ギグ・エコノミーってなに? 話題の働き方から新しい自分の道を探そう
公開日:2018/3/14
ここ数年メディアに頻繁に取り上げられるようになった「ギグ・エコノミー」とは、主にインターネットを介して単発や短期間の仕事を受注する新しい働き方や、それによって形成される経済形態のことを指している。
もともとギグ・エコノミーの「ギグ」とは音楽用語で、クラブやライブハウスでの短いセッションや一度だけ演奏することを指す言葉だ。
『ギグ・エコノミー 人生100年時代を幸せに暮らす最強の働き方』(ダイアン・マルケイ:著、門脇弘典:訳/日経BP社)は、著者が5年ほど前に始めたビジネススクールでのギグ・エコノミーの紹介と実践のための講座をベースに執筆されている。
本書のコンセプトは、原書副題の“The complete guide to getting better work, taking more time off, and financing the life you want!”(良い働き方を手に入れ、休みを増やし、そして自分自身が望む人生を送る資金繰りをするための完全ガイド)に集約されている。そのための新しいマインドセット、スキル、ツールを紹介している。
■ギグ・エコノミーと聞いてもピンとこない?
ギグ・エコノミーと聞いても、遠いシリコンバレーやニューヨークの話、と思ってしまう人も多いかもしれない。しかしギグ・エコノミー的な働き方は決して目新しいものではなく、以前から日本にもある働き方だ。
たとえば、大学の客員教授のような人たちをイメージするとどうだろうか。多くは大学での講座を受け持っている他に別の仕事や役職を持ち、場合によっては自身の事務所の代表や企業の社長という肩書きを持ったマルチな働き方をしている。
■甘くない現実にどう向き合うか?
著者は、企業がコスト高で柔軟性に欠けるフルタイムの社員を減らし、独立請負人に切り替える流れがさらに加速していると述べている。労働力をプロジェクト単位、作業単位、もしくは時間単位で調達できるようになってきており、その流れの中で、職種によっては外部委託やシステム化に置き換えられる可能性も高いだろう。
日米の状況に多少の違いはあるものの、日本の企業も以前に比べ、コストのかかる正社員を抱えない傾向になりつつある。必要な期間だけ、または必要な業務だけをアウトソースして、固定費を抑える動きが徐々に進んでおり、今後さらに加速するだろう。決して対岸の火事ではないのだ。
自分自身がどれほど望んだとしても、定年まで現在の会社に正社員として残ることは叶わないかもしれない。
■ギグ・エコノミーのアイデアを通じて得るメリットとは?
本書は、特にこんな人におすすめだ。
□ 会社に縛られない、より自由な働き方をしたい人
□ 自分で自分自身の人生設計と実行をしたい人
□ 終身雇用や年金生活が過去と同様でないことに不安や危機感を覚えている人
□ 会社勤めは自分に向いてないかもと思いつつ、次の一歩を踏み出せず悶々としている人
□ ギグ・エコノミーな働き方に興味がある人
本書では各章を通して、なぜ新しいマインドセットが必要なのかを説明した上で、著者の提案やアイデアを具体的に述べている。それらを実行するためのエクササイズやツールの紹介があるのも有用だろう。キーとなっているのはリスクマネジメントや家計設計、時間管理や人脈作りなど実用的な多くのマインドセットである。
■人生設計や目標を考えるうえでのエクササイズとしても役に立つ!
ここまで読んで、著者が提案するような働き方は自分には合わないと思った人、あるいは将来的にはアリかもしれないが当分先だろうと思った人も、次に紹介するエクササイズはすぐにでも活用可能だ。
第2章のエクササイズ「ギグを見つける」は、ギグ・エコノミーにシフトするための初歩的エクササイズだが、現在の仕事先でたとえば上司とキャリアパスについて話す機会のある人や、今まであまり振り返ったことはないけれど自分のキャリアの振り返りをしたいと考えている人は、ぜひ実践してみてほしい。自身のキャリア設計を考えるためのよい機会になるだろう。
ギグを見つけるエクササイズ
【ステップ1】
今まで関わった業務(本書では「ギグ」と呼ぶ)の中で最高の業務は何か? どこに夢中になったのか?【ステップ2】
自分にとって理想の業務とは何か? それはなぜか? その具体的な条件は何か?【ステップ3】
今後の業務の候補を探る
本書は180ページ弱と決して分厚くないものの、「良い働き方を手に入れ、休みを増やし、そして自分自身が望む人生を送る資金繰りをするための」アイデアがぎっしり詰まっている。話題のギグ・エコノミーな働き方を知りたい人や、過去の仕事を振り返って今後の働き方を考えたい時におすすめの1冊だ。
文=滝川有紀