東大教授が教える! 情報を知性に変換する「頭の使い方」

ビジネス

公開日:2018/3/29

『東大教授が教える知的に考える練習』(柳川範之/草思社)

 毎日のように新しいニュースが飛びこみ、インターネット上で情報が行き交う現代社会。洪水のように情報がはん濫する世の中では、ときにフェイクニュースに踊らされることもあり得る。さまざまな主義主張が対立する時代で、周囲に流されずに自分の意見を保つにはどうすればよいのか。

『東大教授が教える知的に考える練習』(柳川範之/草思社)は、高校へ行かず、通信教育による独学で東大教授になった著者が、情報を知性に変換する「頭の使い方」を紹介している。

 曰く、知性とは頭の良し悪しではなく、習慣やクセであるという。その知性はこれからの時代、仕事にも人生にも欠かせないというが、それはどういうことなのか。

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■知性が求められる時代

 そもそも「知性」とは何だろうか。一般的に「頭がいい人」というと、物知りであったり、飲み込みが早かったり、決断力があったりする人と思われている。まさに変化の早い現代では、経営者や政治家に求められている資質である。

 しかし、それだけでは通用しない時代の変革が訪れるという。その大きな要因は人工知能(AI)の発達だ。いずれは単純作業だけでなく、高度な知的作業についても人工知能が代行するようになる。

 そうした将来で必要とされる人材は、ただ知識や情報を覚えて引き出せる人ではなく、自分なりの発想や思考で、意見を組み立て、広く深く考えを巡らせる知性を備えた人なのだ。

■情報に網を張る

 知性を身につける第一歩は、情報に網を張ることだという。普段、新聞やテレビを見る時にも、自分の興味や関心のあることを常に意識する。いわば意識の網を広げながら情報に接する習慣をつけるのだ。

 網を素通りする余計な情報は捨ててよい。網に引っかかった有益な情報をつなぎ合わせ、さらに網を太く強くしていくことで、知性の「土台」ができる。

 とくに問題意識を持つことが重要だ。問題意識の有無で網に引っかかる情報の質や量が変わってくるという。

 例えば、上司からパワハラがあったとき、感情的になって周囲に愚痴をこぼすのではなく、客観的になって問題に意識を向けて、なぜ起こるのか、なぜ防げないのかと考える。すると普通に生活していてもパワハラ問題に関するニュースや事件の情報が頭に残って、自分で解決を導き出すための「土台」になるのだ。

■情報は抽象化する

 次に、情報を知性に変換するには、具体的な情報を抽象化しなければならないという。

 例えば、誰でも小学校で算数を習ったとき、「りんご5個とみかん3個、足すといくつ?」といった具体的な問題を、「5+3=8」という計算式に抽象化して理解したはずだ。抽象化することで、果物ではないさまざまなケースにも応用できる計算力を身につけられるのだ。

 情報を抽象化するコツは、「(1)幹をつかむ=物事の主幹を見抜く」「(2)共通点を探す=物事の類似性や法則性を探す」「(3)相違点を探す=物事を比較する」の3つだ。

 抽象化は、いったん情報をバラバラにしてシンプルな形式に組み立てなおす作業だ。正解はないから他人と間違ってもよい。この繰り返しによって自分の知性が磨かれていくのだという。

 インターネットは便利なツールで、職場の問題でも恋愛の悩みでもなんでも相談すれば、すぐに誰かが答えてくれる。けれども私たちはひとりひとり違う。したがって、その人生で起こる問題や解決法もひとりずつ違う。本書を通して生きるための解決力を身につけてほしいと著者は語っている。

 確かに他人の意見や世間の基準ばかり気にしていると、いつの間にか自分の人生が他人のモノマネになってしまうかもしれない。自分も問題意識を持ちたい。

文=愛咲優詩