コンドームやピルなどの避妊具が無料のイギリス。なぜ日本の性教育は不十分なのか?
更新日:2018/4/16
日本の性教育は不十分……そんな言葉を耳にすることがある。とはいえ、日本の教育機関だけで性教育を受けた人の多くは、海外に比べてどう“不十分”なのかわからないのが正直なところ。
『教科書にみる世界の性教育』(橋本紀子、池谷壽夫、田代美江子:著/かもがわ出版)では、世界の教科書をもとに、各国でどのようなアプローチ方法で“性教育”がなされているのかを紹介している。同書に登場するのはオランダ、フィンランド、フランス、ドイツ、イギリス、オーストラリア、中国、韓国、日本の9カ国。ここでは、同書のなかで印象的だった他国の取り組みを紹介したい。
■ピルとコンドームが無料で手に入るイギリス
コンドームやピルなどの避妊具は、日本では健康保険の対象外のため、全額自己負担で購入しなければならない。しかし、イギリスの国民保健サービス(NHS)は「望まない妊娠と性感染症を防ぐことは健康を守る」という考え方から、無料でピルとコンドームが入手できる場所が数多く存在しているという。
イギリスはヨーロッパの中でも10代の妊娠・人工中絶が多い国のひとつです。そのため、10代の望まない妊娠を防ぐための教育や健康対策に力を入れて取り組んできました。その努力の結果、例えばイングランドとウェールズでの2005年の18歳未満の中絶率は女子1000人あたり17.8でしたが、2015年には9.9と半数近くにまで減少しています
社会問題を解決に導くには、イギリスのように国ぐるみの対策が必要なのかもしれない。
ちなみに、同国の教育現場では性の教育が重要視されており、11~14歳の生徒が学ぶ「科学」の教科書では、男女の生殖器の機能や形状を細かく解説。性交についても図解で説明しているという。一方、日本の小学5年生「理科」の学習指導要領では「受精に至る過程は取り扱わない」という制約が設けられている。そのため、小学5年生では性交を扱うことができない。これも、日本の性教育が不十分と呼ばれるゆえんだろう。
■交際に別れがあることを学校で教えるフィンランド
フィンランドの性教育関連の教科書では「性の喜びと責任」の単元で““交際のルール””を扱う。女子と男子がお互いを意識してから、親密さを深めていくプロセスを紹介し「交際のルール」や「性行為をはじめる適切なタイミング」「避妊」「性感染症」について、具体的な事例やスキルを紹介し、それぞれの責任について説いているという。
さらに、男女交際に別れがあることを教え、性に関する具体的な問題を生徒たちに考えさせるなど、“性と責任”の関係を学ぶことができるそう。
最後の章では、日本の性教育の現状を綴っている。他国の先進的な取り組みを知ったあとで日本の章を読むと、日本の性教育の不十分さと課題が見えてくるはず。教育関係者はもちろん、思春期の子を持つ親世代にとっても、学びのある一冊となっている。
文=丸井カナコ(清談社)
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