電波オークション導入でテレビ業界が変わる!? 当たる経済学者が予測する日本の未来!
公開日:2018/4/3
テレビの長寿番組の改変などが話題の昨今だが、以前よりテレビを見なくなった、という人は多いだろう。スマホ経由で視聴できるネットコンテンツには、新しいアイデアと刺激にあふれた幅広いニューメディアが百花繚乱なのだから。
ではなぜ、日本のテレビ業界が活性化しないのか、その大きな理由の一つに、「放送法があるから」と指摘するのは、3月16日(金)に電子書籍が配信された『なぜこの国ではおかしな議論がまかり通るのか』(KADOKAWA)の著者、高橋洋一氏だ。
結論から述べよう。「電波オークション」をやらないことが、日本のテレビ業界にとっての大問題なのだ。(本書より引用)
電波オークションとは、放送用電波の周波数帯の利用権を競争入札にかけることで、適者生存に欠かせない「世界標準(の仕組み)なのである」と著者。しかし日本では行われないため、「電波の権利のほとんどを既存のメディアが握ってしまっている」という。
その理由は、総務省管轄の「放送法」が阻止しているからで、この法律が「既存のテレビ局を『自分に甘く、他人に厳しい』体質にしてしまった元凶」だと著者は記している。
●電波オークションの導入で日本のテレビ業界は大きく変わる
電波オークションが実施されれば、新規参入者が加わり放送業界は活性する。そして、テレビ局各社合計の電波利用料(本書によれば現在は約60億円)は、数千億へと高騰する(著者の予測)ため、総務省にとっては収入増になる。
それなのにこれまで総務省がオークション導入に消極的だったのは、「(放送法という権力で)テレビ局に睨(にら)みを利かせる」特権が奪われる可能性があるからだという。
しかし、安倍政権下においては、以前から電波オークションの導入が検討されており、著者は「2018年には電波オークションの第一歩が始まる」と記す。これからどうテレビ業界が変わっていくのか、興味深く見守りたいものだ。
さて、ここまで書いてきたのは、本書がテーマとする“おかしな議論”の一例だ。日本をよりよくするために、早期に“正しい議論”を行い、着手すべきことは各分野で山ほどあるという。しかし、“おかしな議論”がそれを阻止し、時間を無駄にし、結果、国力の衰退に加担していると憂う著者。そのおかしな議論の発端は多くの場合、テレビや新聞といった大手メディアや、旧体質の省庁が関与しているという。
もちろん、憂いているだけではい。本書には、「増税なしでは財政破綻」なる俗説を信じるな、日本の借金と日本の真の実力、日米同盟の本当のメリット、子宮頸がんワクチンをめぐる「報道しない自由」など、メディアの在り方、増税、安全保障、改憲ほかにまつわる、“おかしな議論”がさまざまに列挙され、その中に存在する構造的な問題が明かされていく。
そして著者は、しっかりとしたソースが提供する正しいデータの正しい分析方法を示しながら、各テーマを“正しい議論”によって論破していくのである。
●経済データ分析の第一人者が導く日本の未来予測の数々
さらに本書最大の読みどころは、数々の実績から「当たる」ことが既成事実になっているという、経済データ分析の第一人者が導く日本の未来予測の数々だ。
ここで少し、髙橋洋一氏の略歴を紹介しておくと、東大の理学部数学科と経済学部経済学科をともに修めた人物で、数字にも経済にもとにかく強いのである。その後、大蔵省(現財務省)入省後、内閣参事官などを歴任。小泉内閣、安倍内閣では「改革の司令塔」として活躍した経済学者だ。
そんな著者のもとには、毎年、マスコミからも様々な未来予測の依頼が来るという。本書には、2018年の日本経済動向と朝鮮半島情勢との関係や、日本経済を失速させるリスク要因、東京五輪の経済効果と五輪以降の経済などに関する未来予測が展開されている。
また、本書には、これまでマスコミが「一般の人にとって再現性がない」と報道してこなかった、著者の仕事観や仕事・時間活用術も公開されているので、ぜひ、参考にしてみていただきたい。
白黒の結論ありきのデータねつ造に基づいた、フェイクニュースが跋扈(ばっこ)する昨今。日頃のマスコミ報道にふと疑問を感じた方、日本経済の真実や未来などを知りたい方におススメしたい一冊だ。
文=町田光
『なぜこの国ではおかしな議論がまかり通るのか』
著:高橋洋一
出版社:KADOKAWA