アメブロで話題沸騰中の「角満さんちのるーさん」から学ぶ猫の魅力とは?

マンガ

更新日:2018/2/19

「猫のなにが人を夢中にさせるのか」近年の猫ブームの影で、こんな思いを抱えている方にぜひ読んでほしいのが『角満さんちのるーさん』(大塚角満:著、酔co:イラスト/KADOKAWA)だ。

 本著は『熱血パズドラ部』などで活躍している大塚角満氏がアメブロにて連載中のネコマンガエッセイブログをまとめた作品だ。

 物語は、長年にわたり大切に育てていた愛猫を亡くした大塚氏がある日、1匹のノルウェージャンフォレストキャットと出会うことから始まる。ペットロスの傷が癒えない大塚氏は、もう新しい猫を迎えることはないと思っていた。しかし、目の前に現れたノルウェージャンフォレストキャットのルナ(通称るーちゃん)は大塚氏の心に寄り添うように存在を浸透させ、かけがえのない存在になっていく。

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 作品内では、猫との日常が自然体のまま描かれている。そのため、猫を飼ったことがある方なら「分かる、分かる」と共感でき、猫を飼ったことがない方は猫との生活をにやけながら想像できることだろう。

 中でも特に注目してほしいのが、コミックエッセイ内で描かれている、るーさんの傍若無人さだ。ルナは大塚氏に媚びず、自分の生活ペースや意志を尊重しながら生きている。例えば、かわいらしくベッドで添い寝をしてくれたのかと思えば、明け方には大塚氏の顔に爪を刺してご飯のおねだりをする。またあるときは仕事で原稿を仕上げたり、ゲームをしたりしている大塚氏を器用に邪魔するのだ。

 思い通りにならない猫との生活は一見、ストレスが溜まってしまいそうにも思える。しかし、猫にはなぜかこうしたわがままが許される魅力があるのだ。遊びたいときは遊ぶ、気に入らないものは頑として拒絶する。猫特有のこうしたストレートな性格は大塚氏だけでなく、コミック越しの読者をも癒やしてしまうから不思議だ。

 また、本著は笑いだけでなく、切なさや感動を与えてくれる。エッセイにはるーさんとの日常だけでなく、大塚氏が以前飼っていたミュウやアクアといった先代にゃんこの話も多々盛り込まれているからだ。ねこエッセイと称し、写真付きで丁寧に描かれる想い出の数々は、心にじんわり染みわたる。家に迎えたときや印象的な思い出、最後の時のことなどが事細かに描かれたページは、大塚氏が心の中で大切にしている瞬間をそのまま切り取って書籍化したかのようだった。生まれてから40年以上もの間、猫と暮らしてきたという大塚氏の猫愛はコミカルな文体を通して、惜しみなく伝わってくる。

 2017年は空前の猫ブームだった。CMや雑誌で犬より猫が取り上げられる機会も増えてきた。さらにペットフード協会によれば、昨年は調査を開始して初めて、猫が犬の推定飼育頭数を上回ったというデータも発表されている。こうしたブームの背景にあるのは、猫ならではの率直な性格が人間を虜にしているという事実だ。人間に忠実な態度を示してくれる犬にも、もちろん特有の愛くるしさがある。しかし、るーさんからも垣間見られる猫の素直さは人間が求めつつも手に入れられない、憧れのようなものなのかもしれない。だからこそ、人間は猫のストレートな性格に癒やされ、幸せな気持ちで下僕と化していくのだろう。猫ライフの実情が記されたコミカルなコミックエッセイは笑いとともに、命の儚さや大切さも教えてくれる1冊となっている。

文=古川諭香