高橋メアリージュンの告白に涙! 笑顔の裏で借金返済、潰瘍性大腸炎・子宮頸がん治療
更新日:2018/3/19
自分と他人を比較して、落ち込んだ経験は誰にでもあるだろう。仕事や恋愛、家族、健康…。私たちは人生のあらゆるスペックを無意識に他者と比べ、一喜一憂しながら生きている。そして、他人が当たり前のように手にしているものを自分が持っていないという現実に直面した時、人は自らを「不幸」だと思ってしまうのかもしれない。
一方で、一般的には「不幸」だと思われる過去を背負いながらも、「幸せ」な未来に向かって歩みを止めない人もいる。女優の高橋メアリージュンさんもそのひとりだ。雑誌『CanCam』の専属モデルを務め、2012年以降は映画やドラマ、舞台などで活躍の幅を広げている。
明るいイメージのある彼女だが、中学生の時に実家の事業が倒産した際に抱えた借金を未だに返済し続けていたり、潰瘍性大腸炎や子宮頸がんを経験していたりと、笑顔の裏でさまざまな経験をしている。『Difficult? Yes. Impossible? …No. わたしの「不幸」がひとつ欠けたとして』(高橋メアリージュン/ベストセラーズ)は、彼女にとって初の著書。タイトルを訳すと「それは難しいこと? はい。それは、不可能? …いいえ」。彼女がひどく落ち込んだ時に知り、以来大切にしている言葉だという。
「どんなに難しいことだって、不可能はない。『初めてのひとり』になってやろう」
本書の中でそう言い切り、自らの経験を「かけがえのないものだった」と語る著者がとてもまぶしく感じられる。
2013年に著者が患った潰瘍性大腸炎は、体内で異常な免疫反応が起こる難病だ。当時、映画「るろうに剣心」の撮影中だった彼女。止まらない便意に悩まされた結果、オムツをして撮影を乗り切ったという。しかし、当時の彼女の映像や写真からは、難病に苦しんでいる様子は微塵も感じられない。妖艶に、気丈に、映画の中で誰よりも女性らしいキャラクターを演じきった。
本書を読んでいると、著者のポジティブさに何度も驚かされる。病気を抱えていた当時の状況についても、「つらい時間だったけれど、日常の幸せを感じることができた」と語るほど。
彼女がどんな時も前向きでいられる大きな理由のひとつに、家族の存在がある。家業が倒産して貧乏になっても、高橋家には笑いが絶えず、常に両親からの愛情を感じていたという。本書には、心がほっこりするような家族のエピソードが溢れている。彼女にとって家族は、「お互いで守り合うもの」。家族で苦難を乗り越えてきたからこそ絆は深まり、悲しみを半分に、楽しみは倍にして共有できるのだそうだ。幾多の困難を乗り越えられたのが家族のおかげなら、家族が何よりも大切だと気づくことができたのも、困難のおかげだと言えるのかもしれない。
本書のあとがきには、こんな言葉が綴られている。
「わたしの『不幸』がひとつ欠けたとして――わたしの人生がいまより幸福だったとは思いません。(中略)なんでもない、ささいなことに幸せがつまっている、と気付かされる機会に恵まれました。それがたとえ人から見たら「不幸」に見えることだとしてもです」
他人と自分の境遇を比べて落ち込んだり、劣等感を持ったりしてしまいそうな時は、本書を開いてみてほしい。他人から見た「不幸」は、必ずしも自分にとっての「不幸」ではない。その経験を通して、自分にとって本当に大切なものが見えてくることがある。未来の幸福を作り出すのは自分自身だということに、きっと気づくことができるはずだ。
文=佐藤結衣