40男が同人サークルで1000万円稼いだ?! そのノウハウは……
公開日:2018/4/2
同人作品が集う最大の祭典「コミックマーケット(コミケ)」は50万人もの参加者を集め、その経済効果は180億円ともいわれる。出展サークルの中には、その収益で生活をまかなっている者も存在するほど。小生も、コミケに4コマギャグ漫画を描いて何度か出展しているが、今までに10冊ほどしか売れておらず、儲けは皆無。実のところ稼ぐサークルは全体の2割ほどで、残りは赤字運営なのである。ならば、黒字を出すサークルと我々とは、一体何が違うのだろうか……。
そんなところに、とっておきの指南書が登場した。それが『40男が同人デビューしていきなり1000万稼いじゃいました』(椎名号/実業之日本社)である。本書は、40歳を迎えた作者が会社勤めを辞め、全く畑違いの「18禁CG+ノベル」を同人サークルとしてネット販売し、いかに1000万を稼ぐに至ったかを実体験に基づき伝授する一冊だ。
こう書くと「素人が稼ぐなんて運だけだろう」とか、「実はビジネスセミナーを騙る詐欺かなんかじゃないか」と疑う読者もいるかもしれない。小生もそんな風に疑いつつ読み進めていったのだが、「なるほどこれはもっともだ」と納得せざるを得なかった。実はこの作者、20代にはインディーズバンドで数多くのライブをこなし、30代にはその経験を活かし音楽系ベンチャー企業でプロデューサーとして活躍していた「稼ぐこと」のプロ。そんな彼が、自分たちで稼ぐために立ち上げたのが同人サークルだったのだ。
では何故そのような手段を選んだのか。それは「18禁作品こそが確実に稼げる」からである。はっきり言って一般的なストーリーやギャグでは、よほどの人気を得られなければ儲けは出ない。だが、18禁作品ならば人間の欲求に直結するため、一定の需要を見込めるのだ。また、店頭で買うことに抵抗があるユーザーも、ネットを通じてなら買いやすいということもあり、市場の裾野が広いのも有利である。
勿論、需要があるだけに18禁作品を扱うサークルも数多く、いわゆる「薄い本」として即売会でもお馴染みである。ただ、一冊の本として販売するには、当然ながら印刷して製本する必要がある。さらに、即売会には必ずといって良いほど出展料も掛かる。本にして売るにはとかく資金がかさむもの。そこで有効なのがダウンロード販売に限定することだ。これならデータをダウンロードサイトにアップするだけなので印刷製本も在庫管理も無用である。なお、サイト利用料は販売価格の3割~4割ほどだという。
しかしながら、これらのことも既に多くのネット同人サークルが行っており、それら全てが多くの収入を上げているわけではない。ならば、作者が稼いでいる最大の理由とは何だろうか。
稼ぐ秘訣──それは「毎週リリースする」ということである。作者が調べたダウンロード販売サイトにおいて、他のサークルは早くて3か月に1作、通常は半年から1年ごとにリリースというペース。あくまで「趣味」としての制作ペースで、幅広い需要に応えるものではなかった。そんな中で毎週「ビジネス」として新作をリリースすることにより、多彩な作品をユーザーに提供して販売数を伸ばしていったのだ。
「同人で稼ぐ」という言葉だけ聞いて、それを「楽に稼ぐ方法」だと勘違いした読者もいるかもしれない。実は小生も淡い期待を抱いていたが、そんなうまい話はない。「クリエイターは勤勉であれ」とは、あるフリー編集者の言葉だが、結局は作品をリリースし続けなければ誰の目にも留まらず、稼ぐことなど無理。そのためにはコンスタントに創作を重ね、発表し続けるのが一番の近道なのだ。自分で書いておいてなんだが、実に耳の痛い話である……。
文=犬山しんのすけ