【ひとめ惚れ大賞】優美で不穏、繊細で大胆…幻のコラージュ作家の現存作品すべてがここに『岡上淑子全作品』担当編集者インタビュー

文芸・カルチャー

公開日:2018/3/7

    『岡上淑子全作品』
    岡上淑子
    装丁:松田行正、日向麻梨子
    編集:岩﨑奈菜
    河出書房新社 5000円(税別)

 初めて岡上さんの作品を観たのは東京国立近代美術館、確か2006年頃だったでしょうか。ただただ、心惹かれて。図録がなかったので必死で目に焼きつけようとしたのを覚えています。
 その時は別の会社にいたのですが、転職して河出書房新社に入ったところ、「自由に企画していい」と。じゃあ岡上さんの作品集を作りたいと、思い切って提案したんです。そうしたら他にも岡上さんを好きな人が社内にたくさんいて後押ししてもらえて。なんていい会社なんだ!と感動しました(笑)。最初に刊行した『はるかな旅』は自選作品集で、そこに載せ切れなかった作品も収録したのが今回の『全作品』です。

 岡上作品は、どの作品も「一度観て完結」することがないんじゃないかな、と思います。観るごとに驚きがあり、新たな空間や物語が見えてくる。自分が観ていないところで永久に変わり続けている感じもある。そして、観る人に「私だけがこの世界の魅力を知っている」と思わせる何かがある、というか。
 でも「どこがどのように良いのか」というのを言葉にしようとすると陳腐になってしまう気がして……難しいですね。

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 岡上さんご本人も本当に素敵な方なんですよ。上品で、可愛らしくて、気遣いにもあふれていて。あんな素晴らしい作品をいったいどうやって生み出すのか直接お聞きしたことがあるのですが、たった一言「できていくのよ」と。もう、素敵すぎます。

 現在、高知県立美術館で開催している「岡上淑子コラージュ展 はるかな旅」(3月25日まで開催)もぜひご覧いただきたいです。やはりオリジナルの力は、すごいです。
 展覧会や本をきっかけに、いま、岡上さんの作品世界に魅せられる人がどんどん拡がっていると感じられて、本当に嬉しくて。『全作品』を作ったばかりだけど、また作品集を作りたい(笑)! もっと多くの方に、その魅力を知っていただきたくてたまりません。

岡上淑子●1928年、高知県生まれ。1950年代にコラージュ作品の創作活動を送り、2000年代に入って再評価の機運が高まる。「岡上淑子コラージュ展 はるかな旅」が3月25日まで高知県立美術館にて開催中。

|| お話を訊いた人 ||

岩﨑奈菜さん●河出書房新社編集第二部。編集者。2013年、同社に入社し、念願だった岡上作品の本を手掛ける。『全作品』も好評で、エディションナンバー入りの特装版も制作進行中。100部限定。

【展覧会情報】
高知県立美術館にて、初の回顧展「岡上淑子コラージュ展―はるかな旅」開催

 2018年1月20日(土)~3月25日(日)会期中無休
 9:00~17:00(入場は16:30まで)

国内に所蔵されている貴重な岡上作品約110点が一堂に会する初めての回顧展。
オリジナルのコラージュ作品と写真作品に加えて、コラージュをもとに近年制作したシルクスクリーンプリントとプラチナプリントも作家の新たな試みとして併せて紹介、幻の作家の真の姿に迫る。

■高知県立美術館公式ホームページ

取材・文/田中 裕 写真/首藤幹夫