このジイさんかっこよすぎ……! あだち充、高橋留美子絶賛、『シノビノ』が面白い!
更新日:2018/4/23
お、おもしろすぎる……! 『シノビノ』(大柿ロクロウ/小学館)。少年誌のマンガなのに、ジジイの忍者が主人公という奇抜さも「いい!」けれど、それ以上に展開が激熱すぎた。
マンガ3巻分で、大迫力のハリウッド映画を劇場で観ているような満足感と高揚感が得られるとは…。しょっぱなから、こんなに面白くしちゃって大丈夫?……なんて、かなり余計なお世話な心配をしてしまうほどの、充実した内容だった。
時は幕末。ペリー率いる黒船が来航し、日本が揺れに揺れている時代。幕末の日本に実在した忍者・沢村甚三郎(さわむら・じんざぶろう)は、幕府より「ペリー暗殺」の密命を受ける。
日本がペリーを暗殺したことが露見したら、アメリカとは即戦争になってしまうので、あくまで甚三郎は「影の存在」として、闇から闇へ、ペリーを葬る必要がある。だが、ペリーを暗殺するためには、沖合に浮かぶ黒船サスケハナ号に潜入しなければならない。乗船員は500人。砲門は40。その他、サスケハナ号を護る艦船は3隻。それぞれが砲門を持ち、乗組員もいる。
つまり、艦船4隻(乗船員1200人以上)を相手に、甚三郎はたった一人で、極秘裏にペリーを暗殺しなければならないのだ。
しかも、時を同じくして黒船に乗り込んで来た、吉田松陰(よしだ・しょういん)率いる過激集団とも戦わなければならなくなってしまう。
不可能に近いこの任務を、老忍・甚三郎はどのように成功させるのか。目が離せない展開が続く。
飄々としながらも、時に勇ましく、時に狡猾で、時に非情で――「最後の忍者」として「闇で活躍する」甚三郎の姿にはシビれた。このジジイ、カッコ良すぎる。
さらに、本作には歴史ファンに嬉しい要素がいっぱい詰まっている。後の新選組八番隊組長となる藤堂平助(とうどう・へいすけ)が「強い剣士を目指す」少年として登場し、甚三郎の弟子として深く関わっていく様は、新選組ファンとしては嬉しい展開だ。
また実際に吉田松陰は、海外に渡航すべく、単身小船に乗って黒船に乗船、渡航の交渉をしたという史実もあり(結局、渡航は許可されず、幕府にお咎めを受ける)、それを知っていると、本作で吉田松陰が黒船を強奪しようとする過激な行動も、「あり得たかもしれない歴史」として、リアリティを持って読めるのである。
もちろん歴史に詳しくない読者でも十分楽しめる内容なのだが、フィクションの中に、実在した忍者・甚三郎や、後の新選組隊員、藤堂平助を登場させたり、吉田松陰が黒船に乗り込み、海外に行くことを望んでいたという史実を感じさせる展開を織り交ぜたりしているのが、かなり歴史ファンの心をくすぐる。
最新3巻で、ペリー暗殺編(黒船編)が決着するので、まとめて買うのをおススメする(3巻の帯コメントにはあだち充先生、高橋留美子先生が…!)。迫力満点の作画に、息つく暇のないほどの怒涛の展開を、一気読みしてほしい。
文=雨野裾