こんなオフィスで働きたいと思わせる、本当の「働き方改革」とは?
公開日:2018/2/15
「働き方改革」。
最近よく耳にするけど、具体的には何をするの? と戸惑っている人も多いのではないだろうか。
残業削減? 時短勤務? でもまあ、決めるのは上の人たちだし、自分には関係ないかな…と思ってしまうことも大いにあるだろう。
しかし、働き方を変えるということは、制度を変える だけではない。勤め人のほとんどに関係する「働く場」=オフィスの環境を改善することも含まれている。
何しろ、勤め人の多くは24時間の3分の1以上をオフィスで過ごし、それを数十年にわたって 続けていく。オフィスとは、貴重な人生のうち、それほどの時間を過ごす場所なのだ。出勤するのが楽しくて仕方ない、という人はあまり多くはいないだろうが、そこが少しでも働きやすい、快適な場所になれば、仕事の効率やモチベーションにも良い影響を与えるのではないだろうか。
そのヒントを与えてくれるのが本書『「はたらく」の未来予想図』(鯨井康志/白揚社)だ。
■過去のオフィスの問題点、未来のオフィスの理想とは?
著者はオフィス家具の老舗メーカー・岡村製作所で30年以上にわたって、働く環境の研究を続けているという。その著者ならではの視点により、本書ではオフィスに関するさまざまなテーマが、過去から現在、未来への移り変わりといった形で取り上げられている。その一部を紹介しよう。
・PCが変えるオフィスの形
1980年前後、コンピュータがオフィスに導入されはじめた頃は、部署に1台だけの端末を部屋の隅に配し、OAコーナー(今や死語!)と呼んでいた。すさまじい早さで普及していくコンピュータが課に1台、2人に1台、1人に1台となっていくのにあわせ、机の形やレイアウトも変化していく。現在ではコンパクトなノートPCが主流となり、自席に縛られないフリーアドレスのオフィスも多くなっているが、この先端末の形が変わっていけば、机すら要らなくなってしまうかもしれないという予測は、衝撃だ。
・ムダな会議にさようなら
仰々しい会議室は減り、気軽な打ち合わせスペースが増える傾向にある。これは、大勢が長時間行う会議よりも、少人数が短時間で済ませる打ち合わせが重視されていることの表れだそうだ。その流れは今後も続くと考えられ、より短時間で質の良い打ち合わせをするための立ち会議スペースや、リラックスした姿勢でコミュニケーションを取り合える場など、バリエーションに富んだスペースを選択できるようになっていくという。
他にも本書では、かつて灰色一色だったオフィス家具へ「色」がつきはじめた経緯や、喫煙、セキュリティ問題など、働く人にとって誰もが頷けるエピソードがわかりやすく語られている。
■真の「働き方改革」のためにオフィスができることとは?
産業革命の後、働く人やモノ、情報を集中することで作業を効率的に行うために、オフィスが生まれたとされている。当時のオフィスは徹底的な管理主義の下におかれ、機械のように並べられた労働者は、気軽に立ち歩いたりおしゃべりしたりということもできなかった。
それを思えば、今のオフィスはなんと自由なのだろう。オフィスの形は今までも変わってきたのだから、これからも変わっていくことは間違いない。
多様な働き方を認め、そのしくみを整えること。そして一人ひとりが働きやすい環境(オフィス)をつくろうとすることが、形式的ではない真の「働き方改革」につながっていくのではないだろうか。
いつか、オフィスへ出勤するのが楽しくて仕方 がなくなる日が来ることを、切に願うものだ。
文=齋藤詠月