クリックすればすぐ届く! 巨人「アマゾン」に挑むネット通販の次の一手は?
公開日:2018/4/3
宅配便が危機に瀕している。大げさかもしれないが、実際ネット通販の急拡大による荷物の増加と慢性的な人手不足に、業者や配達員たちの仕事はパンク寸前だ。さらに追い打ちをかけるように、配達全体の20パーセントにも及ぶという「再配達」問題がのしかかる。もはや、小手先だけではなく抜本的に“何か”を変えなければいけない時が来ているのかもしれない。近い将来、荷物量が今の1.6倍になるといわれる中、物流や宅配の課題を処理しなければ、ECやネット通販の将来は不明瞭だ。
『物流大激突 アマゾンに挑む宅配ネット通販』(角井亮一/SBクリエイティブ)は、ネット通販の巨人「アマゾン」とその競合企業の戦略を徹底比較。長年にわたり物流ビジネスの最前線にいる戦略物流コンサルタントの著者が、逼迫した問題や今後の課題、方向性についてわかりやすく解説している。
■ネット通販の巨人「アマゾン」の存在感
21世紀の到来と前後して日本にも上陸したアマゾンは、日々急激なスピードで進化を続けている。最近では、生鮮食品の宅配サービス「アマゾンフレッシュ」が日本でもサービス開始。品揃えが豊富で、既存のサービスを凌駕する勢いだ。他にも、日用雑貨などの商品名がプリントされたボタンを押すだけで追加注文できる「アマゾンダッシュボタン」、集合レジに並ばなくても商品を持って店を出るだけで精算が済む無人コンビニ「アマゾンgo」が米国にオープンするなど、次々と革新的なサービスを打ち出している。また、配送時間短縮のため国内13ヶ所(※本書発売の2017年6月時点)の物流拠点に商品在庫を集約し自社で商品を管理、顧客へ届ける仕組みを構築するなど、今やネット通販会社として商品を売るだけではなく、よりよい方法で届けることを視野に入れているようだ。
アマゾンの創業者ジェフ・ベゾス氏は「アマゾンはロジスティクス企業だ」と話しています。(中略)
これを言い換えれば「物流」のこと。アマゾンは自らを物流を重視する企業だと断言しているわけです。経営において物流戦略を最重視していることがよく分かります。
単にモノを売ってもうける通販(物販)としてではなく、モノを売るインフラ(物流網)で競合他社との差別化を図りながら成長しているのです。
■特色を打ち出そうとする競合たちの対抗策は?
楽天、ヤフー、ユニクロ、セブン&アイ、ヨドバシカメラ、アスクル、ウォルマート。国内外の通販会社や小売業、これからはみな、アマゾンの競合企業である。圧倒的な存在感を持つ“巨人”アマゾンに対抗するために、いったいどのような策を講じているのだろうか。
本書では、それら競合会社1社ごとにひとつの章をたてて、戦略の違いや会社ごとの強み・弱みについて、データを交えながら綿密に分析している。物流拠点の有無、手数料無料化、品揃えや商品開発に至るまで、試行錯誤を繰り返しながらより選ばれるサービスを提供するために、各社は日々しのぎを削る。中でも、より早く商品を届けるということは最重要課題のひとつだ。
今後、アマゾンとその競合たちの業界全体をあげた、さらなるサービス向上を著者は予測している。どこまで便利になるのか……消費者としては大いに期待したい。その未来像を本書を通じて予想するのもおもしろいだろう。
文=銀 璃子