カレー作りを時短できれば仕事も成功する? 生活の質を上げる「プロジェクトマネジメント」
更新日:2018/2/26
私たちは「仕事で成功したい!」「いつか幸せになりたい!」という願いをぼんやりと抱いて生きている。しかしぼんやりと抱いているだけでは、いつまで経ってもその願いは叶わない。
少なくとも「30歳までに課長になって、年収600万円を達成したい」「イケメン社長と出会って、玉の輿に乗りたい」というように、その願いを具体的なものにしなくてはならない。次に、それをいかに達成するか過程を考え、実行していくプランが必要で、それは仕事でも日々の生活でも同様だ。
『プロジェクトマネジメント的生活のススメ』(米澤創一/日経BP社)は、「やろうと思っていることを上手に進めるノウハウ」、つまり「プロジェクトマネジメントを実行する方法」を紹介している。
「なんだかとっつきにくいなぁ」と感じる読者もいるだろう。そこで本記事では、本書の第1章「カレーライス作りを時短してみる」より、プロジェクトマネジメントの効果と概要を紹介しよう。
■同時並行できる作業を探す
自炊経験のある人なら分かるはずだが、料理はやるべき作業が連続的かつ複合的にからみあっている。たとえば4人分のカレーライスを作る場合を想像してほしい。台所には、肉やじゃがいもをはじめとする食材が並び、包丁や鍋などの調理器具も所せましと置かれている。まったく何も考えずに、食材を切り、ルーを入れて煮込み、白米を炊き、ひとつひとつの工程を順番に終わらせていくとしたら、調理時間はどれだけかかるだろうか。
140分ほどだろうか。これを見れば、効率が悪いことは誰でも分かる。ならば、「同時並行で処理できる作業」はないだろうか。たとえば「研いだ米を水に浸す」間に、別の作業ができそうだ。同様に「煮込む」「炊飯」の間にも別の作業ができる。これらを踏まえた上で、改めて作業を並び替えてみると、以下のようになる。
結果、調理時間は80分に短縮された。ちなみに「米を水に浸す」が序盤にきている理由は、万が一、炊飯器の調子が悪いとき、早い段階で「別の方法で米を炊く」対応ができるためだ。この「万が一の場合」を考えることを「リスクマネジメント」という。
■最も長い作業工程に着目してみる
普通ならば、ここまで時短できれば十分だ。しかし本書では、ここからさらに時短に挑戦している。
現時点では、カレールーを作るのに75分、米を炊くのに65分を要している。完成までに複数の作業工程がある場合、最も長い作業工程(=カレールーを作る)に着目して、さらなる時短ができないか考えてみる。
タマネギを切らずに炒めることはできないので、「タマネギを切る」と「タマネギを炒める」には「依存関係」がある。また、タマネギが飴色になってから肉を加えて炒めるので、「タマネギを炒める」と「肉を炒める」にも依存関係がある。しかしニンジンは、切った後にそのまま「煮込む」まで出番がない。
このようにそれぞれの工程の依存関係を見直すと、さきほどの「米を水に浸す間に別の作業をする」と同様、カレールーの調理時にも同時並行できる作業が見つかる。その結果が以下だ。
タマネギを炒めている間に、3つの作業が同時並行できそうだ。これで調理時間が60分に短縮された。しかしこの並行作業は一人ではできないので、恋人や友人に手伝ってもらうことにしよう。カレールーの調理時間が短縮されたということは、全体の調理時間も短縮されたことになる。
一人で何も考えずにカレーライスを作ると140分もかかるところが、作業工程を見直すと、半分以下の65分まで短縮された。これがプロジェクトマネジメントの効果だ。
■様々な制約の中で効率よく効果的に実行していく
もしかすると「炊けた米を買ってきたらいいのでは?」「はじめから2人でカレーライスを作ればいい」など、もっともな意見が出るかもしれない。この「カレーライスを時短する」は、あくまで例であり、現実の仕事は「制約」でいっぱいだ。「制約」を「カレーライスを時短する」で喩えるならば、「恋人が忙しくて15分ほどしか手を貸してもらえない」「節約の観点から米(ライス)は自炊したい」「調理環境は自宅の台所しかない」「調理器具が1つずつしかない」という具合だ。「様々な制約の中で、いかに効率よく効果的に実行していくか」を突きつめるのがプロジェクトマネジメントだ。
本書の2章以降は、「カレーライスの時短」で紹介した考え方を実生活で応用するため、仕事でプロジェクトマネジメントを活かす方法、生活の質が高まる「本質思考」「幸福思考」など、私たちの将来を劇的に変えてくれる方法が語られている。
仕事で成功すること。毎日を幸せに生きること。これらは簡単なようで難しい。しかしちょっとしたコツや考え方で、限りなく理想に近づくことはできる。その1つが本書で紹介されているはずだ。成功したい人、幸せになりたい人、カレー作りが上手になりたい人は、本書を手に取ってみてもいいかもしれない。
文=いのうえゆきひろ