「ねこ」と「パリジェンヌ」の類似点に学ぶ、自分らしいシックな生き方
更新日:2018/2/26
パリジェンヌ、という言葉が生まれたのは19世紀末。つまり200年近く前。それなのにいまだモードの中心として女性たちの憧れであり続けている。その理由は“ねこ”との類似性にあるんじゃないかと気づいたのは、パリジェンヌ流ライフを描いたエッセイで人気のイラストレーター・米澤よう子さん。新刊『ねことパリジェンヌに学ぶリラックスシックな生き方』(文藝春秋)では、気まぐれにのびのびと、人の目を気にしないのになぜかまわりを惹きつける、そんな魔性の営みを手に入れるためのコツを紹介している。
のんびり日向ぼっこする自由きままなねこ、時間やしがらみにとらわれず自分らしさを貫くパリジェンヌに憧れるなら、時には“何もしない”ことや“特別でないもの”に集中することも必要だ。たとえば、飲み物。ねこもパリジェンヌも、飲むのはたいてい水一択。ためしに倣って水メインの生活にしてみると、味覚がどんどん鋭敏になっていくことに気づくだろう。すると銘柄によって水の味が違うことがわかってくるし、たった1杯のコーヒーもスペシャルなご褒美に様変わり。もので溢れかえった幸せに埋もれるよりも、自分だけのとっておきを一つずつ見つけていくのが、自分らしさを手に入れていくコツなのだ。
香水の都・南仏グラースで著者がいわれた一言。「同じ物でもあなただけの香りになるのよ」。香りで自分の魅力をひきたてるのも、ねことパリジェンヌに共通した習性。狙いを定めてガツガツ押すのではなく、残り香で相手を惹きつける。それは感情を超えて、本能に訴えかける作法だ。そんなパリジェンヌの恋に、理由なんていらない。いいと思ったものは、いい。好きになったらためらいなく相手をじっと見つめる。だけど気が乗らないときはあえて追いすがったりもしない。あくまで自分主体のスタイルが相手を翻弄し、積極的な行動よりも存在を印象づけるのだ。
昼はごろごろ、夜は目を輝かせて活動的になるねこと同様、パリジェンヌも昼間はやや手抜きでも、夜になればメイクも服装も華やかになる。かつては1日7~8回は着替えていたというパリジェンヌ。いまでも昼と夜でTPOに応じて、服装もメイクもがらりと変えるスタイルが主流だ。だが華やかさは単に着飾れば手に入るというものでもない。自由を重んじるパリで、「おしゃれ」とは時と場合になじんだ服装で“居心地よさそうに”過ごすこと。メイクもやたら塗りたくるのではなく、シンプルかつ魅惑的な技をそなえている。色気ただよわせる魔性のアイライン、すまし顔がひきたつCラインのチーク、上向きになったときにそそられる桜色リップなど、周囲を虜にするテクニックもご紹介。
パリジェンヌたちのくらしは、よくよく見れば、あんがい地味。魅力的に見せているのは、彼女たちが内側から充実し、自分だけのスタイルを大切にしているからだ。あえて“飾らない”ことで、ねこやパリジェンヌのように、しなやかで気ままな生き方を手に入れられる一冊だ。
文=立花もも