何事も「自分で決める」習慣を身につけるだけで人生が変わる

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公開日:2018/3/8

『「一瞬で決断できる」シンプル思考』(遠藤保仁/KADOKAWA)

 長年、サッカー日本代表の司令塔として活躍してきた遠藤保仁選手は、「自分の頭できちんと考えて、何事も自分で決めることが大切だ」と言います。『「一瞬で決断できる」シンプル思考』(KADOKAWA)を刊行した遠藤選手に、シンプルに物事をとらえる思考法について教えてもらいました。

■ゴール到達を阻むムダを削ぎ落とす

 サッカーの目的は、ゴールを決めて試合に勝つこと。その目的を達成するために必要なのは、シンプルにゴールに直結するプレーをすることです。複雑なことをしても、ゴールに結びつかないのであれば意味がありません。

 たとえば、センターライン付近で、ドリブルで敵を抜きにかかるのは、ゴールという目的からは遠いプレーです。いくらドリブルに自信があるからといって、センターライン付近で一人かわしても、敵陣にはまだ6~7人が残っている場合が多い。センターライン付近で一人抜いても局面は大きく変わらない可能性が高いのです。もちろん、ドリブルをすれば相手にボールを奪われるリスクも高くなります。

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 それならシンプルにパスを選択したほうがいいでしょう。10メートル先にドリブルでボールを運ぶよりも、パスを出して10メートル先にボールを運んだほうが早いし、体力も使わなくてすみます。

 もちろん、ドリブルが有効な場面もあります。ゴールから近いペナルティーエリア付近でドリブルをしかけて一人でもかわすことができれば、敵のDFをあわてさせて、ゴールの可能性が高まります。僕がドリブルをするのが得意なFWだったら、積極的にゴール前でドリブルをしかけるでしょう。

 シンプルにゴールに直結するプレーをすることは、体力温存にもつながります。90分ものあいだずっと100%の力でプレーするのは不可能です。試合開始からの15分を全力でプレーしただけでも、おそらく最後まで体力がもたないでしょう。反対に、試合終了まで10分、15分といった体力的にも苦しい時間帯に100%の力を出すことができれば、勝負どころで優位に立つこともできます。

 つまり、ここぞという場面で100%の動きをすることで、相手に脅威を与え、ゴールに直結するようなプレーを繰り出すことができるわけです。

■シンプルに目的に直結する行動の優先順位を上げる

 全力プレーは見ていて清々しく感じるかもしれません。でも、サッカーは選手交代をしないかぎり、90分間戦い続けなければなりません。一流の選手は、いかに体力を温存し勝負どころで100%の力を発揮するかを常に考えて、シンプルなプレーを選択しているものなのです。

 仕事でも常に100%の力で取り組むことはむずかしいように思います。残業や休日出勤を続ければ、いずれ息切れするはずですし、生産性も上がらないでしょう。部下に任せればいい仕事を抱え込んでリーダーが疲弊してしまっては、それこそ本末転倒ではないでしょうか。

 ムダをなくして、自分がすべきことに集中できるようにする。そんなシンプルな思考と行動をする人が、長く活躍できるのです。

 人生においても、目的に直結する行動の優先順位を上げることが重要です。たとえば、家を買う目的があるのに余計な買い物をしていたら、目的達成はむずかしい。節約や収入アップに努めるべきでしょう。また、ダイエットが目的なのに「お付き合いだからしょうがない」と外食や飲み会で暴飲暴食ばかりしていれば、いつまでたってもゴールにはたどりつきません。運動をする、食事の量を減らすなど優先すべきことがあるはずです。今の生活を一度見直して、ムダなものがあれば削ぎ落としてみてはいかがでしょうか。普段の生活をシンプルにすることで、大事なことが見えてくるはずです。

■チーム力をアップさせる最もシンプルな原則とは

 会社と同じように、サッカーも個人の力以上にチームの力がものをいいます。スター選 手が一人いても勝てるとはかぎらないのがサッカーです。

 チーム力をアップさせる要素はさまざまありますが、最もシンプルな原則は、「自分のプレーには自分で責任をとること」だと思います。

 サッカーの場合、同じフィールドに立っている以上、年齢や経験は関係ありません。日本代表に選ばれた経験があるからといって発言力が増すわけではない。ガンバ大阪では僕がいちばん年齢が上で、ゲームキャプテンを任されることもありますが、正直にいうとそれほど意識はしていません。フィールド上では、みんながそれぞれ責任をもち、全員がキャプテンだと考えています。

 だから、試合中に「こうしろ!」 「ああしろ!」とプレーに口出しすることはありません。「こういう選択肢もあったぞ」と伝えることはあっても、自分の考えを押しつけるこ とはしません。ミスについても、サッカーをしていれば誰にでもあることだから、責めることはありません。ただ、ミスをしたら、それはその選手の責任。そのミスはプレーで取り返すしかありません。

 もちろん、チーム力を高めるためには日頃のコミュニケーションや連係プレーの練習なども重要です。しかし、自分のプレーに責任をとれない選手の集団になってしまうと、間違いなく強いチームにはなれません。「自分のプレーには自分で責任をとる」。それができることが、強いチームの最低限の条件だと考えています。

■「自分のことは自分で決める」シンプル思考

 これは、会社というチームにもあてはまるのではないでしょうか。自分の仕事に責任をもてないチームがいい仕事ができるとは考えられません。上司が、ああしろ、こうしろと自分の考えを押しつけ、部下が上司の顔色をうかがってばかりいれば、どうしても他人任せになってしまい、クリエイティブな仕事など望めないでしょう。

 自分の行動に責任をとれる人は、みんな「自分で決める」ことが習慣になっています。人生が思い通りにいかないとき、人は自分の責任を誰か他人になすりつけるような言い訳をしがちです。「あの人の言う通りにやったけれどダメだった」「みんなと同じことをしていたのに、うまくいかなかった」というように。自分で決めていないから、言い訳ばかりしてしまうのです。

 他人の意見を聞いてもいいし、どれだけ参考にしてもかまいません。しかし、最後は必ず自分で決断を下そう。失敗したっていい。そうすれば、責任をもって行動できる人に必ず変われるはずです。

 これを読んで「大事な選択を他人にゆだねているかも……」と感じた人ほど、「自分で決める」という、このシンプル思考を大切にしてみてほしいと思います。
どんな生き方をするにも、それは皆さんがそれぞれ自分で決められるという当たり前のことを思い出してほしいと思います。人間が成長するのに年齢は関係ありません。いくつになっても人の出会いやちょっとしたきっかけで、いいほうに変わっていけるはずです。

遠藤 保仁(えんどう やすひと)
1980年1月28日、鹿児島県生まれ。鹿児島実業高校卒業後の1998年に横浜フリューゲルスに入団。京都パープルサンガを経て、2001年にガンバ大阪に加入。数々のタイトル獲得に大きく貢献し、2003年から10年連続でJリーグベストイレブンに選出され、現在もガンバ大阪の中心選手として活躍中。また、U-20日本代表をはじめとし、各年代の日本代表に選出され2002年11月に日本代表国際Aマッチデビュー。その後は、日本代表の中心選手として活躍し3度のワールドカップメンバーに選ばれる。「日本代表国際Aマッチ出場数最多記録保持者」「東アジア最多出場記録」「2009年アジア年間最優秀選手」「2014年JリーグMVP」など数多くの記録を持つ。178㎝、AB型。
遠藤保仁オフィシャルサイト「Yatto7」https://yatto7.jp/
遠藤保仁公式ブログ https://lineblog.me/yasuhito_endo/