本当の自分になれた――衝撃の自叙伝『僕は私を生みました。』GENKINGインタビュー
更新日:2018/2/20
性別適合手術によって男性から女性になり、新たな人生をスタートさせたタレントのGENKINGさん。1月27日に発売された自叙伝『僕は私を生みました。』(双葉社)では、幼い頃から感じていた性への違和感、思春期に受けたいじめ、人気タレントGENKINGとして生きることへの苦悩などが赤裸々に綴られています。「やっと本当の自分で生きることができる」と語るGENKINGさん、本名、 “沙奈さん”の今の心情を語ってもらいました。
――出版おめでとうございます。ページをめくる手が止まらず、一気に読んでしまいました。
「ありがとうございます。でも、本音を言うと、今もまだこの本を出版して良かったのかなっていう迷いもあるんです。だって、私はもう沙奈というひとりの女性として生きているから。わざわざ、GENKINGの人生を本にしてみんなに読んでもらう必要あるの? って。ただ、芸能活動を再開するにあたって今までのGENKINGから生まれ変わった、第2章の始まりをみんなに報告しなきゃいけなかった。それが本を書いた大きな理由ですね」
――表紙の写真も、今までのGENKINGさんのイメージはどこにもないですよね。このカットには、どんな意味が込められているのでしょうか。
「表紙の写真は、スタイリストさんや、出版に携わってくださったスタッフのみなさんと色々話し合って決めました。これ、素肌にタオルを巻いてるだけなんです。ありのままをさらけ出して、本当の自分で生きていくという願いを込めています」
――表紙をめくると、今度はドレス姿の妖艶なカットが並んでいますね。
「これらは私が理想とする女性像ですね。ドレスは、あえて黒と白のシンプルな配色にしました。まだ、色のついていない、新しい自分を見てほしいんです」
――沙奈さんになる前は、どちらかというと派手なイメージがありました。
「今だから言えるけど、当時のGENKINGは全部ウソだったの。芸能人として求められるがまま、ユニセックスな自分を演じていました。だからずっと苦しかった。GENKINGとしての芸能生活は2年くらいだったんですが、正直それが限界でした。もし、あのまま続けていたら、心も体も壊れていたと思う」
――テレビ越しだと、とてもそんな風には見えませんでした。デビューした2015年は、ほとんどお休みがない状態だったとか。
「おかげさまで、忙しい毎日を送っていました。ウソの自分ではあったけど、芸能のお仕事は大好きだったから頑張れたんだと思います。それに、あの時のGENKINGがいたから今の私があるのは確かです。性別適合手術は、総額で何百万円もかかるので、普通に仕事をしていたらまだ本当の私にはなれていなかったかも。そう考えたら、沙奈を生んでくれたのは、GENKINGでもあるんですよね。男性として生まれたのも、GENKINGとして生きたのも、このタイミングで沙奈になったのも、全部宿命だったって思います」
――宿命と思えるまでに、たくさんの葛藤があったと思います。同じような悩みを持つ人たちがこの本を読んだら、すごく勇気をもらえそうです。
「でもね私、この本を通じて、同じ悩みを持つ人に勇気を与えようなんてまったく考えてないんです。苦しみを共有しようとも思ってない。たとえば、性についてどう思いますか? って聞かれても、わかんない! ってなっちゃう。だって、物事の受け止め方や見方は一人ひとり違うでしょ? 私が思う“性”や、そのほかの考え方がみんなのスタンダードだとは思わないんです」
――たしかに。それでもファンは、沙奈さんから勝手にパワーをもらっちゃうと思います。
「むしろ、私にできることってそういうことだと思うんです。悩みや苦しみを共有することはできないし、正解を提示することもできない。でも、『私はこういう人生を歩んで、今が最高に幸せ!』って自信を持って言える。だから、辛い思いをしている人がいたら精一杯、それを伝えていきたいんです。人が生まれ変わるのに、遅いとか早いは絶対ないって、今の私なら言えるから」
――沙奈さんが言うと、ものすごく説得力があります。
「本来あるべき姿に戻ったので、“今”と“未来”しかないんです。もしこの本を読んで何か感じてくれる人がいたら、ぜひ、これからの私を見てほしいですね」
――今後チャレンジしたいことは決まっているんですか?
「生まれ変わった沙奈としてのスタイルブックとかを出せたらいいなって思っています。じつは、いくつか進行している企画があるので、これから少しずつみなさんにお知らせしていきますね」
男性として生まれ、ユニセックスで芸能界を渡り、これからは女性としての人生を謳歌していくGENKINGさん(本名:沙奈さん)。「3回目の人生がスタートした」と明るく語ってくれました。新しく生まれた“沙奈”という女性が、これからどう活躍していくか楽しみです。
取材・文=中村未来 撮影=内海裕之