部下は徹底的にほめて育てる! ビジネスに使える「吹奏楽界のカリスマ」の指導哲学
公開日:2018/2/7
教え子たちの才能を最大限引き出す指導者がいる。藤重佳久氏は「吹奏楽のカリスマ」と呼ばれる名指導者。福岡の精華女子高校吹奏楽部では、生徒たちを「全日本吹奏楽コンクール20回出場、内10回金賞」「全日本マーチングコンテスト16回出場、内すべて金賞」に導き、定年後赴任した長崎の活水学院では、就任一年目で全日本吹奏楽コンクール出場を実現した人物だ。「長期的な目標は立てない。目標は常に目の前」。高い目標を掲げ、常にそれを成し遂げてきた藤重氏の『やる気と能力を120%引き出す奇跡の指導法』(ポプラ社)では、「藤重流 指導哲学」が明かされている。
■生徒にどこまでも任せる。だから育つ。
藤重氏は毎日の練習メニューのほとんどを生徒に任せている。指導者として大切なのは、その練習の成果を検証することだ。だから、藤重氏は練習後、一人一言、気づいたことを発表してもらうようにしているという。「どうだった?」「なぜそう思うの?」。そうやって聞いてみると、主体性をもって練習に臨んだ生徒は具体的に説明してくれるが、なんとなく練習に参加した生徒は不明確な答えしか返ってこない。このやりとりで練習の密度や効果を感じ取ることができる。「実践」と「検証」をくりかえしながら、生徒たちの主体性を育み、生徒たちの「やる気」を引き出していくのだ。
■「ほめる」から「気づく」
徹底的に、ほめて育てるのが、藤重流・指導の特徴だ。一日練習をすれば、どんな生徒でもかならず、一つは上達したポイントがあるはず。そのポイントを見つけることができないのなら、指導者とはいえないと藤重氏は言う。ただ100人を超える生徒を指導していると、毎日、全員の細かな上達に気づくのは難しい。そこで、藤重氏は、時間が空いた時は、生徒たちの写真をみては、最近褒めていない子を確認し、「次の練習では注目してみてみよう」と心がけるようにしているという。頑張りを認めてあげるだけで練習はどんどん楽しくなり、結果として上達のスピードもあがっていくのだ。
■失敗を恥じない子に育てる
練習に失敗はつきもの。それは恥ずかしいことではない。活水吹奏楽部の練習では、演奏中、間違えた生徒は、その都度、手を挙げさせるようにしているという。問題になるのは、手を挙げない生徒。失敗を恐れ、集団のなかに埋没してしまうのではなく、「主役になって、なおかつ、みんなと仲良くするためにはどうしたらいいか」を考え、実行できる人間に育てていきたいと藤重氏は語る。
美しい表情、言葉、歩き方、服装、言葉使いなどがすべて音楽にあらわれると考え、音楽だけではない指導を行っている藤重氏の取り組みは、どれも心動かされる。名指導者の、教え子たちの能力を引き出す技術は、教え子と日々向き合う教師だけではなく、人事に悩む経営者や部下指導に悩むビジネスマンも参考になるに違いない。
文=アサトーミナミ