「この写真集は、1週間おきに見てほしい」 杉野遥亮、ファースト写真集『あくび』刊行インタビュー【後編】
公開日:2018/3/25
“そのニュアンス、いったいどこから出てくるの?”。ツイッターのフォロワー数21万人超えの杉野遥亮のつぶやき。写真集の中にも織り込まれた、彼から生まれてくる、ちょっと“普通じゃない”言葉。それを形づくってきたものとは――。
すぎの・ようすけ●1995年、千葉県生まれ。第12回FINEBOYS専属モデルオーディションでグランプリを獲得。映画『キセキ―あの日のソビト―』のソウ役で俳優デビュー。その後、ドラマ『地味にスゴイ! 校閲ガール・河野悦子』『嘘の戦争』『花にけだもの』、映画『兄に愛されすぎて困ってます』『覆面系ノイズ』などに出演。18年は、主演ドラマ『福岡恋愛白書13 キミの世界の向こう側』、映画『あのコの、トリコ。』『きらきら眼鏡』『春待つ僕ら』の公開が控える。
杉野遥亮のツイッターは、先日、フォロワーが21万人を超えた。何気ないつぶやきのなかに独特の空気を孕んだ日々の言葉たちは、心地よくて、ついつい眺めてしまう。
「言葉選びのセンスがおもしろいって、フォロワーの方がよく言ってくださるんですが、僕としては、特に意識しているわけではなくて、率直に発しているだけなんです。ただ哲学的なことを考えるのが好きなので、今まで生きてきた過程で自然とそうした感覚みたいなものが身についてきたのかもしれません。これまでいいことも嫌なこともたくさんありましたが、今の自分がここにいられるのは過去のいろんな巡り合わせが奇跡のように重なっているから。今の自分に100%の満足はしていないけれど、自分が今いる環境には十分満足しているし、感謝をしています。だから、これまで歩いてきた道は間違っていないんだなと思います。そして、そんな僕が自然体で発するつぶやきを“普通じゃない”と楽しんでくださる方がいるということは、それこそが僕のパーソナリティなんだろうなと」
写真集『あくび』の中にも、ツイッターのつぶやきともつながるような言葉が、写真のはざまにときおり表れる。
「編集のとき、後から湧いてきた感情とか、写真集全体を見て思ったこととかをひとつひとつ言葉に変換していきました。見てくださる方がその言葉に共感してくださるか、それとも別のことを感じるのか、それはすべて正解だと思うし、その言葉があることでまた違った楽しみ方が生まれてきたら、嬉しいですね」
■やっと今、俳優のスタートラインに立てたなと感じています
今年は、『きらきら眼鏡』『あのコの、トリコ。』『春待つ僕ら』と、3作の映画の公開が控えている。
「やっと、俳優としてスタートラインに立つことができたというのが、今の気持ちです。去年は僕にとって怒涛の一年だったので、自分が考えているよりも先に、周りの方の僕への見方が変わってきた。そこに意識が追い付いていけなくて、戸惑ったりもしたのですが、でも今はやっと追い付けたし、目標も見えてきました。“こういう作品に出たい”“こんな役を演じてみたい”など挑戦したいことは膨大にあります。そうした夢を叶えるためにも心しているのは、人との関係を大切にしようということ。いろんな方々が僕にかけてくださる言葉をきちんと聞いて、それをちゃんと自分のなかで咀嚼しなければって思うんです」
それは読書からも受け取っていることだという。
「つい先日まで、ツイッターで話題になった、燃え殻さんの『ボクたちはみんな大人になれなかった』を読んでいました。作者の言葉が個性的ですごくおもしろい。“そうそう、こういう考え! 自分もすごく思っていた!”という発見が数多くありました」
今、移動中に読んでいるのは、霧友正規の『僕はまた、君にさよならの数を見る』。そして、その言動からもどこか納得できる、窪美澄ファンでもある。
「窪美澄さん、好きです。とくに『よるのふくらみ』が大好きで。どこか人との関係が欠如した人たちを描いた物語。ストーリーの中から著者のメッセージから汲み取れるものが好きですね」
杉野遥亮からのメッセージ、それは自身が『あくび』のなかで「一番、好き」だというカットにあった。
「写真集の最後の一枚なんです。顔がわからないのがいいなって。どういう表情をしているのか、どこを向いているのか、全然わからない。でも目はちょっと光に反射していて、輝いているように見える、その加減が素敵だなぁと思って。そして、どこか未来を見ているような感じがするんです」
この写真集を手に取る人に、杉野遥亮から“お願い”があるという。
「1週間おきに一回はページを開いていただきたいんです。この写真集は、僕にとってとても大切なもので、それを同じ温度で受け取っていただけたら、という願いを込めて。“1週間おき”というのは時間を置くことによって、写真や言葉の見え方が変わってくると思うから。僕自身が見ても、その時々で何パターンか見え方があるんです。写真集を眺めるというよりも、映画のように何回か触れているうちに、感じるものが変わってくる、そんな作品になったと思います。そこを楽しんでいただけたら、本当に嬉しいです」
取材・文=河村道子 写真=内海裕之