なぜかいつも探しものをしてしまう…部屋をスッキリ片付けるコツ
公開日:2018/2/19
年末は何かと忙しく、大掃除をしようと思いつつできないまま年越しをしてしまったという人は少なくないだろう。かくいう私もその一人で、もう何年も大掃除をしそこなっている。しかし、欧米には「Spring cleaning(スプリング・クリーニング)」という言葉があり、春から初夏にかけてが大掃除のシーズンだそうだ。確かに、実際に掃除することを考えれば、窓を開け放した換気をしにくい寒い時期より暖かくなってくる季節のほうが良いし、一部地域を除いて梅雨のある日本ではカビが繁殖しやすくなる前に気合を入れて掃除するのが理に適っている。今年の旧正月に当たる2月16日さえ過ぎた今からでも大掃除をするには遅くはあるまいと思い立ち、掃除の参考にと手にしたのが『マンガでわかる 片付太郎と汚部屋乱子のお片づけレッスン すぐできる! 続けられる! 整理収納のコツ教えます』(長浜のり子/PHP研究所)だ。
本書は、「片づけられない女子・汚部屋乱子」と「片づけが得意なイケメン・片付太郎」が出逢うマンガ仕立てになっており、2人の恋の行方と同時進行しながら部屋の掃除や片づけ方のノウハウを学ぶことができる。その内容も、一時期ブームになった断捨離とか最小限度のものしか持たないミニマムな暮らしを勧める本には、どこか自己啓発セミナーの臭いがして私は好きになれなかったが、本書では再び使うことを想定しての物品の収納法や、捨てるに捨てられないものの選別の仕方はもちろん、なによりも大切な習慣づけまでを、今の自分を大切にする視点で応援してくれることに好感が持てる。
そうは云っても自分を見つめ直すのは必要らしく、「まずは理想の暮らしを明確にする」ためにと太郎は乱子にヒアリングをする。すると、仕事でのランクアップを目指している乱子は、寝る前に本を読みつつアロマランプの香りで癒やされたり、可愛いカップでフレーバーティーを飲んだりするような休息を家でとれることをイメージしたうえで、一人暮らしを始めてから5年間、自分の部屋に誰も入れたことがないと嘆く。本書ではこの、理想の暮らしを書き出す作業を「片づけのゴールに辿り着く地図になる」としており、これを省いて目の前の散乱の片づけから手を付けると失敗すると注意を促している。
マンガ仕立ての本書において「あるある」と共感するのは、なんといっても「なぜかいつも探しものをしている」ことだろう。定位置を決めて戻せば良いのに、つい置きやすい場所に片づけて後で探す羽目になる。それは、収納における「ゴールデンゾーン」も同じで「目線から腰までの高さ」は最も出し入れをしやすいので、頻繁に使うものはその範囲に収めるのが良い一方、最も散らかしやすい範囲でもあるからそうならないように工夫するのが重要と説く。そこで本書が教えてくれるのは「掃除のしやすい環境作り」であり、持ちものの適正量を維持するための捨てる判断の仕方や、ものを買う場合の判別基準などは、今日の片づけができなくても役に立つ。特に捨てるものの判断は、元気なときより疲れているときのほうが、思い出など余計なことを考える余裕がなくなり「本当に必要なものにだけ反応します」というのには目から鱗が落ちた。
当初の目的のように、もし気合を入れて大掃除をするのなら、春と並んで秋も気候的に換気をしやすく掃除に適しているだろう。それに、そもそも年末の大掃除というものは古来、歳神様を迎えるためのもので旧暦では12月13日頃だとされる。本書でも「片づけたい」気持ちがあるのなら、「すでに片づけへの一歩は踏み出している」と述べられており、その気になればすぐにでも片づけることはできる……はず。
文=清水銀嶺