王道には王道の理由があった! 医師の教える正しい食べ方
公開日:2018/3/25
世の中にはいろいろなダイエットやアンチエイジングに関する情報があふれている。というよりもむしろ情報がありすぎて、何が正しいのかわからなくなっていると言うべきかもしれない。ある人は「糖質は悪だ」と断言し、ある人は「日本人の体にはお米が合っている」という。また積極的な肉食を勧める人もいる一方で、菜食こそ健康・美容によいと信じる人も多い。
すでに決まった食生活の方針があり、それが自分に合っていると確信できる人はいい。問題は情報の洪水の中で迷子になってしまった人々だ。ダイエットや健康法のトレンドは次々と変わる。矛盾する情報に振り回されて疲れてしまったという人もいるのでは?
そんな迷える人々に強くおすすめしたいのが本書『美しくやせる食べ方 ディフェンシブ~体を守る~栄養学』(藤本幸弘/学研プラス)である。現在判明している栄養学や医学の知識をもとに、まっとうなダイエット・アンチエイジングの進め方について考察した本だ。
本書の面白い点は著者のスタンスにある。それは「栄養学をはじめとする科学が発展途上の学問である」という前提のもとに考察を進めていることだ。
全ての学問に言えることですが、栄養学も発展途上の学問です。新事実が解明されれば、これまでの定説は覆されることがあります。
その例として著者は食物繊維とリノール酸を挙げる。かつて食物のただのカスだと考えられていた食物繊維は、今や腸内環境の健全化に欠かせない栄養素として認知されている。逆にリノール酸は一時期血圧を下げる健康によい油としてもてはやされていたが、今はどちらかというと悪者扱いである。
このように栄養学や医学の世界では、今日の常識が明日の非常識ということが平気で起こりうる。こうしたことから著者は、何か1つの健康法やダイエット法を盲信することに懸念を示している。常識が180度変わりうるからこそ、リスクを分散させる必要があるというのだ。
そこで著者が提唱するのが「ディフェンシブな食べ方」である。自分の優れたところを積極的にアピールする流行のダイエット法や健康法がイケイケ系だとしたら、著者は徹底的に守りの姿勢を貫く方針をとる。
著者が重視するのは「投網をかけるように」必要な栄養素をまんべんなく摂り、健康を害する可能性のあるリスクを極力減らすことだ。
そこで炭水化物、脂質、たんぱく質、ビタミン、ミネラル、食物繊維という6大栄養素を適量摂取しつつ、抗酸化物質を補給するのがベストだ、と結論づけている。つまりいろいろなものを、バランスよく食べるということである。「そんな当たり前のことを」と思われる方もいるかもしれないが、王道の食生活には王道といわれるだけの理由がある。
6大栄養素をまんべんなく摂取するという食べ方には主に2つのメリットがある。1つは体にとって必要な栄養素の不足を防ぎ、代謝の低下を防げること。もう1つは栄養理論の変化に耐えられることだ。
私たちの体は複雑で、必要な栄養素が足りないとうまく働かないようになっている。たとえば最近悪者扱いされがちな糖質はエネルギー源になるだけでなく、粘液やDNAの材料にもなっている。まったく摂らないと体にとっては困ったことになってしまう。摂りすぎは時として害になることもあるものの、体にとってムダな栄養素なんてないのだ。6大栄養素をきちんと摂ることは、私たちが持って生まれた防御力を最大限に引き出すことにつながる。
そして抗酸化物質には老化や病気の原因となる活性酸素を減らす効果がある。さまざまな抗酸化物質を積極的に食生活に取り入れることは健康リスクの低下に役立つ。
ダイエットや健康法のトレンドはめまぐるしく変わるし、ネットやメディアにはさまざまな情報があふれすぎている。だからこそ栄養素と体の関係を正しく理解し、トレンドに流されすぎないようにする必要があるのではないだろうか。本書に紹介されている食べ方はあくまでも「ディフェンシブ」なものであり、目新しさやサプライズ感にはやや欠けているかもしれない。しかし「未知の部分があるからこそ慎重になるべき」という著者の方針には説得力がある。これから本気でダイエットなどに取り組みたい人にぜひ読んでほしい1冊だ。
文=遠野莉子