の自身の体調(ミスの要因)を把握して、適切な対策を施すことである。そして、原因別に対策が紹介されているのがこの本の売りだろう。
■完璧主義者はミスをする? メモすることは3つまで!
新生活を始めた多くの人が「なるべくミスをしたくない」「上司や先輩からの印象を良くしたい」と願うのではないだろうか。私もそんな一人だった。上司の指示は一言も聞き洩らすことなくすべてメモして、万全の態勢で仕事に臨みたいと常日頃から考えていた。メモすること自体は、集中力を高め、誤った記憶によるミスを減らすことができるので、有意義なことである。しかし、樺沢氏は、すべてをメモしようとする人ほど話を聞いていないというのだ。メモすることに必死になった脳は疲れ果て、最終的には聞き取りミスが生じる。そこで、メモを取るときには重要なポイントが何かを見極め、時には思い切って3つ以上のことはメモしないと割り切ることが必要である。
講義の後、ノートは非常に綺麗に仕上がっているのに、そこに書かれた内容を話す講師の姿を思い出せなかったり、そもそもその話を聞いた記憶すら怪しかったりする場合があるかもしれない。大切なのは話の内容であるから、後日正確な情報が求められるであろう内容のみメモして、後は話の大枠を掴むのに集中してみるのも良さそうだ。
■メリハリが大切! 限られた記憶スペースを有効活用しよう
樺沢氏は、1冊書き終え校了を済ませた後、執筆する際に参考にした本や論文を段ボール箱に詰めて物置に仕舞うことを習慣にしているという。これは、人間が仕事をやり終える度にその仕事内容を忘れられる生き物であるという逆ツァイガルニク効果に着目して、脳内の記憶スペースを確保するためである。つまり、課題を達成すると、人々は課題に関する緊張感から解放されるため、その課題のために使用していた記憶スペースを自由に使えるようになる。人の記憶スペースは限られているので、このようにメリハリをつけていかなければいつの日かパンクしかねない。自分に合った方法で「終わり」を意識できると良いだろう。
最近ミスが増えてきた自覚のある人は、ぜひこの本を手に取って実践できそうな方法をいくつか試していただきたい。
文=藤田ひかり