2022年、あなたの仕事がなくなるかも!? 企業も個人も迫られる改革の背景とは?
公開日:2018/2/20
ここ数年、よく耳にする「働き方改革」を他人事と感じてはいないだろうか。『2022年、「働き方」はこうなる(PHPビジネス新書)』(磯山友幸/PHP研究所)はこれからの時代に求められる働き方を大胆に予測した1冊だ。著者の磯山友幸氏は、政・財・官を中心に幅広く取材する気鋭の経済ジャーナリストである。
著者は、安倍政権の「働き方改革」の取り組みや動向を紹介し、今こそ企業と働き手の双方が、生き残りと自立を図るチャンスであると述べる。企業は多様化する働き方に対応するための人手の確保や生産性向上への改革が必須であり、また働く側もAI活用など高度なIT化の進展による雇用消失の危機に備える必要があるのだ。
「正社員」雇用は働き手にとって理想的なのか、と磯山氏は疑問を呈する。たしかに、終身雇用を前提とした正社員採用、いわゆる「就社」は、キャリアアップに身を委ね、経営層を目指すレースに組み込まれることである。期待に応えることを動機付けにする生き方だ。
しかしすでに、終身雇用も、皆が経営ポストに就ける成長も信じられなくなっている。そこへ、プロ棋士を負かしたことで皆を驚かせたAIのビジネス活用の進展だ。多くのホワイトカラーも職を奪われるという、経済産業省の予測は衝撃的かもしれない。企業都合の受け身のキャリアはリスクであり、「就社」を「就職」とした上で、自分自身の働き方を見つめ直すべきなのだ。また、「50歳自立のススメ」として、会社員から日本酒バーの経営者になるなどの「自立的に働く」事例の紹介に、読者は考えさせられることだろう。
企業に向けては、組織のあり方を、欧米のジョブ型に対して、日本はメンバーシップ型とし、その課題を指摘する。ジョブ型とは働き手各々の「ジョブ・ディスクリプション」、つまり仕事の範囲が明確で、自己完結させるスタイルだ。対するメンバーシップ型は、個々の職責が不明確なままのチームプレイのことだ。
たしかに組織や上司への忠誠心を示すための不要な残業や居残りを生みだすなど、思い当たる読者も多いことだろう。各々が明確な職責へ合意し、その成果を組織成果にまとめ上げていくマネジメント改革こそが必須になるのだと思う。仕事の範囲を明確にすることは、多様な働き方提案や、労働力確保への道筋であり、ワークライフバランスの実現の鍵もここにありそうだ。
政府の取り組みは長時間労働の是正、人材育成と流動化、賃金の向上など、働き手の待遇改善先行とのことだが、一方の経済界は、解雇規制の緩和などを求めているようだ。日本の産業構造の目に見えない部分が、大きく変わろうとしているのだ。「働き方改革」は人生を変え、日本を変えるという。この取り組みの現状を知り、また自らが、働き方を見直し、生き方をもう一度考えてみる、そんなきっかけを与えてくれる良書である。
文=八田智明