増え続けている「親子カフェ」―その運営を成功させるコツとは?
公開日:2018/3/2
核家族化や少子化の影響により、孤立しやすい保護者たちが情報交換できる場のニーズが高まっている。駅前のカフェやファミレス、誰かの自宅でお茶をするのもいいが、多様な情報を得るのは難しい。
そうした背景もあり、「親子カフェ」がじわじわと増えてきている。親子カフェに明確な規定はないが、親子で入ることができ、自然と親子が集うカフェといえる。キッズスペースや玩具が充実していたり、親子を意識したメニューが目立っていたりと、カフェによって様々だ。
『親子カフェのつくりかた:成功する「居場所」づくり8つのコツ』(小山訓久/学芸出版社)の著者は、1日の来客数が20家族もある「おやこカフェほっくる」を営んで4年目。これから親子カフェ、または親子カフェのような居場所をつくりたいと考えている一般の人や行政関係者、企業などに向けて、親子カフェづくりの方法を紹介する1冊から、親子カフェの運営を成功させるコツを見ていきたい。
本書は冒頭で、「カフェ経営に優れ、資金繰りが上手で内装がステキでも、親子カフェを継続させることは困難だ」と述べる。
なぜなら、本書の言葉を借りれば、親子カフェは「経営」ではなく「居場所づくり」だから。駅前のカフェやファミレスであれば、一般の保護者はなかなか「居場所」にはしづらい。「カフェの亜種」だと考えて親子カフェを始めると、失敗する可能性が高いという。
本書には、親子カフェづくりのコツが数多く紹介されているが、本記事ではごく簡単に2つのポイントを紹介したい。
1つ目のポイントは、「一緒に育つ感じがする場所」にすること。「おやこカフェほっくる」では、満席の時は小さな机を出したり、相席になってもらったり、スタッフの事務所に入ってもらったりしながら、限られたスペースの中で手作り感がある運営をしている。自然と隣の母親との垣根が低くなる。
隣のお母さんの育児を目の前で見られて、自分でもすぐに実践できる機会もあります。一緒に育つ感じがする場所ですよね。
実際、「おやこカフェほっくる」の愛用者は、「お店屋さんっぽくなくて、だからといって、親戚の家っぽくもない、丁度良い雰囲気なところが気に入っています」という感想を持っている。
2つ目のポイントは、「体験を提供できる場所」にすること。親子カフェの多くでは親子イベントや講座が催されているが、それが“押しつけ”になると失敗する、と本書はいう。
ここでいう体験とは、ママと子どもにとって、
●自分が輝く体験
●子育てがラクになる体験
●お友達が出来る体験
●新しい情報や機会を得た体験
となります。
「おやこカフェほっくる」は、「時間」や「ランチ」を提供しているのではなく、「子どもと自分の人生の一部を、自分自身のチカラで豊かにする体験」を提供している。
このように体験を売っているビジネスで成功している例として、本書はディズニーランドとスターバックスを挙げる。ディズニーランドは「魔法の国へ行った、という体験」を、海外のスターバックスは「上質なカフェ体験」を売りにしている。体験はカフェ発信ではなく親子発信であること、そのために親子と一緒につくっていくことが大切であると本書は述べる。
居場所を求める親子にとって心地良い場所をつくるうちに、そこが自分自身にとっても心地良い場所になるのかもしれない。親子カフェに興味がある方は、ぜひご一読を。
文=ルートつつみ